↑今回はこの2タイトルについてのお話です。
3D AGES社がSEGA AGES 2500シリーズを2003年夏に開始してからリリースしたタイトルは、わずか1年で15本にもおよぶ。そこから移行期の4タイトルを挟み、新生シリーズが始まったわけだが、こうした過去の実績から考えると、せめて1年で10本はリリースしたいと考えた。
まずエムツーの参加によって6タイトル発注したが、それではまだ足りない。7タイトル目は、前回触れた日本アートメディアの『セガメモリアルセレクション』となったわけだが、残る3本は、セガとゆかりの深い以下の3社に依頼した。
まずは内田誠さん率いる「セガ上海」。セガが中国に作った開発子会社だ(2024年に解散)。ここはセガグループだったが、別会社の扱いとなっていたため発注が可能だった。社長の内田さんは『獣王記』『ゴールデンアックス』、そしてセガサターンで大ヒットした3Dアクション『ダイナマイト刑事』の生みの親である。セガ上海はこの時PS2向け『獣王記』の開発を終えたところでちょうどラインにも空きがあり、受けて貰うことができた。
次は「ランド・ホー」。創業メンバーの大半がセガ出身という会社で、特にセガサターンを代表する3Dシューティング『パンツァードラグーン』シリーズ3部作を開発した「チームアンドロメダ」の主要スタッフの多くがここに在籍していた。セガからは『ダビつく』シリーズ、そして後に大ヒットするPSP向け『能力トレーナー ポータブル』がいよいよ発売というタイミングだった頃だ。
最後に「チキンヘッド」。メガドライブ史上最大のカルトゲーム『アドバンスド大戦略 ドイツ電撃作戦』の生みの親であった南人影さんが興した会社だ。当時はセガからの発注でドリームキャストやWindows向けに「アドバンスド大戦略」シリーズを開発していた。
この3社には、それぞれ過去に自身で手掛けたタイトル『ダイナマイト刑事』『パンツァードラグーン』『アドバンスド大戦略』のリメイク版を作っていただくことになった。『ドラゴンフォース』の時の経験から、リメイクには可能な限りオリジナル版開発者に参加して貰いたいと思っていたので、この3社に開発をして貰えるのは願ってもないことだった。こうしてSEGA AGES 2500の1年目10タイトルの開発が走り出した。
何本開発しようとプロデューサーは1人だ。僕はこの10タイトルに加え、移行期の2タイトル『ドラゴンフォース』『ファイティングバイパーズ』を含めた12タイトルを並行してプロデュースすることになっていた。そして開始早々『ドラゴンフォース』の開発が遅れ、これが終わらないうちに、エムツーの最初の2タイトルも遅れたため、いきなり試練の時を迎えていた。見かねた上司は「奥成はシリーズ全体のプロデュースに徹し、各タイトルのディレクションは現場に任せ、それぞれのタイトルに入り込みすぎないようにしなさい」と指示を受けた。これはもっともな意見で、SEGA AGES 2500シリーズ各タイトルの開発期間は、予算から考えると1本3~4か月程度が妥当なところだった。そもそも試行錯誤を行う余地はほとんど残されていないのだ。だから各会社と最初に実施する仕様&リメイクの方向性を決めるミーティングは、ほぼ唯一の検討期間になる。ここで合意が取れないと後から変更することはできない。
↑PS2版『アドバンスド大戦略』のゲーム画面
『アドバンスド大戦略』の場合、僕の提案は「システム・グラフィックはメガドライブそのままで、CPUの待ち時間だけ超高速化したもの」だった。ところが開発曰く、それは実現できないという。その方法だと一からメガドライブ版を完全解析したものでなければならないが、それをするには予算的にも期間的にも厳しいのだ。
先方は、当時開発していたPS2向け『スタンダード大戦略』のメインプログラムをベースに、システムを当時のレベルに簡略化することで実現したいという。オリジナル版の思考を考えたクリエイターによる開発なので、どのパラメータがどうゲーム内で機能しているのかを把握されているからこそできる芸当だ。戦闘シーンも普通に作ったのでは間に合わないが、既存の3Dモデルを少し追加するだけでそれらしいものは用意できるという。開発会社には最初から明確なビジョンがあったのですべてお任せすることにした。
ただ、それでもメガドライブ版を諦めきれなかった僕は、エムツーに連絡し「高速化してなくてもいいのでメガドライブ版だけ、こっちのソフトのおまけ収録版として作って貰えないか」と相談してみた。だが彼らも自分たちのラインで手一杯のため、その余力はないということだった。残念ながら『アドバンスド大戦略』では忠実移植版の同時収録は断念することになった。
PS2版『アドバンスド大戦略』は2005年12月発売のリニューアル第2弾の1本として進めていたが、ぎりぎり間に合わず、同時発売予定だった『セガメモリアルセレクション』のみでの発売となった。
↑受注用のパンフレット。発売が12月になっている。
続く2006年2月発売の第3弾では、エムツー開発によるVol.24『ラストブロンクス -東京番外地-』とVol.25『ガンスターヒーローズ ~トレジャーボックス~』の2本で準備を進めていた。ところがこちらも『ラストブロンクス』の開発が難航。開発遅延が玉突きして、2月は『アドバンスド大戦略』と『ガンスターヒーローズ』になる。
↑『ガンスターヒーローズ』の受注用パンフレット
この『ガンスターヒーローズ ~トレジャーボックス~』については、色々要素を盛り込んだ割には終始順調に進んだ。
