【第22回】東京都清瀬市「島田商店」~ 東久留米市「だがしや かなん」など

東京都清瀬市。

趣味で駄菓子屋、喫茶店、銭湯、食堂など懐かしさのある昭和なお店を巡っていると否応なくぶち当たるのが「閉店問題」だ。少子高齢化の時代に突入し、これらのどのお店に行っても若い店員さんは皆無な状況。帰り際にはいつも「次に来る時まで営業してるかな……」と縁起でもないことを考えてしまう。SNSでは日々閉店情報が駆け巡っていて、そのたびに胸がギュッとなる。
人生も五十年を過ぎると、これまで自己を構成する要素として積み上げてきたモノが静かに壊れていくのを実感せざるを得ない。身近な人物、あるいは見知った著名人の死、好きな街の再開発、そして通ったお店の相次ぐ閉店。己の加齢とともに加速していく周囲の静かな崩壊が、やがて自分を飲み込み“無”となる時が来る。

お店に到着すると、入口の前には行列ができていた。時刻は午前11時半くらい。
この「珈琲るぽ」の閉店情報もSNSからもたらされた。ドラマ『相棒』のロケ地やアニメ『ご注文はうさぎですか?』のラビットハウスのモデルとしても有名で、いかにも洋館といった感じの造りが人気の喫茶店だった。私としてはなんといっても『仮面ライダークウガ』で主人公・五代雄介が居候した喫茶店「ポレポレ」のロケ地としてのイメージが強い。
初めて来たのは『クウガ』放送終了からだいぶ後だったので20年くらいか。その後もこの近辺の散歩で何度か前を通ったりはしたものの、タイミングが合わずいつもスルーしていた。

30分ほど待ってようやく店内に入ると、お店の内装は20年前の印象とほぼ変わらなかった。天井は高く広々としており、2階席から下が見渡せるテラスのようになっているのが実にかっこいい。奥にある電話ブースは、当時まだ稼働していたろうか? 正直、どこを見ても古びた様子はなく、お店を閉める理由はそこにはなさそうだった。

ナポリタンスパゲティの写真です

注文したナポリタンはベーコン、マッシュルーム、ピーマン、玉ねぎというオーソドックスな具材とパスタがケチャップでしっかり炒められ、濃縮された豊かな味わい。サラダに添えられたタマゴサラダがまたたまらなく旨い。これなら次に来る時はエッグトーストもいいな……あ、もう来れないのか……などと様々な思いが胸に去来する。
大満足でお会計して外に出ると、お店の前の行列はさらに伸びていた。その脇をすり抜けて通りに出るが、ふと後ろ髪を引かれる思いがして一度振り返る。青いトンガリ屋根と煙突のようにも見えるひときわ高い尖塔。いつまでもそこに在るのが当たり前じゃないからな。複雑な気持ちを抱いてまた歩き出す。

るぽの外観です

喫茶るぽのある通りを数分ほどまっすぐ歩いていくと、一軒の商店が見えてくる。同時に見えてくるのは、店頭にズラリと並んだ10円ゲームたちだ。その美しい横並びは50代的に言えば“栄光の7人ライダー”か“ウルトラ6兄弟”の勇姿を連想させる。

ゲーム機の写真です

清瀬市の島田商店は、いかにも昭和の商店を駄菓子屋に改造したような雰囲気が魅力。いつものようにゴッソリと駄菓子をかごに入れてレジに持っていくと、そこには“ゲーム用”と貼り紙がされたゴツくて古い両替機が置かれている。サイドに付いているレバーを回すことで100円玉を10円玉10枚に両替できる懐かしの手動式だ。錆と手垢の付き具合に年季が入った様子が伺える。

両替機の写真です

お店を出て店頭の10円ゲームをプレイしていると、自転車に乗った子どもたちが大挙してやってきた。競うように店内に入っていくと、元気な声をあげ楽しそうに品定めをはじめる。この駄菓子屋ならではの光景は何度遭遇してもいいものだ。さて、おっさんは邪魔にならぬよう次に行くとしようか。

地図で見るとわかるが、このあたりは県境・市境が入り乱れているエリアだ。清瀬市にある島田商店から清瀬駅方面に戻っていくと途中で一旦、埼玉県新座市に入る。しばらく歩くと今度は東京都東久留米市へと県をまたぐ形になり、荒川へとつながる黒目川を越えてすぐにあるのが「だがしや かなん」だ。

駄菓子屋かなんの外観です

路地のさらに奥の砂利道の先にある一軒家下という非常に見つけにくい店舗が、知る人ぞ知る秘密基地感を煽ってきてまずグッとくる。ワクワクしながら砂利道を行くと……あれ? やってない? 急いで扉に貼られた営業カレンダーを確認してみたら、今日は営業してない土曜日であった。これは不運! と思わず天を仰ぐが、仕方ない。

