【第80回】東京都千代田区「BEEP 秋葉原店」「喫茶エリエート」など

東京都千代田区外神田。

御茶ノ水にある事務所で作業をしたあと、夕方の打ち合わせ前にちょっと早めに昼メシを食っておこうと思い立った。昨日発売になった本も買いたいし、秋葉原がいいかってことで、ぶらりとやってきたのだった。

平日にも関わらず、街は人で溢れている。そんな印象は30年前からさほど変わった気がしないが、外国の方が増えていっそう観光地感が増したのは間違いない。昔は平日の午前だと人も少なめで落ち着いていたが、いまはどのタイミングで来ても人だらけ。それは街にとってはとてもいいことだ。

秋葉原の風景です

かつての青果市場の街が電気・家電街へと姿を変え、アマチュア無線、コンピュータ、ゲーム、アニメ・コミック、メイドカフェと、世相に合わせて主力商品を変化させながら様相が移り変わってきた東京でも稀有な街“秋葉原”。
目当ての品を買うだけでなく、ごちゃごちゃとした雑居ビルをハシゴしながらジャンクな掘り出し物を見つけることが楽しい、デッカイ宝箱のようなイメージだった。そんな秋葉原もすっかり整理されて小綺麗になり、総武線のどこの駅前とも大差ない印象になってしまったのは少し寂しい気もする。

昌平橋を通って中央通りを渡り、JR秋葉原駅電気街口から東西自由通路を抜けて昭和通り側に出る。なんでもない駅前雑居ビルの地下を降りて入ったのは、中国東北料理の専門店『香福味坊』だ。少し暗い照明の広々としたフロアでは元気な店員さんが迎えてくれた。
そういえば建物は建て替えられてしまったが、昔この地下には薄暗い昭和なゲーセンがあったな。確か「ゲーム ナポリ」だっけ?
ランチメニューをパラパラとめくって、気になっていた「羊肉の炙り焼き」を注文。

中華料理の写真です

しばらくしてやってきた「羊肉の炙り焼き」は美味しそうな色合いに炒められ、独特の香りとスパイスとが渾然一体となって実に食欲をそそる。ランチでこのボリュームの羊がいただけるのは嬉しい。ご飯おかわり可だし、ちょっとしたお惣菜も盛り放題。飲食店の充実具合も秋葉原が昔と大きく変わった点のひとつだ。

大満足なお腹をさすりながらヨドバシカメラ前からアンダーパスをくぐって、ガード下を右手に見ながら歩く。
左にある複合商業施設、秋葉原UDXの商業ゾーン“アキバ・イチ”は大規模リニューアルのための工事に入っているようだ。聞けば開業から20年だそうで、気づけばずいぶんと時間が経っていたことを実感する。

その道を挟んだ反対側、ガード下のエリアもちょくちょく店舗の入れ替わりがある。中央通りよりも駅近なのに人通りが少なくて、むしろ歩きやすいのは好きなのだけど、その分商売にはちょっと不向きなのかもしれない。
そんな場所に今年6月、拠点を移したのがご存じ我らが『BEEP 秋葉原店』だ。

2025年10月に開業10周年を迎え、秋葉原の電脳レトロ系総合ショップとしてますますの発展を期待されていたBEEPだが、入居していたビルの取り壊しが決まったことから急遽引っ越しを行うこととなった。ギュギュッと詰まった地下秘密基地感が好評だったこともあり惜しむ声が多数聞かれる中、今年の5月に一旦営業を終了し、6月には現在の場所へ移転。電撃的スピードでの営業再開となった。

BEEP秋葉原店の写真その1です

思えば、電子部品や無線機などを販売する「秋葉原ラジオセンター」もJR中央総武線の高架下で長年にわたって秋葉原の象徴であり続けてきた。電子部品を扱うお店も少しづつ減ってきてアンデンティティが薄れてきている秋葉原の街を、もう一方の高架下から支えていくことがBEEPのこれからのミッションなのかもしれない。
秋葉原はいまやゲーム色も薄れてきている気もするのだが、その火を絶やすことなく燃やし続けてほしいものだ。

店内に入ると、前よりも少し広くなってキレイに移転したなーという印象。「ゲームコーナー」のあたりがまだ仮置きな感じだったり、棚にも余裕が見られたりで営業しながら調整していくのだろう。奥にあるショーケースエリアには目玉アイテムも多数並んでいて、ひとつひとつじっくり眺めていくだけでも楽しい。
これこれ! これが実店舗のいいところなのよ。

BEEP秋葉原店の写真その2です

今日のお目当ての『ファミコンパチモノソフト大百科』は店内中央の特設コーナーに置かれていた。その特典チラシ付きと、夏コミ販売の『ピンボールガイドブック2』、そしてジャンクコーナーで見つけた『スペースインベーダー マグネット』を3個ほどつまんでお会計。
 このインベーダーマグネット、40周年の時にも発売されているが、ここにあったのは30周年時に販売されたデッドストック品だ。ウチでは長らく冷蔵庫のドアに貼り付けてあり、たまに買い足してじわじわ増殖していっている。さすがに最近はあまり見かけなくなってきたのでこういう掘り出し物はラッキーだ。

