【第18回】唯一無二の独創性──『ボコスカウォーズ』【ファミコン】

毎度、名作ゲームを紹介する連載コラム『髙橋ピョン太のおニューもレトロも』。第18回のテーマは、アスキーの『ボコスカウォーズ』です。その独創的なゲーム性は後にも先にも類を見ない唯一無二の孤高の名作です。発売当初はアクションRPGとされていましたが、のちにシミュレーションRPGの先駆けとも評されるようになりました。実は、このゲームは髙橋とも縁深いゲームなんです。

『ボコスカウォーズ』は、一般的には1985年12月14日に発売されたファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)版が最も知名度が高い製品ですか、実は1984年3月にシャープのX1というパソコン向けに発売されたバージョンがオリジナルです。対応機種が豊富で、ファミコンを始め数多くのパソコンに移植されました。

 

『ボコスカウォーズ』は、ファミコン版が最も有名なバージョン。

 

ファミコン版『ボコスカウォーズ』のタイトル画面。

 

第1回アスキーソフトウェアコンテスト、グランプリ受賞作品

 

オリジナルのX1版は、アスキーが開催した第1回アスキーソフトウェアコンテストにて、見事グランプリを受賞した作品です。『ボコスカウォーズ』は、受賞作品をアスキーが製品化したものだったのです。

 

こちらはPC-8801版の『ボコスカウォーズ』タイトル画面。

 

『ボコスカウォーズ』が誕生した’80年代前半は、デジタルゲームがまだ黎明期であり、パソコンゲームが主流だった時代です。この頃のパソコンユーザーは、パッケージ化された市販のゲームを購入するよりも(そのようなゲームはまだあまり普及していませんでした)、コンピューター雑誌に掲載されたゲームプログラムを自力で入力したり、入力の手間を省く目的で提供されていたカセットテープに保存されたゲームを雑誌社から購入したりするのが一般的でした。ユーザーが雑誌に投稿した作品が多く、ヒット作の多くは雑誌から誕生しました。また、ゲームを作る常連投稿者が著名人となることも珍しくない時代でした。

そんな中で、あのエニックス(現:スクウェア・エニックス)が1982年に第1回ゲーム・ホビープログラムコンテストを開催します。このコンテストは賞金総額300万円という当時としては非常に大規模なものでした。最優秀プログラム賞には賞金100万円が与えられ、受賞作品は市販され印税も支払われるという内容でした。結果は森田和郎さんの『森田のバトルフィールド』(PC-8801)が最優秀賞を受賞し、他にも中村光一さんの『ドアドア』(PC-8801)や槙村ただしさんの『マリちゃん危機一髪』(FM-8・FM-7)などが優秀賞を受賞しました。また、『ラブマッチテニス』(PC-6001)で入賞した堀井雄二さんものちに有名になり、これらの受賞者は、その後も次々とヒット作を生み出しスタープログラマーとして知られるようになりました。

 

1982年秋より募集開始されたエニックスのコンテスト。

(出典:月刊I/O 1982年10月号掲載広告)

 

こうしたプログラムコンテストは、’80年代前半に雨後の竹の子のように増えていきました。そして新たにコンテストを立ち上げたのが、アスキーの第1回アスキーソフトウェアコンテストです。アスキーは、月刊アスキー1983年9月号にその告知を自社広告として載せています。賞金総額は驚異の2000万円で、最高賞金額のグランプリはエニックス同様100万円ですが、グランプリは5名、賞金50万円の優秀賞は10名など賞品本数を増やし、それまでとは一線を画するコンテストを立ち上げたのです。第1回アスキーソフトウェアコンテストは、募集プログラムを完全にゲームプログラムに絞りました。

 

後発となったアスキーのコンテストの作品募集は、1983年の秋。

(出典:月刊アスキー 1983年9月号掲載自社広告)

 

第1回アスキーソフトウェアコンテストの結果発表は、翌年月刊アスキー1984年3月号誌上にて大々的に行われました。グランプリ受賞作品は、以下の5作品でした。

  • 『ウォーゲーム制作キット』(FM-7)
  • 『UTAN Jr.』(PC-8801)
  • 『ボコスカWARS』(X1)
  • 『BOOME RANG』(PC-8001)
  • 『STONE PANIC』(PC-6001)

