今回は新生シリーズ3本目『セガメモリアルセレクション』のお話。
↑PS2版『セガメモリアルセレクション』製品と受注用パンフレット
SEGA AGES 2500シリーズは、僕が参加するまでの1年間、比較的順調にタイトルをリリースしていた。
2003年8月に3タイトルを同時発売してシリーズをスタート。その後1~3か月に一度2タイトル同時発売というペースで、1年間で計15本ものタイトルを揃えた。これを仕切っていたのがセガとD3パブリッシャーの合弁会社である3D AGESだったが、会社を解消することが決まり、販売ペースは緩やかになった。新生シリーズを立ち上げるにあたり、以前のペースを取り戻したいところだが、2か月に2本ずつだと年間で12タイトル。エムツーへ6タイトルの発注を行ったが、それでもまだ半分だ。2005年初頭、僕はラインナップを増やすべく新たに信頼のおける開発会社を探していたが、その際に出会ったのが日本アートメディアだった(以下JAM)。
JAMは昔からRPGの開発で定評のある会社で、やのまんの『アレサ』シリーズやサターン版の『LUNAR』2作のリメイクが有名だ。ゲームギア初のスタンダードなRPGとしてファンに人気のある『エターナルレジェンド』も、セガから発売されているがJAM開発である。SEGA AGES 2500シリーズにも以前から参加しており、記念すべき第1作『SEGA AGES 2500シリーズ Vol.1 ファンタシースター: generation 1』をはじめ、Vol. 6『イチニのタントアールとボナンザブラザーズ。』、前期の実質的な最終作であるVol.17『ファンタシースター: generation 2』まで計3タイトルを手掛けている。そうした流れもあり、先方から改めて参加を立候補いただいたのだった。前期シリーズの販売実績を調べてみたところ、JAM開発の上記3タイトルはどれも販売が好調だったので、こちらからも是非にとお願いすることになった。
JAMとの最初の打ち合わせでお願いされたのは、『ファンタシースター: generation 3』の復活だった。この『generation 3』というのは、SEGA AGES 2500を立ち上げた際に、公表されたラインナップのうちの1本で、「ファンタシースター」シリーズの第4作『千年紀の終りに』をリメイクする予定だった。しかし今回のリニューアルの際に中止にしたのだ。この時は他にも『アレックスキッド』や『ベア・ナックル』が含まれていたが、どれも実は他のタイトルを優先したため、全く開発はされていなかった。
ともかくJAMとしては『generation 3』はすぐに取り掛かりたかったタイトルだったはずだが、前任者とも相談のうえこれは改めて断った。開発を断念した理由は、何といっても前2作のユーザーアンケートの評価が決して好評とは言えなかったことだ。ファンの多いタイトルほど、リメイクに望むものは多岐にわたる。それを廉価ソフトで実現させるのは並大抵の苦労ではないだろう。そしてもうひとつの理由は、元のゲームボリュームの問題だ。シリーズファンならよくおわかりの通り、オリジナルの『千年紀の終りに』は、ゲームボリュームが前2作の比ではない。当時のカートリッジ容量も1作目が4Mbit、2作目が6Mbitだったのに対し、4作目は24Mbitと、単純比較しても4~6倍にもなっている。しかしこのシリーズは定価2500円という縛りがあり、開発費をやみくもに上げることはできない。クオリティを上げてファンの期待に応えつつ、数倍のボリュームのゲームを同じ予算でリメイクするのは難しいという判断だった。
20年経った今の僕なら、思い切って前・後編にしてしまえばどうかとか、いっそ3作目の『時の継承者』をリメイクしてみようとか、続けるためのアイデアはいくつも浮かぶのだが、当時の僕のプロデュース力では、ファンの望むクオリティにするのは難しかっただろう。
さて、こちらから開発を提案したのは、『イチニのタントアールとボナンザブラザーズ。』の路線の継続だった。『イチニのタントアールとボナンザブラザーズ。』は、アーケードやメガドライブで人気のミニゲーム集『タントアール』『イチダントアール』、そして『ボナンザブラザーズ』という3作品をまとめて移植したタイトルだ。だから「タントアール」シリーズ3作目『2度あることはサンドアール』と4作目『対戦タントアール サシっす!!』をカップリングして移植、というのが僕の案だった。しかしこちらは逆にJAMから断られてしまった。この2作は「ST-V」というセガサターン互換のシステム基板で開発されたタイトルなのだが、移植するハードルが高く、予算内では厳しいらしい。
こうした経緯を経て誕生したのが『セガメモリアルセレクション』であった。『セガメモリアルセレクション』という名は、元々セガサターン版SEGA AGESにあったもので、1本のタイトルとして売るには厳しい1980年代前半の人気ゲームを、4~6本セットにした詰め合わせ移植シリーズだった。これをPS2で復活させようというのだ。小さなゲームが集まっているというのは、ある意味「タントアール」路線ともいえる。