BEEP秋葉原店の写真その3です
▲この日の戦利品。ゲームに関する書籍や同人誌、CDやグッズなど欲しいものだらけで困ってしまう

精算してホクホク顔で外に出ると、店頭の歩道にはみ出さない場所にギリギリ設置されたピンボール『ストリートファイターⅡ』(ゴットリーブ/1993)を海外からの観光客がプレイしていた。きっと「なんでこんなところにあるんだ?」と思いながら遊んでるんだろうな。そういうちょっと変わったお店なんですよ、ここ。

BEEP秋葉原店の写真その4です

ついでに、秋葉原BEEPの旧店舗跡も拝んでおこうか。
階段下は当たり前のように真っ暗。何度この階段を下りたことだろう。いまはまだ看板がかかったままだけどそのうち取り外されることになる。そうなるとそこに存在した記憶はどんどん薄くなっていく。

BEEP秋葉原店の写真その5です

さてと。
お腹もいっぱいだし、欲しいものも手に入った。事務所に戻る前にちょっとお茶でもしていこうか。
再び線路をくぐって昭和通り側に出る。通りを一本外れた路地の2階にあるのが『喫茶エリエート』だ。
いかにも純喫茶といった佇まいの渋い店内。全席ソファタイプの座席でゆったりくつろいだ時間を楽しめる。ただし喫煙可のお店なので、タバコが苦手な方は遠慮した方がいいだろう。階段数段分だけ高くなっている奥の席に腰を下ろす。

ここは生姜焼きやナポリタンなどランチもいけるのだが、お昼は済ませてしまっているのでアイスコーヒーを注文し、やれやれと水を一口飲んでほっと一息。
目の前には一台だけ置かれたテーブル筐体。インストラクションカードは『赤麻雀』(パラダイス電子/1990)だ。動くかどうかは不明。
こちらのお店の創業は1975年で、その数年後には空前のインベーダーブームが到来した。どこかのタイミングでエリエートにもテーブル筐体が設置されることになり、長らくこの場所に留まってきたと推測される。

エリエートの写真その1です

先ほどまでいたBEEP秋葉原店の向かいにある東京消防庁神田消防署。その隣がリニューアル中のアキバ・イチのある秋葉原UDX。そこを合わせた広大な土地を1990年まで使用していたのが神田青果市場だ。
大田区に移転するまで、青果市場は多くの人で賑わい、周辺もその需要で潤っていた。『喫茶エリエート』もまた、市場人の憩いの場だったことだろう。ちなみにお店の隣には日本農業新聞のデカい本社ビルがいまでも存在しているので、その繋がりは完全に切れていないと思われる。
エリエートは青果市場が存在した時代と、電気街へと変貌を遂げて以降の時代とを共に体験しその証拠を残す貴重な喫茶店だ。
そしてエリエートとかつての青果市場跡地である秋葉原UDXのちょうど中間点に存在する秋葉原BEEPもいずれ、この街の物語になっていくのだろうな。
たぶんもう動かない『赤麻雀』をボンヤリ眺めて妄想にふけりながらアイスコーヒーを飲みきった。

エリエートの写真その2です

事務所へ戻るべくJR秋葉原駅の改札を抜け、総武線のホームへと向かう途中、『スペースインベーダーDX』の入った一風変わったアップライト筐体が目に入る。
“PLAY FOR THE FUTURE -AKIBA DONATION-”と書かれたこの筐体はJR東日本クロスステーションデベロップメントカンパニーが設置したもの。ゲームの街である秋葉原に着目し、ゲーム体験とともに地域活性化への寄付ができる仕組みになっている。寄付なのでプレイ料金は規定のものから選ぶことが可能。現金は使えず、クレジットカードか交通系電子マネーのみでプレイできる。

秋葉原駅の写真その1です
秋葉原駅の写真その2です

インベーダーの他にも、電気街口寄りの一角には『ドンキーコング』『スーパーマリオブラザーズ』の2作が一体化した面白い形状のアップライト筐体が1台置かれている。
“電気”と“ゲーム”という街の記憶から想起されるこうした試みもまた、時代に合わせて柔軟に姿を変えてきた秋葉原だからこそ実現し得たことだろう。個性を失うことは致命的なことかもしれないけど、引き継ぐものを引き継ぎながらしぶとく新しい挑戦を続ける姿勢はこの街の大きな魅力に違いない。

 

過去の記事はこちら

さらだばーむ ゲームある紀行

BEEPの他の記事一覧はこちら

BEEP 読みものページ
VEEP EXTRAマガジン

BEEP ブログ

 

よろしければシェアお願いします!
著者紹介
さらだばーむ

目も当てられないほど下手なくせにずっとゲーム好き。
休日になるとブラブラと放浪する癖があり、その道すがらゲームに出会うと異様に興奮する。
本業は、吹けば飛ぶよな枯れすすき編集者、時々ライター。

PAGE TOP