【第6回】東京都江戸川区「東京健康ランド まねきの湯」~ 東京都葛飾区「東京天然温泉 古代の湯」

東京都江戸川区船堀。

都営新宿線の船堀駅改札を出た私は、完全に疲れきっていた。
この日は、真夏というには少し早い時期であるにも関わらず凄まじいまでの暑さで、散歩に出たことを途中から大いに後悔していた。とにかく暑い季節が苦手な私にとって、猛暑が連発する近年の夏は憂鬱以外の何物でもなく、涼しくなる秋口まで散歩は休止するかと考えざるを得ない。

しかも訪れるお店がことごとく閉まっている不運も重なり、夕方にはすっかり意気消沈。このまま帰るのもなんかシャクなんだよな……と思い始めていた頃に、ふと脳裏にひらめいた。都営新宿線の船堀駅から歩ける距離にあるスーパー銭湯「天然温泉 東京健康ランド まねきの湯」が、9月3日をもって閉館するというトピックだった。

90年代初頭、大学生活というものにイマイチ馴染めていなかった私は、学外のとあるゲームサークルに所属していた。ゲーム好きの仲間とゲーセンでわいわいゲームをしたり、喫茶店に集まってはそこで原稿を書いて会誌を作ったりと、まぁこの世代の文化系活動としてはごく真っ当な青春をおくっていた。
そんな仲間たちと手軽にお安く旅気分を味わっていた場所が「東京健康ランド」だったのだ。でっかい風呂に入り、大広間でダラダラしながらメシを食らい、とりとめもなくゲームの話で盛り上がった。最大のポイントは、そのまま泊まってもOKという点だ。ヒマな時間だけは無限にある学生にとって、狭くて壁の薄いアパートほど周囲に気を使うこともなく時間無制限でしゃべり続けることができ、そのまま寝落ちすることが許される夢のような施設。あの時の楽しい記憶はいまだに忘れがたい。

青春の有意義なムダ使いを心ゆくまで満喫したあの「東京健康ランド」が37年に及ぶ営業を終えるという。時は流れ、一緒に泊まるような友人もいなくなった五十絡みの独身男となってしまった私だが、独り娯楽の楽しさに魅入られてしまった今だからこそ、このスーパー銭湯の最後に真正面から向き合える、そんな気がちょっとだけしたのだ。

疲れた体を引きずるようにして船堀駅から歩くこと数分、東京健康ランドに到着。
東京健康ランドの外観です

約30年ぶり、ということになるのだが、大幅にリニューアルをしていることもあり見覚えとか当時の面影とかそういう感慨は一切ない。お風呂などの施設には古臭さなど微塵も感じなかったし、清潔感も十分保たれている。入り口の貼り紙に書かれた閉館の理由に「エネルギー原価高騰など諸般の事情」とあり、確かに土曜の夜にしてはやや人が少ない印象もあった。それでも、もう少し値上げしてもいいから続けられないものかな……などと30年ぶりのくせにいっぱしの消費者気取りの勝手な感慨を抱きながら、露天風呂を大満喫した。

風呂からあがると大広間の隅っこに陣取り、ポテトフライと烏龍茶を注文。
フライドポテトの写真です

お酒が飲めないというのはこういう時イマイチ締まらない。周りを見渡せば家族連れや若いカップル、数人の大学生っぽいグループなどが楽しそうに歓談しながら飲み食いしている。さらによくよく見れば、男性の一人客もチラホラいるのが頼もしい。スーパー銭湯はあらゆる世代、あらゆるニーズにガッチリハマる施設なのだ。

存分に体と心をほぐしたあとは、お待ちかねのゲームコーナー見学としゃれこもう。スーパー銭湯にはまぁまぁの確率でゲームコーナーがあったりする。ラインナップへの過剰な期待は禁物だが、やはり楽しみのひとつであることは間違いない。先ほどチラリと館内図を見たところ、どうやら2階にあるようだったので早速冷やかしてみることにする。

