【第20回】神奈川県横浜市「第二しんみせ」

神奈川県神奈川区。

ここはJR横浜線大口駅。改札を出て西口に下ると天候はあいにくの雨模様。雨が降ると急激に散歩の意欲が削がれ家に引きこもりがちになるのだが、この日は珍しく友人と一緒に夕飯を食うという約束があり、せっかく外に出るならその前にちょっとぶらついてみるかと電車に揺られてやって来た。
コースとしては、まず駄菓子屋ゲーセンを一軒チェックしてから町中華でランチ。その後、時間的に余裕があれば早めから営業している銭湯に行って時間調整し、横浜に出て友人とメシ……という流れを考えている。大口駅から南に歩いていくと京急本線の子安駅があるので、そこまで歩くだけという非常にコンパクトな散歩コースだ。雨もパラついてるしこれくらいがちょうどいいだろう。

西口ロータリーを抜け、大口通商店街を歩く。実はこのあたりは横浜市でも有数の“商店街銀座”として名を馳せてきた。大口通商店街の先には“おおぐち一番街”“あけぼの通り商店街”“ななしま通り商店街”という商店街へと繋がっている。関東大震災、さらには横浜大空襲をも奇跡的に免れたその一帯は“大口銀座”と呼ばれ、終戦後も大いに賑わったという。

おおぐち商店街の写真です

しかし、現在の大口通商店街は立派なアーケードこそあるものの、シャッターを閉じた店舗が目立ち、街行く人もまばらの寂しげな雰囲気をまとっている。雨のせいかひときわくすんで見える通りをしんみりと進んでいき、路地に目を向けると見えてくるお店が最初のチェックポイント「第二しんみせ」だ。

第二しんみせの外観です

入口のテント庇には「ゲーム 玩具 第二しんみせ」と書かれ、ちらりと見える駄菓子や玩具の圧縮陳列具合がなんともそそる。フラフラと吸い寄せられて店内に入ってみると、狭い通路二列の両側高くに所狭しと商品が並べられた様子に圧倒されるだろう。まるで異世界への狭い入口を感じさせるワンダーランド、いや夢の国だ。

しんみせの店内です

まずは、小さなかごを持ちいつものように駄菓子を全力購入する。といっても500円ほども買えばバッグはパンパンになってしまうだろう。駄菓子屋紳士たるもの、なるべく大きめのバッグを持っていきたいものだ。
店主のおかあさんがいるレジ付近には小学生の男子が2名ほど、駄菓子のカップ麺にお湯を入れてもらっていた。おかあさんが準備をしている様子を見ながらのんびりと待ち、一段落ついたところでお会計をしてもらう。

レジの奥に広がっているのがゲームコーナーだ。
左手には、ネオジオ4本挿しのMVS筐体・SC19型-4が1ゲーム30円でバリバリ稼働中。この時は『ザ・キング・オブ・ファイターズ’98』『ザ・キング・オブ・ファイターズ’99』『メタルスラッグ』『マジカルドロップ』というネオジオ的王道ラインナップ。その並びには『遊戯王 モンスターカプセル』『すごろくアドベンチャー ドルアーガの塔』『わくわく赤ずきんちゃん』『SMABO』『ダブルフィーバー魔界村』といったキッズメダル機がズラリ勢揃い。ドルアーガや魔界村といった80年代タイトルのメダル機にこの店の歴史を感じる。

ゲーム筐体の写真その1です
ゲーム筐体の写真その2です

右手側には10円ゲーム。ニューアストロシティに入った『機動戦士ガンダム ガンダムVS.ガンダム』(バンプレスト/2008)、そしてパチスロが数台という子供から大人まで余すところなく楽しめるチョイスとなっている。
このゲームコーナーは、そもそもそんなに広い空間ではない場所にギュウギュウにゲーム機が配置されており、その上には駄菓子などの在庫らしき段ボールが天井近くまで積み上げられている。圧迫感があり大人には少々窮屈だが、同時に秘密基地感もあり子供にとっては居心地がよさそうな場所になっている。

ゲーム筐体の写真その3です

そんな独特の空間で、さきほどカップ麺を作ってもらっていた少年がズルズルと啜っていたり、その横で結構年齢が上のお兄さんがパチスロを打っていたりとやたらとカオス。だが不思議と嫌な感じはせず、そこにいるみんなが仲間という雰囲気すらある。これぞ駄菓子屋ゲーセンの原点だなと感服させられた。
ちなみにこの「第二しんみせ」は、お笑い芸人のインパルス・堤下敦氏が少年時代に常連だったのだそう。さらにどうでもいい情報として、2017年に堤下氏がごみ収集車に車で追突したのもわりとこの近く。今は運転免許を返納したそうなので、次は横浜線でやってくるのかもしれない。

