群馬県高崎市。
現在時刻は朝の8時半。
JR高崎駅西口のマクドナルドで覚醒しきらぬままモーニングを食べている。
昨日の朝に福井からスタートし、石川、富山、新潟と走り抜け、深夜にたどり着いた群馬のネットカフェに宿を得ることができた。
最終的に東京まで戻るとしたならば、富山から長野県の塩尻辺りを抜ける直線的なルートを選択するのが現実的だったのかもしれない。
しかし、詳しくはよくわからないが「麻雀ファイトガール」のゲーム内アイテムでほしいものがあるらしく、担当O氏は富山から北上して『ラウンドワンスタジアム新潟店』を目指す選択をした。
父が富山県出身、母が新潟県出身の私にはわかるが、隣の県といえど富山から新潟市内まではめちゃくちゃ遠い。案の定、途中でとっぷりと陽は暮れ、新潟からは戻れるところまで戻ろうと関越自動車道をぶっ飛ばし、どうにか高崎に着いた頃には0時を回ろうかという時刻になっていた。
ネカフェで泥のように眠り、翌朝送ってもらう段になってO氏の「ちょっと行きたいゲーセンあるんで」との理由で、JR高崎駅に放り出されたのだった。
東京まで送ってくれとは言わないが、せめてBEEP本社のある埼玉の羽生くらいまで乗せてってくれてもいいじゃん……とは思った。しかし同時に、クルマはもう飽き飽きしてそろそろ電車に乗りたいという感情がむくむくと湧き出していたところでもあった。それを察したO氏が気を利かせた、というのは考えすぎか。
なお、前回のオートレストランぞうさん以降の道程を完全に端折ってしまっているが、途中に『ドリームアイランド鐘紡町店』(富山県高岡市)、『富山レジャーランド射水店』(富山県射水市)、『トヤマレジャーランド 呉羽店』(富山県富山市)、『富山レジャーランド掛尾店』(富山県富山市)に立ち寄ってきた。
そんなわけで“北陸レジャーランドの旅”というテーマはかなり達成できたように思う。レトロゲームも多数見ることができたし大満足だ。感触としてはレジャラン全国制覇も夢ではなくなってきたかもしれない。山崎屋の公式サイトによると北陸よりも関東甲信越のほうが店舗数が多い。クルマがないと訪問するのも困難そうな場所ばかりで先が思いやられるが、とりあえず今回の旅での収穫は大きいといえた。
あ。
そういえば高崎駅からちょっと歩いたところにもレジャランあったな。
歩く時間を加味していまお店を出ればちょうどいいはずと見積もって準備を始める。
東京にあるレジャランはだいたい10時オープンなのだが、東京以外は9時オープンの店舗が多い。ボウリング場併設店は24時間営業だったりもするし、このように朝に暇を持て余している勢にはありがたい存在なのだ。
『群馬レジャーランド高崎駅東口店』は2階と地下1階がすべてゲームセンターという広大なフロアが魅力。
個人的な目玉は、まだ現役稼働しているナムコの『テクノドライブ』(1998)。測定結果がプリントされる“運転技術革命指導書”が用紙切れなのは残念だが、ブランクがありすぎて全然上手くいかなかったのでまぁよし。
ちなみに同じ建物の1階にある『万代書店 高崎店』にもアミューズメントフロアがあり、10円ゲームやエレメカ、ジャレコの『VSスーパーキャプテンフラッグ』(1993)などが置かれているので併せて訪れるのもオススメ。
朝からゲームに触れていたらなんだか気力が漲ってきた。
よし。せっかくだし、東京とは逆方向だけど前橋にも足を伸ばしてみるか。
高崎から両毛線でわずか15分ほど。あっという間に前橋に到着した。これから目指すお店は駅から15分くらい歩いた千代田町という繁華街にあるようだ。
群馬県の県庁所在地の主要駅にしては、いささかすっきりしすぎな北口ロータリーを眺める。ここに駅が設置されて以降、周辺の開発が思ったように進まず、かつて前橋城があり現在は前橋県庁・市役所のある大手町に隣接する千代田町が長らく商業の中心地としての役割を果たしてきた。その賑わいは“北関東の銀座”と称される時代があったほどだという。
駅から離れたところに唐突に現れる立派なアーケード街、ローズアベニュー中央通りがその目印だ。道幅も広くゆったりとした雰囲気で、いかにも昭和レトロといった風情はこれから再評価されそうな雰囲気もある。長い通りはそのまま弁天通商店街のアーケードへと続いていて、こちらはさらにシブみマシマシ。私としてはより興奮度が高いのだが、いかんせんシャッター通りの印象は拭えない。