ここで『ボコスカWARS』(受賞時のタイトル)が見事にグランプリを受賞したんですね。受賞者は、ラショウさんこと住井浩司さんです。第1回アスキーソフトウェアコンテストの発表後、『ボコスカウォーズ(ボコスカWARS)』は1984年3月に製品化されたのでした。

 

写真のパッケージはPC-8801版。PC-8801mkII、PC-8801mkIISR対応。

 

PC-8801版のゲーム画面。スタート時の様子。

 

どんなゲームだったのか

 

『ボコスカウォーズ』は当初、RPGまたはアクションRPGとされていましたが、戦略性やパズル性の高さから、のちに戦略シミュレーションゲームやシミュレーションRPGと評価されるようになりました。

プレイヤーはスレン王国軍を率い、隣国バサム帝国のアドロス城の暴君オゴレスを倒すことを目指します。ゲームは、横スクロール形式で進行し、スレン王や味方の騎士、兵卒を操作。囚われた仲間を助けつつ、敵兵を倒しながら進軍します。スレン王が倒されるとゲームオーバーですが、無事にオゴレスを倒せば1ステージクリアとなり次のステージに進み、以降はより難易度の高いステージとなり、それを繰り返し5ステージクリアするとゲームクリアです。

オゴレスは、左に600メートル進んだ先の城に潜んでいます。スレン王が率いる軍団は、上下左右に自由に動けます。移動量は1歩が1メートル。画面の上下幅は10メートルで固定されており、左に移動するたびに1メートル進み、オゴレスまでの距離が縮みます。スレン王が画面の端に移動すると画面は左右にスクロールします。ですが、騎士や兵卒が移動しても画面はスクロールしません。騎士や兵卒が画面端より先に移動した場合は画面外へと消えます。

 

この14メートル先にオゴレスがいるのですが、ネタバレになるのでその手前の画像です。

 

スレン王軍団には騎士や兵卒は複数人いますが、騎士や兵卒は個別に動くことができず、プレイヤーが騎士や兵卒を動かすと、それぞれが集団で同じ方向に動きます。ただし、この時、すべての騎士や兵卒が動くわけではなく、中には動きそびれるものもいます。

ここまでの解説では、『ボコスカウォーズ』がそれほど独創的には聞こえないでしょう。しかし、ここからがこのゲームの真骨頂です。

 

自軍のスレン王軍団を動かす場合、『ボコスカウォーズ』は切り替えボタン(Aボタンもしくはスペースキー)で移動させる自軍のユニットを切り替えながら移動します。その指示は選択式で、「全軍」「スレン王のみ」「騎士のみ」「兵卒のみ」の4つの選択肢のみで、それぞれ選択したユニットが同時に集団で動きます。この切り替えは、「全軍」→「スレン王のみ」→「騎士のみ」→「兵卒のみ」→「全員」…と切り替えボタンを押すことでローテーションしていきます。ここでコントローラーを上下左右のいずれかに動かすと、その際に選択されているユニットが集団で動く仕組みになっています。ただし木や岩などの障害物に引っかかっているものは置いていかれます。これは、軍団を動かす難しさをシミュレートしているといっていいでしょう。この移動指示は、画面外の騎士や兵卒にも作用します。

敵であるバサム帝国の軍団もまた、暴君オゴレス以外に親衛隊、騎士、兵卒、魔術師、幻戦士、獄使などのユニットがいて、帝国およびオゴレスを守っています。『ボコスカウォーズ』では、このユニットが接触することで戦闘モードになりますが、敵はフィールド内をそれぞれのルールに基づいて動き回ってはいますが(門番のように動いていないものもいます)、敵からは戦闘を仕掛けてくることはなく、プレイヤー自らがユニットを敵にぶつけない限り戦闘になりません。つまり、実質的なアクション性はありません。

各ユニットには基本的な戦闘力が設定されており、たとえばスレン王の初期戦闘力は220、騎士150、兵卒30。敵はオゴレスが戦闘力100、騎士50、兵卒10など、それぞれに初期値があります。戦闘時は、これらの戦闘力+乱数によって勝敗が自動判定され、負けたユニットは消滅します。戦闘に勝ったユニットは戦闘力が10ポイント上がり(それぞれに上限が決まっている)、3勝した騎士・兵卒はそれぞれ重騎士・重兵卒となりユニットの色も黄色に変化します。もちろん敵のユニットも同様です。