特に前任者は、この80年前後のゲームについての思い入れが深いそうで、前期シリーズではVol.2の『モナコGP』がお気に入りだったのだが、残念ながら販売実績では苦戦していた。そこで今回の『メモリアルセレクション』は複数本収録にして、さらにVol.11『北斗の拳』と『ファンタシースター: generation 2』でも好評だった、リメイク版とオリジナル版を両収録することで、元のファンのニーズも満たそうということにした。ちなみにこの両収録のアイデアは、元々この2作のオリジナル版開発者であった中さんからの提案だったそうで、さすがユーザーの気持ちがよくわかっている。
今回の収録本数は5作とした。それぞれにリメイク版とオリジナル版があるから実質10本遊べるゲーム集になる。これでようやくJAMとセガ両者で合意することができた。
ただし、収録タイトルについても二転三転があった。セガから出した最初の案は『ヘッドオン』(1979)、『ディープスキャン』(1979)、『トランキライザーガン』(1980)、『サムライ』(1980)、『ザクソン』(1982)。しかし、このラインナップを社内のセガファンや営業に伝えてもウケが悪く、見直すことになった。JAMからも『ミスターバイキング』(1984)など、これまたマイナーなタイトルの案が挙がった。そもそもセガの『ハングオン』を出すまでのタイトルというのは、ほとんどがマイナータイトルともいえるのだが……。
最終的にジャンルと開発費、リメイクのしやすさも考えながら、『ヘッドオン』『トランキライザーガン』『ボーダーライン』『コンゴボンゴ』『どきどきペンギンランド』と決まった。
↑オリジナル版のゲーム画面。左から『ヘッドオン』『トランキライザーガン』『ボーダーライン』『コンゴボンゴ』『どきどきペンギンランド』
リメイク版のアイデアは基本的にJAMにおまかせだったので企画書すら見ていないのだが、どれも意外性のあるリメイクになっていた。かわいらしい見た目になった『トランキライザーガン』で独特のゲームシステムを堪能してもらう一方、ほとんど別物になった『ボーダーライン』は、ツインスティックアクションシューティングへと進化。『グラナダ』などに近い戦車単騎突撃型の自由移動ゲームになり、5作品では最も別物になっているが、個人的には一番のお気に入りである。『コンゴボンゴ』はミニパズル的なアクションにチェンジしていたが、元々パズルゲームである『どきどきペンギンランド』は、ルールはいじらず見た目をグレードアップした以外はほとんどそのまま楽しめる。
↑リメイク版のゲーム画面上から左に『トランキライザーガン』『コンゴボンゴ』『ボーダーライン』『どきどきペンギンランド』
唯一『ヘッドオン』のリメイクだけは、僕のアイデアがもとになっている。グラフィックをシンプルに光点のみで表現することで、『Rez』や『コズミックスマッシュ』のようなソリッドな美しさを表現できるんじゃないかというアイデアだったのだが、うまくイメージを伝えきれず、想像していた通りにはならなかったのは苦い経験だ。
↑『ヘッドオン』リメイク版
↑先行して発売されるエムツーのシリーズに合わせて、貴重な当時のパンフレットを閲覧できるギャラリーモードも用意してもらった。
JAMは僕の度重なる注文に対応しながらほぼ計画通りに開発を終え、Vol.23のナンバーが付いた『セガメモリアルセレクション』は、エムツーの2タイトルが発売された2か月後の2005年12月22日に計画通り発売された。
ただし同時発売予定で、別の会社が開発していたVol.22『アドバンスド大戦略』が遅れたため、22よりも23が先に出るというカッコ悪いことになっている。
販売実績も『SDI&カルテット』よりは少しだけ多く売れたものの、全体で見るとやはり今回も苦戦した。これは僕にも責任があって、改めて当時の受注用のパンフレットを見直すと、画面写真はリメイク版ではなくオリジナル版の画面写真だけで作られている。
↑受注用パンフ表(右)と裏。リメイク版の画面写真を裏にも使っていれば影響あった?
右(表面)にはリメイクの画面が入っているから、締め切りの微妙なタイミングだったのか、当時の僕がオリジナル版のほうをアピールしたかったは今では思い出せないが、こうした小さなところでポイントを失っている気がする。
最後に開発終了後、JAMには2作目の話を持ち掛けたものの、その後お話が進むことは無かった。10本のゲーム同時開発の大変さもさることながら、僕のリテイクの多さにちょっと引かれてしまった可能性は高い。その節は大変ご迷惑をおかけしました。
『セガメモリアルセレクション』は、その後もいくつか別の会社にも続きを相談したものの実を結ぶことなく終わっている。こうしたコンセプトのリメイクはその後一度も経験していないので、貴重な1本となった。
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最後にこのPS2版『セガメモリアルセレクション』は、やはりPS3用PlayStation Storeにて購入可能です。ご興味のある方は是非購入ご検討下さい。価格は762円(税別)です。
©SEGA
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