【第25回】特別編・男子便所専用コンテンツ『トイレッツ』を探して…(前編)

今回はいつもの散歩はちょっとお休みして特別編。

セガの『トイレッツ』というゲームをご存じだろうか?
おしっこをすることでプレイする、画期的かつ異色のゲームだ。男性用小便器の上部に設置したスピードセンサーと12.1型ディスプレイがセットとなっており、赤外線センサーで人感検出、尿の速度と量をマイクロ波センサーで捉え計測して、ディスプレイにアウトプットするというセガの本気がうかがえるマシンに仕上がっている。
ただ、セガはトイレッツをゲーム機とは言っておらず、お店に関する情報などを流せる“電子POP”あるいは“デジタルサイネージ”と呼称している。ゲームで画面に注目させ、用をたしながらその情報に接してもらうことを主目的としているようだ。まぁ後付けという感じもするのだが。

トイレッツ説明図です

ゲームの種類は、おしっこの量を計る「溜めろ!小便小僧」、前に放尿した人とおしっこの勢いで押し相撲対決をする「ぶっかけバトル!鼻から牛乳」、おしっこに隠された本音を暴き出す「尿内チェッカー」、おしっこの量でクイズに挑む「パネルクイズ超ニョ~力」、おしっこで落書きを消す「落書き早消し!何秒で消せるかな?」、おしっこと連動した暴風でモノが飛んでいく様子を楽しむ「ドキッ! 暴風警報発令」など個性的すぎる内容が揃っている。
ちなみに、「尿内チェッカー」に登場する美人ナースの名前は“雫はかり”で、「ドキッ! 暴風警報発令」で実況をする美人レポーターの名前は“南野そよかぜ”なので覚えておこう。

雫はかりのイラストです

▲雫はかり。妙に色っぽく、ナースのコスプレをしている嬢のようにも見えてしまう。

南野そよかぜのイラストです

▲南野そよかぜ。彼女もまた艶めかしい。つうかなんだこの性的アピール強めの服装は!

本体価格は14万円、ゲームソフトはUSBメモリで供給され1本1万円。設置されたのは主にセガ直営のゲームセンター、パチンコ店、居酒屋、カラオケ店などで、特に飲み物を提供する居酒屋とは相性が良かったとみられている。また、排尿障害の啓発にも役立つのではないかと医療機関に導入されたケースもあったという。2013年のWEB記事では全国の様々なトイレ230ヶ所で導入したされ、日本のみならずアメリカや韓国などでの稼働も報告された。

2011年に発売され2016年に販売終了、そして2021年にサポートも終了した、この『トイレッツ』。2024年時点の設置店と稼働状況はどうなっているんだろう? ということが気になったのがそもそものきっかけだ。
ネットで調べてみたところ、発売当時に設置されたお店のリストは見つかったのだが、現在もそこに存在するのか、そしていまでもプレイ可能なのかという情報はまったくと言っていいほどに見つからない。ネットにはゲームセンターや飲食店の情報は溢れているが、ゲームや料理の写真をアップすることはあっても、お店のトイレの写真を撮影して公開するモノ好きなど、いようハズもないからだ。

そうした興味本位から、2024年現在の稼働状況を可能な範囲で実地調査してみることにした。2012年の設置リストにある東京・51店舗、神奈川・18店舗の住所を片っ端から検索し、現在も営業しているかどうかでふるいにかけた。飲食店の場合、閉店していても実は同系列の別名義に業態転換しているというケースがあるのでその場合はキープ。「クラブセガ」「セガワールド」が「GIGO」に名称変更したケースも同様だ。
すると、現在も営業しているお店は37店舗あった。また、リストには載っていないものの設置情報が入手できた2店舗を加えた計39店舗を巡り、実際に男子トイレに入って目視で確認することとした。
いつもやってる散歩と同じく徒歩、電車、バスでお店まで行き、ゲームセンターであればワンプレイ、居酒屋ならワンドリンク制を課した。ただパチンコ店の場合、私が一切ギャンブルをしないでここまでやってきたもので、恐縮ながらおトイレだけ拝借するというスタイルで失礼をさせていただいた。

ではまず、ゲームセンター部門からいってみよう。

東京都新宿区神楽坂『GIGO 神楽坂』。
2据の小便器のうち1据に設置され「小便小僧」が稼働している。東京都内旧セガ系店舗では貴重な1台といえる。

GIGO神楽坂のトイレッツです

東京都北区赤羽『GIGO 赤羽』。
2据のうちの片方のみに1台設置されていたが、電源が入っておらず稼働か故障かは不明。ちなみに赤羽にはGIGOが2店舗あり、駅に近い方の『GIGO赤羽駅前』にトイレッツはないので注意されたし。

GIGO赤羽のトイレッツです

東京都港区台場『東京ジョイポリス』。
正確にはゲームセンターではなくアトラクション&ライブパークだが、さすがセガが運営するだけあって、1Fトイレに4台、3Fトイレに5台の計9台が設置されている。これは1施設内の設置台数都内最多で、それすなわち日本最多であり、いわゆるひとつの世界最多を誇る。ただ9台のうち6台は故障しており、そのうち2台に至ってはディスプレイが取り外されていた。ゲームは「小便小僧」2台と「鼻から牛乳」1台。
入場料1200円を払っていることだし、1プレイでもしておこうと「鼻から牛乳」に挑むも何故かゲームが起動せず。トイレを出てほかのアトラクションに乗るでもなく、そのまま無念の退店となってしまった。なにをしてるんだ私は。