 

『ボコスカウォーズ』が恐ろしいのは乱数というランダム要素によって、必ずしも戦闘力が高いユニットが勝つわけではないというところにあります。たとえば戦闘力220のスレン王が戦闘力50の敵の騎士に戦闘をしかけたとしても、運が悪いと格下の相手にサクッとやられてしまい一発でゲームオーバーになってしまうという点です。

また、敵の獄使は兵卒ではなく騎士で攻撃するなど、ユニット間には相性もあります。戦闘は、相手の背後から攻撃したほうが勝率は上がるといったいくつかの裏技的な要素もあります。シミュレーションゲームでありながら、ランダム要素によって勝敗が決まってしまうという部分もあるのは否めないため、『ボコスカウォーズ』は「運だけのゲーム」だから難しすぎると誤解をする人もいれば、戦略を意識し無謀な行動を極力さけることで勝率を上げて戦うゲーマーもいたりするから面白いですよね。

ゲームは、そのほかにも、囚われている味方の兵卒を助けるには、騎士・重騎士じゃないと壊せない壁(牢屋)があったり、スレン王しか壊せない壁があったり、城内の仕掛けもいろいろ存在します。2ステージ以降にしか現れない仕掛けもあります。

 

ファミコン版には独自ルールが存在

 

『ボコスカウォーズ』のパソコン版は、ゲームがスレン王と10人の騎士、14人の兵卒の軍団からスタートします。フィールドには、敵が全180人、味方は囚われている兵卒も含めて50人、この数字上は圧倒的に不利な状況から『ボコスカウォーズ』の戦いは始まります。

 

パソコン版は最初から騎士、兵卒を引き連れて進軍。

 

一方のファミコン版『ボコスカウォーズ』は、スタート時はスレン王たった1人しかいません。この状態で敵と戦いながらスレン王の戦闘力をマックスにするという戦い方もできますが、それはリスクが高く、下手をすると1回目の戦闘でゲームオーバーになることも覚悟しなければなりません。ここはグッとこらえて、魔法で木や岩に変えられてしまった仲間を1人ずつ助け出しましょう。まずはフィールドにある木や岩にスレン王で接触してみてください。もしそれが魔法にかけられた仲間だったら、その場で味方として復活します。ファミコン版もまたパソコン版同様、敵が全180人、味方は囚われている兵卒も含めて50人という数は同じです。騎士を復活させることができたら、その先の牢屋に囚われている兵卒を助けましょう。

 

ファミコン版はスレン王が1人の状態からスタートする。

 

ファミコン版『ボコスカウォーズ』は、このように徐々に仲間を増やしていくという新ルールに変更されていました。これは、当時のファミコンの処理能力では一度に大量のユニットを動かすのは、相当な重荷であったことからの措置でした。ですので、ファミコン版またはパソコン版のどちらか一方の『ボコスカウォーズ』しかプレイしたことがない人の間では、ちょっとゲームに対する印象が異なっているかもしれませんね。

 

スレン王を守る騎士、重騎士ほか、仲間もだいぶ増えました。

 

ゲーム内容についての解説は、これから『ボコスカウォーズ』で遊んでみたい人のためにこれぐらいにしておきます。

 

最も難易度が高いといわれているファミコン版でもオゴレスは倒せます。

 

『ボコスカウォーズ』と髙橋

 

さて、『ボコスカウォーズ』と髙橋の関係性についても聞いてください!!