この弁天通商店街の中程にあるのが『だがし わがじゃん』だ。
入口脇にはキッズメダル機の『ジャンケンマンフィーバー』『あかしろ大明神』や10円ゲームが並んでいる。店内はそれほど広くはないが、ここにも10円ゲームが。
お、『ワルキューレの冒険』のメダルゲーム機がある。「パックマン」「スーパーゼビウス」「ファミスタ」などファミコンゲームを中心としたナムコタイトルをルーレットゲーム化した“カーニバル”シリーズの第4弾作品だ。『ワルキューレの冒険』発売から今年で40年を迎え界隈は盛り上がっているが、このメダルゲーム機のことはけっこう忘れられがちかもしれない。コイン投入口にピッタリ合うセレクターとブラケットが見つからないとのことで現在は調整中なのが残念。隣の『ぱっくんらんど』もUPL製でこれまたレアで良い感じだ。
さらに奥にはアイレムのマドンナ筐体が1台あり、電源を入れてもらったら『ファイナルファイト』(カプコン/1989)が起動した。筐体の足元周りはかなり使い込んだ汚れやサビがあるものの、コンパネはメンテナンスがなされてかなりきれいだ。
駄菓子屋として15年以上の歴史がある『わがじゃん』は、ある程度の運用ルールが訪れる子供たちによって形作られていったという。店主さんをはじめとした大人が過度に介入するのではなく、子供たち自身による自治を見守るというひとつの駄菓子屋的理想が結実しているように見うけられた。
お店のすぐ隣にある虎淵山宝池院大蓮寺は浄土宗の寺院で、群馬県の同宗派寺院で多くの功徳を積んだ呑龍上人にあやかり、本尊を祀っているという。身寄りのない子どもを自身の弟子として育てた“子育て呑龍”という逸話に触発され、子どもたちが集う駄菓子屋という業態と通じるものがあるとの想いから『わがじゃん』は生まれたそうだ。
液晶テレビの下にはNintendo 64やWii Uなどのゲーム機が置かれ、自由に遊べるようになっているが、これもゲームを卒業した子どもがお店の寄付して受け継がれているものだという。店内は雑然としながらもどこか秩序がある。駄菓子屋さんは、今も昔も学校では教えようのない学びが無数にある重要な教育現場なのだ。
それにしても、この街の端々に時代を感じさせる雰囲気は、私のような昭和世代にはとても落ち着く。
昨日からの疲れも忘れて、ぐるぐると街を巡っていると『スズラン百貨店』というローカルデパートを発見。店内がこれまたいい具合に熟成の進んだ退廃的味わいを醸し出しており、ローカルデパート好きとしては100点をあげたいくらいに仕上がっている。
デパートといえば屋上遊園地を連想するが、ここ前橋店にはなくかつては高崎店には存在したようだ。
しかし、屋上ではなく6階にゲームコーナーが現存していた。玩具売場、子供服の隣ということで子どもが喜ぶキッズライドとプライズ中心のラインナップのなか、ひっそりと『リズム天国』(セガ/2007)があるのが嬉しい。
最後に地下1階の生ジュース屋さんで色味が悪いが味は良いバナナジュースを堪能し、大満足の前橋巡りとなった。
この訪問からしばらくして、スズラン百貨店は2026年11月をもって閉店することが発表された。業績の低迷、施設の老朽化と、実際に行ってみてリアルに感じた点が主な閉店理由だが、もうひとつ中心市街地である千代田町の再開発計画の遅れが大きな影を落としている。
今年度の着工を目指していた周辺の再開発は、いまだ高騰を続ける建築資材費の大幅増加が原因で計画見直しを余儀なくされていた。その先の見えない状況に音を上げた格好だ。
懐古派としては安易な再開発に苦々しい思いをすることも多い。しかし適切な再開発が街に再び力を取り戻すカンフル剤となることも忘れてはならない。
スズラン百貨店を中心地とした千代田町の再開発はきっとこの街を蘇らせる。そこにかつての歴史ある雰囲気が活かされていれば、より魅力的な街になっていくに違いない。
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