特別企画!ネオジオCD『超鉄ブリキンガー』発売25周年記念特集!

はじめに

家庭用・業務用ゲームがしのぎを削った80~90年代を中心に、当時の関係者が思い出話として振り返るリレーブログの番外編! 今回は1996年9月20日に発売されたネオジオCDソフト『超鉄ブリキンガー』の発売25周年記念特集をしちゃいます! 同タイトルにまつわるあれこれを当時のスタッフに語っていただきましたので、ぜひご覧になってくださいませ~!


『超鉄ブリキンガー』とは

1996年に株式会社ザウルスによって発売された横スクロールシューティングゲーム。当初はアーケード向けに開発され、ロケテストも行われたが最終的にはアーケード、家庭用ROM版は発売されず、NEOGEO CD用ソフトとしてのみ発売された。

特徴として3DCGを用いて描かれた背景やキャラクターをドットに落とし込んで構築されたグラフィック。また横スクロールでありながらこの3Dで描かれた背景グラフィックを用いることで、疑似的な俯瞰視点ステージを構築している。

ルートは分岐性でマルチエンディング方式を採用された。

2009Wii向けにVirtual Consoleにて、2012年株式会社D4エンタープライズPC向けに運営するプロジェクトEGGにて海外版である『IRONCLAD』を配信(いずれも現在は配信終了)。

 

『超鉄ブリキンガー』開発秘話 序章

Writer:プランニング担当 前田誠

■『超鉄ブリキンガー』が生まれるまで

今年で50歳になる、現役ゲーム開発マンをやっている前田誠です。

『超鉄ブリキンガー』は24歳くらいで初めての自己提案プロジェクトの実現だったので非常に思い入れがあり、当時の仲間との思い出も多い作品で私の人生の中でも割と重要(軽め)なタイトルです。

当時は今のゲーム開発と違って、ボトムアップ型の企画が通った時代で、さらに当時のネオジオはソフトが次々にヒットしているタイミングだったので、運よく企画が通っちゃいました。

ジャンルの選定については、僕自身がシューティングゲーム好きというのもありますが、ネオジオというハードでシューティングジャンルが圧倒的に供給不足だったので、「そこに商機があるのではないか?」というのが企画の発端ですね。

■『超鉄ブリキンガー』の表現手法

一番の特徴は「俯瞰型横スクロール画面」です。これは当時海外で斜め俯瞰型の疑似3Dアクションゲームが流行っていまして、その画面構成が新鮮だったので、うまく取り入れれば、新しい演出を盛り込んだシューティングゲームができるのではないかと、

無理やりその画面形式を採用しました、開発初期は普通の垂直水平画面でしたが、

結果としては良い方に転んだのではないかな、と思っていたりします

それともうひとつの特徴は「レイトレースレンダリングCGをドット絵に落とし込んでインパクトある画面」です。こちらは開発当時としてはビューポイントくらいしか前例がなかったのではないかな、と思っています。結果として開発が難航し、95年の発売予定が96年秋になってしまってその頃には、『バーチャファイター2』等も世に出てしまい。そこまでの訴求力がなくなってしまったのが少し残念です。

■演出についてあれこれ

あと『超鉄ブリキンガー』の演出について、よく勘違いされがちなのですが、当時『新世紀エヴァンゲリオン』が放送直後だったこともあり、漢字演出等はモロにエヴァの影響だろとか言われていたりしたのですが、あの演出はエヴァ放送前には完成していて、市川崑の映画『金田一耕助』シリーズと『ルパン三世』のタイトルタイプがイメージソースなんです。

あと個人的に思い入れがあるのは、ボスのセリフかなぁ。断片的だけど世界観を妄想してもらえそうな外連味ある台詞回しを真夜中のノリで書いていました。

そうそう、『超鉄ブリキンガー』の開発はほとんど夜中に行われていて、日中デザイナーが素材作って、夕方に企画とプログラマーが起きてきて、あーだこーだ言いながらゲームを組み立てていく、そんな開発期間でした。

 

▲(ステージ2A)カニロボ、多脚式機装砲兵暦刀。左右に量産型を従えた『ブリキンガー』の中でもっともアクション数の多い敵 メカ。ほとんどのアクションはROMの中に眠ってます。

▲2-Bルートを選んだ時の大きな柱を過ぎたときの演出。本当は柱をぶっ壊すとこの演出を出すつもりでした。ボス演出でも使っています。洞窟の天井を突き破りボス極地防衛戦闘盤ラブラドルが出現するシーン。

■『超鉄ブリキンガー』後のワタシ

最終的にパブリッシャーであるSNKが『超鉄ブリキンガー』を業務用では販売はしないということになり、そのほか色々なこともあってザウルスを退社することになるわけですが、そこはお酒の場でないと話せなさそうなので、割愛しますね(笑)。