コンテスト結果発表直後のログインでもニューソフトとして紹介されました。

(出典:ログイン 1984年4月号掲載)

 

前述の通り、『ボコスカウォーズ』はコンテストのグランプリ受賞作品でした。当時のアスキーの『ボコスカウォーズ』に対する評価は、アクションゲームでありながら、RPG的戦略が使えるのがユニークであると評価しています。その上、全部のキャラクターが集合的に動くというアイデアは従来のゲームにはないものであると感想を述べています。また、世界観として敵側のキャラクターの豊富さも評価の対象であり、この種のゲームは今後、新たなジャンルとしてふくらむ可能性もあるのではないかと評し、コンテストにおいては独創性の最高点を得ている作品であることをアスキーの誌面にて紹介しています。

一方、作者のラショウさんこと住井幸司さんは、とにかく、今までにない形のゲームを作りたかったと述べています。ゲームは最初、ポーン(チェスの駒)対ポーンというルールだったんですが、作っているうちにキャラクターが増えてしまったといいます。今までのゲームは主人公が1人であるものが多かったので、複数対複数というのはなかなかいいアイデアではないかとご本人では思っており、さらに時間制、燃料制、得点制を争うゲームでもないところが気に入っているとおっしゃっています。ゲームのアイデアはスケッチブックにラク描きしながら決めていくスタイルで、続けていくとどんどんイメージが膨らんでいくと、当時、お話しされています。ゲーム自体の制作期間は1カ月程度で、コンテストに応募するという時間的な問題で、ルールにあまり手を加えられなかったのが残念だったともおっしゃっていました。

こうした時代背景から誕生した『ボコスカウォーズ』は、コンテストの結果発表後すぐに製品化されました。1984年3月ですね。ちなみに、オリジナルの『ボコスカウォーズ』はシャープのX1でした。プログラミング言語は、これまたシャープの『mini Hu BASICコンパイラ(ハドソン製)』です。

 

アスキーは、『ボコスカウォーズ』がグランプリ受賞作品であり、その面白さについても自信を持っていましたが、商業的には(パソコンの市場シェアから)X1のみでは売り上げにも限界があると判断をします。これは、多くのパソコンに移植しつつ、当時破竹の勢いのファミコン(1984年に200万台を超える)にも移植すべきと考えたのでした。

この時、私はまだアスキーとは何の関わりもありませんでした。もちろん月刊アスキーの読者ではありました。当時の私は、フリーでプログラマーをしており、いくつかのパソコンゲームを開発しては印税をいただき、そのお金でNECのパソコンPC-6001やPC-8801を購入するなど、そんなフリーなスタイルで仕事をしていました。

 

きっかけは、PC-8801用Z80アセンブラ『DUAD88』

 

ある日、髙橋はちょっと儲かったお金で、アスキーが販売していたPC-8801用のZ80アセンブラ『DUAD88』を購入しました。開発用ツールですね。これ、価格は4万9800円とかなりお高いんですね。ちなみに、この頃のゲームの価格は1万円以下です。ワープロソフトが2万円~3万円台でした。しかし、髙橋はPC-8801向けのゲームを開発し始めていた頃で、もっと本格的にPC-8801用のゲームを作りたいと決意したところだったので、清水の舞台から飛び降りる気持ちで買いました。

 

PC-8801向けのアセンブラ『DUAD88』のパッケージです。

 

こんなに高い買い物をしたんだから、いつもは出さないユーザー登録ハガキをアスキーに返信しました。そしたら、その数日後に「うちでゲームを作りませんか?」って、アスキーから電話がかかってきたんです。女性の声でした。こんな海の物とも山の物ともつかぬやからに、この人は何をいっているのかと思いました。だって、髙橋がどの程度のプログラマーかもわからないし、ましてはこちらの素性は何も話していないのに、ただユーザー登録をしただけなのに、おかしいですよね。でも、髙橋は電話の相手が女性だったので、まずは会うことにしたんです。

数日後、アスキーにお邪魔した髙橋は、相手の女性が美人でぶったまげました。ぶったまげたのもつかの間、今度は突然「実はNECから(1985年の)冬にPC-8801mkIIの後継機で、処理速度が速くFM音源を標準搭載した最新機種PC-8801mkIISRが出るんだけど、今、ここに実機があるのね。これを貸し出すのでこれでゲームを作らない?」といい出したんです。まじかよ、髙橋が本当に作れるのかもわからないし、ただユーザー登録ハガキを出しただけの男に何をいい出すんだこの人……、発売前の大事な実機まで貸し出すなんて、おかしいですよね。相手は美人だし、髙橋は二つ返事で引き受けました。

 

NECのPC-8801mkIISR発売広告。本体は1985年1月に発売されました。

(出典:月刊アスキー 1985年4月号広告掲載)

 