本作を作ることになったきっかけは、2005年10月に12年ぶりのリメイク新作『ガンスタースーパーヒーローズ』がゲームボーイアドバンス向けに発売となったことだ。この機会に、原作も遊びやすい環境で提供しようということでのチョイスだった。ただ、当時メガドライブのソフトはまだ新品が買い易い時代で、『ガンスターヒーローズ』単体では商品訴求力が弱い可能性があったので、既にプレミア化していた同じトレジャー開発の『エイリアンソルジャー』と、さらに『ダイナマイトヘッディー』も加えた3本入りの”トレジャーボックス”として、トレジャーファン、アクションゲームファンにアピールする1本に仕上げた。ここまでが僕の決めた仕様だ。
かつてゲームギアに『ガンスターヒーローズ』を移植したことのある、トレジャー大ファンのエムツーの社長、堀井さんはノリノリだった。そのため是非にとゲームギア版『ガンスター』も収録することになった。
↑ゲームギア版の2作。ただし”トレジャー”ボックスというタイトルなのに、トレジャー開発ではないゲームギア版が普通に遊べてしまうのには違和感があったので、隠しゲーム扱いにさせてもらった。実は『スペースハリアーⅡ』にもゲームギア版『スペースハリアー』が収録されているのだが、この話は長くなるのでまた別の機会に。
それならばゲームギア版『ヘッディー』も入れるべきだよね、というところまでは想像できると思うのだが、エムツーは、堀井さんこれで終わらない。どこから手に入れてきたのか、ブラジルでしか発売されていない貴重なマスターシステム版『ダイナマイトヘッディー』を取り出してきて、「ボクが持ってるのでこれも入れましょう」と、これも収録することになった。
↑マスターシステム版『ダイナマイトヘッディー』は、ゲームギアをベースに画面の表示町域が増えていて遊びやすい。パッケージは堀井さんの私物でセガにも保管がない。これも隠し収録。
トレジャーの前川社長からは、幻のアーケード版(MEGA PLAY版)『ガンスターヒーローズ』を収録したいと提案いただいたものの、セガにデータの保管がなく、トレジャーにもソースデータしか残っていなかった。しかもソースを保管していたメディアがDAT(デジタルカセットテープ)で、社内中の技術者をあたっても10年以上前の開発環境を復活するのは難しく、データサルベージは実現できないまま終わった。それでも前川社長からは当時の企画書や店頭体験バージョンなど貴重な資料を多数提供いただいたので、もれなく収録することができた。
↑発売前に店頭でプレイできた「実演用サンプル」版。開発途中のものだったので一部完成版と異なるところがある。これもソフト内でプレイできる。
達人プレイヤーによるリプレイ再生機能は、『エイリアンソルジャー』では必須要素だろう。攻略サイトを現役で運営されていた方にエムツーが打診、収録に協力して貰うことになった。その過程でエムツーはいつの間にかボス戦ごとの攻略に役立つステージセレクト機能を追加していた。一方『ガンスターヒーローズ』のリプレイは、ゲーム情報誌「ドリマガ」のウメ編集長が、SEGA AGES 2500を応援したいので、心当たりがあるプレイヤーを連れてくるよというので、そのままお任せした。
このように社外の協力を多数受ける一方で、社内でも『エイリアンソルジャー』のマニュアル制作担当だった方から申し出があり、当時トレジャーに色々と質問した際にいただいたFAXを全部とってあるので提供します、というのでこれも全部収録させてもらった。
↑当時のFAX。この絵も描き下ろしである。こんなものが届いたら捨てられるはずがない。
新生SEGA AGES 2500リニューアルの対外的な発表後、社内外のセガファンが「名作を遺す」という我々の活動に賛同して下さったおかげで、こうして前2作『スペースハリアーⅡ』と『SDI&カルテット』をさらに上回るボリュームのあるソフトとなっている。
シリーズ第3弾『アドバンスド大戦略』、『ガンスターヒーローズ』は営業的にもまずまずのスタートを切った。どちらも不振だった『SDI&カルテット』の約2倍となる受注数を集めることができ、2006年に入って、ようやくシリーズに希望の光が差してきた……とキレイにこの回をしめたいところだったのだが、話は美しく終わらない。発売直後に『アドバンスド大戦略』で大きな不具合が見つかってしまったのだ。すぐに会議が開かれ、バランス調整版の制作と商品を店頭から回収、購入されたお客様には後日交換対応を行うことが決まった。会社が被る損害も少なくない。入社から10年以上経って、僕はこの時初めて始末書というものを用意した。
不具合の原因は、ディレクションからデバッグまですべてを外部へ委託していたことだった。大事なところまで他人任せにしてはいけないのだ。一度は上司に言われて控えていた開発への関与だったが、この事件の後は結局深入りするようになってしまう。
↑交換対応告知時の公式サイトの案内
↑初回版とバランス調整版を並べたところ。この3か月の間に、ちょうどCEROの表記ルールの変更があり、マークが「全年齢」から「A」となって、表示位置も異なる。奇しくも違いがわかりやすくなった。
『アドバンスド大戦略』の交換対応は最初の発売から3か月後に始まった。その後は順調にリピート販売を重ね、結果としては累計で『スペースハリアーⅡ』や『ファイティングバイパーズ』をも上回る実績をあげている。
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最後にPS2版『ガンスターヒーローズ ~トレジャーボックス~』は、やはりPS3用PlayStation Storeにて購入可能です。ご興味のある方は是非購入ご検討下さい。価格は762円(税別)です。
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