ジョイポリスのトイレッツ写真その1ですジョイポリスのトイレッツ写真その2です

というワケで東京、神奈川のゲームセンターでのトイレッツ稼働店舗は、3店4台のみと想像以上に少ない。そのうち『ジョイポリス』はゲームセンターとも言い難いので、確実にプレイできる都内のゲームセンターは『GIGO 神楽坂』のみということになる。『GIGO 赤羽』に現存する1台が故障でないことを祈りたい。

ちなみに、過去に設置が確認されているが現在は撤去された店舗は『GIGO 新宿西口(旧クラブセガ 新宿西口)』『GIGO 秋葉原1号館(旧セガ 秋葉原1号館)』『GIGO 自由が丘(旧クラブセガ 自由が丘)』『GIGO 府中(旧セガワールド 府中)』の4店舗だけなので、そういう意味ではまだ残ってる方、と言えなくもない。また『GIGO 新宿西口』は2階トイレに設置されていたようなのだが、現在この建物の2階はテナント空き状態なので、そこで眠っている可能性もワンチャン…?

そしてここでもう一店、緊急追加情報をお伝えしよう。
東京都と神奈川の候補店をずべて廻り切り、やれやれと一息ついていたのだが、ゴールデンウィークに突入しなんとなく時間ができたため、やめればいいのに千葉に存在しているらしいという店舗に突撃してしまったのだ。
それが、千葉県千葉市中央区川崎町にある『GIGO フェスティバルウォーク蘇我』である。
だいぶ廃墟感が漂いつつあるフェスティバルウォーク蘇我だが、GIGOは元気に営業中だ。1階の男子トイレには、3据の小便器があり、うち1据でトイレッツが稼働している。「暴風警報発令」を存分に楽しんでほしい。

GIGOフェスティバルウォーク蘇我のトイレッツです

次は、パチンコ店部門。

東京都千代田区富士見『プレサス 飯田橋店』。
なんと驚異の4台稼働で「小便小僧」「鼻から牛乳」「尿内チェッカー」「超ニョー力」の4種から選び放題だ。L字に組まれた小便器レイアウトも美しい。今、全力プレイするなら間違いなくココだ。

プレサス飯田橋店のトイレッツです

東京都北区赤羽南『キングス』。
2据の2台設置で「小便小僧」「鼻から牛乳」がプレイ可能。ディスプレイ配置がやや高いのが特徴的。12.1インチモニタを利用した電子POP機能でパチンコの健全娯楽をしっかりアピールしていた。

キングスのトイレッツです

東京都江東区東雲『123+N 東雲店』。
1階のトイレに入ってみたらディスプレイ型の広告POPが小便器の上に掲げてあり、一瞬ぬか喜び。しかし、2階トイレではばっちり「小便小僧」「鼻から牛乳」「尿内チェッカー」の3台が稼働している。

123+Nのトイレッツです

以上パチンコ店では、3店9台の稼働が確認できた。
パチンコ店は、1店舗あたりの設置台数の多さが特徴で、特に『プレサス 飯田橋店』の4台は貴重。駅前すぐにあり訪問しやすい点も高ポイントだ。
杉並区和泉の『パーラーフィオーレ 永福町店』、千代田区外神田の『ビッグアップル 秋葉原店』、茅ヶ崎市元町の『ガウディ 湘南茅ヶ崎』、藤沢市大庭の『平楽 湘南ライフタウン店』はすべて撤去済み。相模原市南区の『ジャパンニューアルファ 相模原南店』には、小便器内に貼る“的マーク”だけが残されていた。

トイレッツの設置店舗リストには、池袋、新宿、渋谷、有楽町、町田、川崎に店舗を持つ『Bee』というお店が掲載されている。なんの店だろうかと調べたところ、“ダイニングダーツバー”であることがわかった。ダーツもやらないし、お酒も飲まない私にとってちょっと敷居の高そうなお店だなと思ったが、とりあえず手近なところで池袋店に行って店員さんに話を聞いてみたところトイレッツはすでに撤去されているとのことだった。
そこで、他の店舗の設置状況について『Bee』運営会社にメールで問い合わせをしてみることにした。すぐに丁寧な返信をいただいたのだが、資産からは除却された上ですべて撤去している、との回答。
実は『Bee』は、セガの開発子会社ヒットメーカーのプロデュースで誕生したダーツバーだ。その後事業は様々な経緯を経て、ゲームセンター『シルクハット』などを運営するマタハリーの手に移り、現在はその子会社である株式会社ビーリンクが運営を行っている。
返信をくれたビーリンクの方によると、当時はロケテストという形で店舗にトイレッツを無償設置していたのだそう。トイレッツはセガの新規事業開拓チームが開発したものだが、チームはすでに解散しておりその後のメンテンナンスやソフト更新もできなくなったためコロナ禍での店鋪休業時に一斉に取り外した、という経緯だそうだ。
なるほど。すでに撤去されてしまったのは残念だが、やはり維持するには限界がありそうだし、やむを得ないところだろう。
こんな珍妙な問い合わせにも真摯にお答えいただけたことは本当に感謝である。

なお、リストに唯一あった漫画喫茶『自遊空間 BIGBOX高田馬場店』にも行ってみたがすでに撤去済み。また、ジョイポリスのある港区台場のデックス東京ビーチの6ヶ所の男子トイレにも設置されていたとの情報があったが、すべてのトイレから消滅していた。

残すは居酒屋部門になるのだが、じつは居酒屋こそトイレッツが最も輝く場所である。
次回は居酒屋における『トイレッツ』設置・稼働状況に迫っていくことにしよう。
乞うご期待。

 

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