またまたその数日後、今度は発売前のPC-8801mkIISRを借りるのと、実際に何を作ればいいのかを伺いに、髙橋は再びアスキーを訪れました。今度のお相手は、髙橋とあまり年は変わらないであろう男性でした(ぎゃふん)。詳しい話を聞くと「実は『ボコスカウォーズ』というX1版のゲームがあってね、これのPC-8801mkIISR版を作ってほしいんだ」というじゃないですか。髙橋はX1版の『ボコスカウォーズ』を見て、X1にはPCG(プログラマブル・キャラクタ・ジェネレータ)があるし、プログラミング言語に『mini Hu BASICコンパイラ』を使っているしで、恐らく当時のPC-8801への移植は難しいだろうなという見解でした。そして、アスキーの男性も同じ見解で「より速いPC-8801mkIISRなら動くはずなのでPC-8801mkIISR向けに作ってほしい」というじゃありませんか。「ただし、BGMはFM音源対応でお願いします。PC-8801では動かなくていいので」とのこと。この段階で髙橋は、SRのことをよく知らないし、FM音源も使った経験がないので、ちょっと悩みどころだったんですが、「発売前のパソコンが触れる」というその1点で引き受けてしまい、その日にPC-8801mkIISRを家に持ち帰りました。確かこれが、1984年の8月か9月頃だったと思います。

PC-8801mkIISRをいろいろといじり倒すこと数週間、この間に『ボコスカウォーズ』の画像データをもらったり、X1のソースを見せてもらったり着々と準備を積み重ねてきました。移植の準備もできたかなと思い始めた頃、例の男性から電話がかかってきて「あのさ、やっぱりさPC-8801でも動くようにしてよ~」といい出される始末。「え~!?」と驚きを返すも「PC-8801とPC-8801mkII版のゲームは一番売れてるし、そのほうか髙橋くんにもたくさん印税が入るし」と。大人ってずるいと思いました。

というわけで、『ボコスカウォーズ』のPC-8801版は髙橋が作りました。もちろん、PC-8801mkIISR対応、FM音源対応です。

 

©1985 K.SUMII & Y.TAKAHASHIの「Y.TAKAHASHI」は髙橋の本名。

 

ちなみにWikipediaを始めネットの情報では、『ボコスカウォーズ』のPC-8801版の発売は1984年6月になっていますが、それはあり得ません。なぜならば、髙橋がPC-8801mkIISRの実機で開発しているし、この話を引き受けたのが1984年の8月か9月頃ですし、PC-8801mkIISRが発売されたのが1985年1月ですから。髙橋がマスターを上げたのは、確か1985年の2月です。2月の後半にアスキーに納品して、3月いっぱい検証をして製品化の準備を開始して、晴れて1985年4月に発売となりました。海のものとも山のものともつかぬ男に発注されたゲームが無事に発売になりました。

それ以来、髙橋はアスキー専属のプログラマーとなるのでした。その後の話は、またいずれということで。

ちなみに、『ボコスカウォーズ』の移植時系列は、髙橋の知る範囲ではMSX版が1984年10月、日立のS1版が1985年3月、NECのPC-6001版とPC-8801版が1985年4月、その後、富士通のFM-7版とNECのPC-9801版が1985年7月、こうした順に発売されたと思います。少なくともPC-8801版に関してはWikipediaよりも髙橋のほうが正しいと思っています。

 

ラショウさんとの出会い

 

『ボコスカウォーズ』PC-8801版の開発当初、髙橋はオリジナル版を開発したラショウさんとは一度もお会いしたことがありませんでした。ラショウさんにお会いするのは、30年以上経た2016年11月10日に今はなきお台場Zepp Tokyoの2階にあった東京カルチャーカルチャーにて開催された“『ボコスカウォーズII』発売記念イベントinカルカル”でした。

 

画像は『ボコスカウォーズII』Nintendo Switch版。

 

“『ボコスカウォーズII』発売記念イベントinカルカル”は、そのイベントの名の通り、なんとピグミースタジオが実に33年ぶりに新作『ボコスカウォーズII』を発売する記念イベントでした。PlayStation 4、Xbox One向けに開発された『ボコスカウォーズII』の発売を記念し、『ボコスカウォーズII』に関する様々な発表や催し物が行われました。その中で、なんとラショウさんが元祖『ボコスカウォーズ』を支えてくれた人々を直接表彰しようという企画で、髙橋は『ボコスカ』継承賞という感謝状とラショウさんお手製のボコスカグッズをいただいたのでした。