店を後にして、大口通商店街を途中で曲がり、あけぼの通り商店街に入る。こちらの商店街にはアーケードがかけられていないので傘が必要だ。その突き当りを渡った先にあるのが、中華料理店・宝明楼だ。時刻は14時近く。そろそろ空いてる時間かと思ったが、行列ができていた。近くに行って様子を伺うと、並んでいるのは1名と4名の2組のようなので、すぐに入れるだろうと踏んで行列の後ろについた。
回鍋肉定食、酢豚定食、麻婆豆腐定食。魅力的な料理がメニューに並んでいるが、今日は朝から炒飯気分の高まりを感じていた。よし、ここは脇目も振らず炒飯一直線だ。
ところが、待てど暮らせど一向に行列が進む気配がない。30分ほど待っても誰も店内から出てこないのだ。これは想定外だった。16時横浜集合なので余裕をみて15時半には子安を出たい。銭湯は湯冷ましを含めてざっくり1時間は欲しいので、このままでは間に合わないではないか。結局、店内に入れたのはさらにその10分後だった。仕方がない、今日は銭湯を諦めるしかない。
注文した炒飯はわりと早く到着した。やや硬めのご飯に油がしっかりコーティングされ光を放っている。具材は卵、ネギ、ナルト、チャーシュー。グリーンピースが上に6粒乗せられた教科書通りの一皿。チャーシューは皮が赤い中華技法のしっかりタイプで噛みしめるとサクッときてじゅわっと沁みてくるのがなんともたまらない。これぞ町中華の炒飯と夢中でかきこんだ。

チャーハンの写真です

行列の苦労などすっかり吹き飛び、大満足でお店を出たのが15時少し前。やはりどう考えても風呂に入るには時間が足りなかった。とりあえず子安駅に向かうとして、今度は少し時間が余りそうな感じもある。どこかでコーヒーでも飲んでから行こうか。横浜に行ってからでもいいが、駅周辺は混んでて落ち着かなさそうだ。子安駅へ向かう道すがらでいい喫茶店でもないかとネット検索すると、線路脇に渋めの喫茶店があることがわかった。そういえば以前にこのあたりを散歩した時、寂れた渋い飲み屋が連なる場所があったけど、どうやらその一角にあるようだった。

ミネの外観です

子安駅から地下道を抜けた先、おおぐち一番街の少し外れに「喫茶ミネ」はあった。駅も近いしちょうどいいかと入口のドアをくぐる。カウンターが数席とテーブル席があるなんの変哲もない小さい店内。しかし、入って0.5秒で奥のテーブルがテーブル筐体であることに気づいた。これはなんという僥倖……! たまたま銭湯に行く時間がなく、時間調整のつもりで入っただけの喫茶店で、我が愛しのテーブル筐体ちゃんと遭遇するとは!

テーブル筐体の写真です

目の奥がツーンとなった衝撃でふらりと立ち眩みしかけるが立て直し、どうにか不自然さを悟られないように努めてカウンター席へと腰を下ろす。テーブル筐体席には若い兄ちゃんがおり、クリームソーダを飲んでいた。
出されたお冷をまずは一口飲んで一旦気分を落ち着かせる。ろくにメニューも見ずにブレンドコーヒーを注文すると、スマホで食べログを開く。
「喫茶ミネ」……ああ、なるほど。テーブル筐体の写真を上げている人がおり、口コミでは“インベーダーゲーム”“麻雀ゲーム機”というワードが使われていた。普段「テーブル筐体喫茶」を探すために食べログとGoogleマップを駆使しているが、その際の検索ワードには“テーブル筐体”という専門用語は使わず、”麻雀ゲーム”“ゲーム機”など一般的に用いられそうな言葉で検索することにしている。この言葉選びが案外重要なのだが、どうしても検索からこぼれ落ちてしまうことがある。このお店もそんなこぼれ落ちたお店の中の一店だったというワケだ。

ほどなくして、クリームソーダを食べ終えた兄ちゃんが帰っていった。トイレを借りて戻り際に確認すると、インストカードは『ロイヤルマージャン』(ロイヤル電子/1981)だった。コンピューター対局麻雀ゲームの始祖である『ジャンピューター』(アルファ電子/1981)の登場後に生み出されたクローンの中でも随一のヒット作だ。ヒットしたがゆえにさらにその改造基板も多く、どのバージョンなのかまではさすがに不明。そもそも稼働するのかどうかもポーッとして聞き忘れる始末だった。1P側が麻雀コンパネなのに対し、2P側は8スロット用コンパネになっている。大口銀座の全盛期にはさぞや稼いだことだろう。
さらによく見ると、その隣には物置状態になったテーブル筐体が1台埋もれていた。こちらは通常より横幅の狭いタイプで、この小さなお店にはマッチするものだっただろうと推測できた。

テーブル筐体の写真その2です

店の奥側の窓の外はすぐ線路になっているようで、数分に一回程度の頻度で電車が轟音を上げて通過する。うるさいはずなのに不思議と居心地がいいお店だった。

時間が迫ってきたのでお会計をしてから外に出ると、空は鈍色のままだが雨は上がっていた。銭湯も入り損なったし、また来なきゃいけないな、と濡れた折り畳み傘を仕舞いながら思った。

 

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著者紹介
さらだばーむ

目も当てられないほど下手なくせにずっとゲーム好き。
休日になるとブラブラと放浪する癖があり、その道すがらゲームに出会うと異様に興奮する。
本業は、吹けば飛ぶよな枯れすすき編集者、時々ライター。

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