ゲームプラザと書かれたエリアには、『太鼓の達人』(バンダイナムコエンターテインメント、以下BNEI)、『スーパーマリオカート』(BNEI)という“ゲームコーナー三種の神器”のふたつを揃えているだけでなく、『マリオ&ソニック リオオリンピック アーケードゲーム』(セガ/2016年)、『ポッ拳』(BNEI/2015年)、『星のカービィ ぱくぱくグルメレース』(BNEI/2022年)など、比較的新しめで子供ウケのいいキャラゲーを配している。
東京健康ランドのゲームプラザの写真です
そんなラインナップの中、懐かしさを誘うテーブル筐体が2台。1台は『上海Ⅱ』(サン電子/1989)。高田馬場ゲーセンミカドの店長、イケダミノロック氏の著作『ゲーセン戦記』でも語られていた、30年以上インカムトップタイトルに君臨するゲーセン業界不朽の稼ぎ頭が貫禄の稼働だ。その向かいのもう1台の方は、なにかと話題になりがちのエミュレータ基板を入れてある。これは最小限の台数で最大限のインカムを叩き出すために練られた布陣とみた。さらにその隣には『TABLE PONG』(ATARI/2018)という、ビデオゲームとエレメカの合いの子を配し、風呂上がりのユルんだ頭でも直感的なプレイで楽しめる環境を提供している。ほかにもパチンコ・スロットなどもあり、老若男女が楽しめる幅の広さはありつつも、いかに稼ぎ出すかを合理的に考え抜いたゲームコーナーではないか、うむうむ……などとひとり興奮しながら、その日はリラックスルームでぐっすり就寝。
東京健康ランドのゲームプラザの写真その2です

翌日。
船堀から都営バスに乗って向かったのは、新小岩。JR総武線新小岩駅から歩いて20分ほどにあるのが「東京天然温泉 古代の湯」だ。
昨晩、東京健康ランドに行ったのにまた別のスーパー銭湯をハシゴしようと思い立ったのは、その日も死ぬほど暑かったからだ。そんな外を歩こうという気になれない時は、涼しい屋内でゆっくりしたいじゃないか。

東京都葛飾区奥戸にある「東京天然温泉 古代の湯」は、ゴルフ練習場やボウリング場、さらには自動車学校までもが集まった複合施設の一角にある。
古代の湯看板です

本命のスパ銭に行く前に、ひとまずゲームコーナーがあるかどうかを確認するためにボウリング場「サニーボウル」を覗いてみることにした。
ボールがピンを弾き飛ばす心地よい音を聞きつつ、ボウリングレーンの並ぶ奥の方に行ってみると、わりと目立たないところに“three 7 TURBO”というゲームコーナーを発見。“GAME”というネオン管が残されているあたりに往時を偲ばせる。
ゲームコーナー外観です

いまは名前からするとスロット系になったのかと思いきや、ニューアストロ筐体に『コラムス』(セガ/1990年)、『上海 万里の長城』(サンソフト/1995)と、超ロングランインカムを誇る2台が鎮座していた。オフィスで使うキャスター付きの椅子がいい味出してる。
アストロシティ筐体の写真です

さらになんと、喫煙所の中にまで『上海 万里の長城』がもう1台。やはりインカム王・上海の強さは底が知れない。
喫煙ルームの写真です

続いて古代の湯の入館手続きをして、まずはゲームコーナーを確認してみることに。
飲食スペースの奥の方に配置されたゲームコーナーには、“ゲームコーナー三種の神器”の残る1タイトルである『ワニワニパニック』(BNEI)が稼働していた。“ゲームコーナー三種の神器”とは、私が個人的にそう呼んでいるだけで業界の定説ではない。しかし、どこのゲームコーナーに行っても『太鼓の達人』『スーパーマリオカート』『ワニワニパニック』のうち1台は確実にあり、きっとあなたもそう思うようになるはずである。バンナム恐るべし。
テーブルポンとワニワニパニックの写真です

そして、なんとこちらにも『TABLE PONG』が置かれていた。ひょっとしてスパ銭向きのタイトルなのだろうか。あるいは「東京健康ランド」と同じ業者が入れてる…? ほかにも子供たちが大喜びの『ドタバタスタジアム』(BNEI/2022)、『キャンディーパニック』(TKM JAPAN/2018)や各種キッズライドの充実など、スパ銭として芯を食ったラインナップも東京健康ランドと同様の手堅さを感じさせる。
キャンディパニックの写真です

足早ではあったがひととおりの調査も済んだので、露天風呂にゆっくりと浸かる。昼間に入る風呂はどうしてこんなにも気持ちがいいのだろう。さらに大広間で開催されていた歌謡ショーもたっぷり堪能し、最高の休日を満喫した。
最初は予定していなかった一泊旅となったが、結果的にゲームコーナーを巡れて大満足。思い出のスーパー銭湯は消えてなくなるが、最後に思い出をアップデートできたのは幸運だったといつか感じる時が来るんだろうな、きっと。

 

 

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