 

『ボコスカ』継承賞という感謝状とラショウさんお手製のボコスカグッズの写真。

 

33年ぶりに発売された『ボコスカウォーズII』は、その後、2020年3月19日にはNintendo Switch版を配信し、当時からの『ボコスカ』ファンを大いに喜ばせてくれました。

ちなみに『ボコスカウォーズ』のルールを踏襲した『ボコスカウォーズII』は、ラショウさんが当時に実現できなかった表現やシステムにこだわった正統続編とのことです。二人プレイを推奨されています。

ゲームは、先祖伝来の白仮面を奪われたスレン王が収監砦に幽閉されているというところから始まります。窓もない真っ暗な牢の中でスレン王は、なぜか微かに音が漏れている中から部下たちの自分を呼ぶ声を聞きます。スレン王は夢中で石壁をまさぐり、きっと部下もどこかに囚われているのだと信じて、すべての仲間を救い出し、暴君オゴレスを倒すために、今一度バサム帝国に攻め入って王国を取り戻しに向かうのでした。

 

ちなみに髙橋も、この原稿を書くにあたり『ボコスカウォーズII』をダウンロードして、プレイし始めました。すいません、ですのでまだ『ボコスカウォーズII』の真相は、Nintendo Switchの中なのでした。というわけで、今、現在の感想なのですが、『ボコスカウォーズII』は『I』よりもパズル性が高まっている印象です。特にゲームの冒頭、まずは自分自身がスレン王に戻らなければならないのですが、ゲーム画面内で誰をどう動かせばいいのか、その辺りを真剣に考えながら、仲間を助け出し、そしてみんなで戦うという流れを作っていかなければなりません。『I』よりも複雑さが増してゲーム性にも深みが出ているのではないかと思います。これは『ボコスカウォーズ』ファン必見ですね。

 

画面は『ボコスカウォーズII』のスタート画面。グラフィックは『I』バージョン。

 

ボタン一つで『ボコスカウォーズII』オリジナルの画面に切り替えることも可能。

 

『ボコスカウォーズ』最新作はボードゲーム

 

2025年2月28日、なんと今度はKADOKAWAのアナログゲームブランド「カドアナ」から、『ボコスカウォーズ』をベースにしたボードゲーム『ボコスカチェス』が発売されました。これまた『ボコスカ』ファンはビックリです。

 

まさかのアナログ『ボコスカウォーズ』。ボードゲームの登場です。

 

いやはや、これを買わないわけにはいかない、髙橋です。あの『ボコスカウォーズ』を、ラショウさん自らがゲーム機を使わずに遊べるシステムを完成させたというのですから。ルールデザインもラショウさん本人が手がけ、『ボコスカ』らしいランダム要素のある戦闘を完全に再現したといいます。

 

オリジナル『ボコスカウォーズ』のデザインが継承されているのもうれしい。

 

対戦型ボードゲーム『ボコスカチェス』(価格2420円)は、対象年齢12歳以上、プレイ人数は2人、約20分程度のプレイ時間で終わることができるボードゲームです。懐かしいグラフィックも健在なのがうれしいですね。『ボコスカウォーズ』の雰囲気が漂うボードや駒は、これはもうコレクターズアイテムとして飾っておくだけでもいいと思いました。

今後も『ボコスカ』の一ファンとして、『ボコスカウォーズ』というか、ラショウさんがまだまだ何かやってくれそうな雰囲気で期待せずにはいられません。

 

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著者紹介
髙橋ピョン太

1980年にフリーでパソコン用ゲーム開発を開始。『ボコスカウォーズ』PC-8801版の移植の仕事をきっかけにアスキー専属プログラマーになり、80年代前半~90年代にアスキーのパソコン雑誌『ログイン』の編集者に転向。
その後は、どっぷりと編集につかり、『ログイン』6代目編集長を経て、ゲーム、IT系ライターとなり、現在に至る。Xではレトロなハードやゲームについてつぶやいています。
髙橋ピョン太のX(https://twitter.com/pyonta)

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