だがしや カナンの外観です

こちらの「だがしや かなん」も10円ゲーム横並びがバッチリキマったお店。車庫に置かれているのでお休みの日でも見ることはできる。バンプレストの『ちびまる子ちゃん みんなでピーヒャラ 輪投げで遊ぼ!!』(バンプレスト/2007)に触れて、先日お亡くなりになった声優のTARAKOさんを偲ぶ。インストラクションカードの色褪せ具合が否応ない時の流れを感じさせる。

そこからさらに南下し、西武新宿線ひばりヶ丘駅と西武池袋線田無駅の中間辺りにあるスーパーマーケットを目指す。そこはわりと最近知った場所で、スーパーの店頭にゲーム機が置かれているらしい。
ここまでですでに10kmほどは歩いており、だいぶ疲労が溜まってきていた。このあたりには黒湯が楽しめる“にいざ温泉”や、日本最大級を謳う超バカでかスパ施設の“スパジアムジャポン”があり、フラフラと引き寄せられそうになるが今日の散歩はまだまだ先があるので気を取り直して黙々と歩く。

ガッツの外観です

住宅と団地がある地区を歩いていて突然現れたのが「ディスカウントスーパー ガッツ 西原店」だ。どことなく年季の入った雰囲気の外観と店内、ビールが充実しているところを見ると酒屋からディスカウントスーパーに進化した感じだろうか。店内の一角には駄菓子が販売されており、そこには「ニシハラベース」と書かれていた。それでピンときたのは、ここから少し行った西武柳沢駅近くにある「ヤギサワベース」だ。そちらもゲームが遊べる駄菓子屋さんで、どうやらこの店舗内で協業といった形態を取っているようだ。

ゲームマシンの写真その2です

店頭に置かれた10円ゲーム機で、集まった近隣の子どもたちが夢中になって遊んでいた。できれば写真を1枚撮りたいなと思ったのだが、子どもたちの人数と熱気がハンパではなく、一向に空く気配がない。
そういえば自分が子どもの頃も、駄菓子屋に行ったら本当に一日ずーっとそこにいたものだった。友達が入れ代わり立ち代わり次々とやってくるのでまったく退屈しないし、お金がなくてゲームは出来なくとも友人がプレイするのを眺めているだけで十分楽しかった。そんなふうに過ごしながらお金の有意義な使い方や、おばちゃんとの交流で大人との付き合い方を自然と学んでいった。親は無駄遣いと怒っていたけど、全然ムダじゃなかったんだよな……と数十年前の回想にふけっていると、一瞬だけ場が空いたのですかさず写真をパシャリ。またすぐゲームに群がりはじめた子どもたちを尻目に、そそくさとその場を後にした。

最後はガッツから2kmほど歩いた東久留米市の滝山団地周辺。その一角にシブいアーケード商店街があり、裏手にあるデイサービスの店頭に10円ゲームが置かれているという情報を聞きつけていた。目的の場所に行ってみると残念ながらシャッターは閉まっていた。無理もない。時間は午後6時をとうに回っていたのだ。

商店街の写真です

今日はだいぶ無理のあるコースだったし仕方ない、次回の宿題としよう。そして足の限界も近いので、どうやら今日の散歩はここまでのようだ。……などと言いつつそこからさらに2kmほど歩いて、東久留米市の温浴施設“湯~プラザ 柳泉園”まで到達。ここはごみ焼却場の熱を利用した銭湯で、その施設の立派さはかなりのもの。気持ちのいいお湯で時間をかけてたっぷりと足の疲れを癒やし、ついでに付帯施設の食堂でご飯まで食べ、畳の座敷でゴロゴロしていたらすっかり復活した。

湯~プラザの外観です

結局この日は、湯~プラザ 柳泉園を出てたあと西武新宿線久米川駅方面へと抜け、さらに西武拝島線の小川駅近くの深夜系レトロ喫茶「待夢」まで歩いた。
ソファに深々と身体を沈め、オリジナルブレンド・待夢ミックスコーヒーをズズズと啜りながら、また痛みだした足をマッサージする。歩数計を見れば4万歩、28kmを超えていた。
今日1日でいろんなところを巡りすぎて、記憶がすでに曖昧になってきている。それに加えて「待夢」は店主の趣味のモノで天井まで溢れており、ほどよい暗さの照明も相まってどこか古い夢の中にでもいるような心持ちとなり、時間の感覚がボンヤリと気持ちよく溶けていく……
その後、正気を取り戻してどうにか自宅に到着したときは、午前0時をとうに過ぎていたのだった。

 

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著者紹介
さらだばーむ

目も当てられないほど下手なくせにずっとゲーム好き。
休日になるとブラブラと放浪する癖があり、その道すがらゲームに出会うと異様に興奮する。
本業は、吹けば飛ぶよな枯れすすき編集者、時々ライター。

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