あと、気になってくれた人にその後の僕の足跡をちょこっとまとめますと……

株式会社アスキーに企画持ち込みで世界初の対戦カードバトルゲーム『エンドセクター』を開発。

株式会社カプコンの販売で『ギガウイング』『マーズマトリックス』『ギガウイング2』の業務用とドリームキャスト版を開発、あと密かにゲームボーイアドバンスの『ひつじのキモチ。』等も開発に参加しました。

後に株式会社カプコンに移籍してプレイステーション2の『カオスレギオン』『鬼武者無頼伝』『新鬼武者』のディレクションを担当しました。

その後は同社を退社してフリーのソーシャルゲームプランナー/ディレクターを務めていました。

最近50歳になってコンシューマの開発に戻ってきまして、「国民的RPGの最新作」や「世界で人気のモンスター集めゲーム」や「忍者なゲーム」に首を突っ込んでいます。

ちなみに好きなハードはPC-8801mk2FRです。

特別付録:プランナーが語る「超鉄ブリキンガー」超設定集

 本項では四半世紀の時を経てまとめあげられた、前田氏による超鉄ブリキンガーの世界設定をご紹介します! 当時の雑誌記事やマニュアルにその片鱗はあっても、ここまでまとめられた記述は少ないはずだ。

 

◎鉄仮面共和国の謎 共和国なのに王がいる不思議

・ヤコブの本当の職名は「共和国主席執政官」。

・ヤコブは主席決定格闘トーナメントの永世統一チャンプであるため敬称として王が慣例で使われている。

・主席決定格闘トーナメントで最強を誇るヤコブは、いずれ共和制から帝政に変えようとしている。

・ヤコブは鉄仮面共和国に突如現れた機装兵上条に場所、金、人足を提供する盟約を交わし、上条はオーバーテクノロジーである機装の技術を与えた。

▲1面上空ルート(ステージ1B)中ボス『空裁制空戦闘機ジュラ―ブリク』。ジュラ―ブリクは鶴という意味。実は鉄仮面共和国軍の命名規則で陸軍は漢字表記、空軍はカナ表記になってたりします。

ブリキンガーのオリジン(生まれと育ち)

・そもそもの生まれは何処か何なのかは定かではないが、別の世界(異星)の機械生命体であるらしい。

・異世界で開発された超機関ブリキンドライブを内蔵した唯一の機械生命体であり、ブリキンドライブの内包エネルギーは未知数で、その世界のエネルギー事情を確変するほどの技術であった。

・そのためブリキンドライブをめぐる世界間争奪戦が勃発してしまう。

・ブリキンガーは最大戦力として戦っていたが、自らの存在が戦争の根源だという矛盾を抱え苦悩していた

・戦争の発端を作り、拡大を招いてしまったブリキンガーは自らを放逐することでこの世界の戦争を終わらせることを決意、異世界へ自分を強制転送させる。

・ブリキンガーの本来の目的は人間の仕事を手伝う汎用的なワーカーロボットのはずであった。

◎ブリキンガーという技術

・ブリキンガーは異世界(異星)から戦争を逃れてきた機械生命体。

・別名「鉄生ル者」遠い昔、隕石のように空から降てきたという。

・謎の隕石「鉄生ル者」は鉄仮面共和国で回収され分析されていたが、あまりに高度な技術のためブラックボックスとして扱われていた。長年の研究の結果、単体で巨大なエネルギーを取り出すことが可能であることが判明し共和国のエネルギーのほぼすべてをまかなう中心炉として地下に設置されていた。ブリキンガーの逃走後、都市の地下を丸ごと融合路にすることで同等のエネルギーを獲得することに成功している。

・その後現れた上条たちにより、より高度な解析を受け量産型が製造されている。

・量産型には疑似ブリキンドライブを搭載している。

▲6-Aルートを選んだ時だけ見れる量産型ブリキンガー。ブリキンエンジンを積んでないだけで戦闘力はブリキンガーに引けを取らない。多分ゲーム中でもかなり難しい難所。

機装兵という存在

・実は自意識を持った異世界生命体である

・上条はブリキンガーと同族だが元来の敵対種である

・オリジナルブリキンガーを長年追い続け、遂にこの星にあることを突き止めやってきた

・上条のほか部下の猟残鈴城などは上条と同時期に転移してきた同族機装兵である

折賀凰愚などは技術供与によって鉄仮面共和国で作られた疑似機装兵である。

上条の目的の謎

・上条はブリキンドライブの技術の奪取、独占、複製を目的としている、

・元の世界に戻ることが難しいと悟った上条は、この世界人間をすべて抹殺し、新たな機装兵の世界を作ろうとしている。

・そのためにブリキンドライブと鉄仮面共和国の協力が必要だった。

・当初チョップ王国の戦線に立っているブリキンガーを量産型だと考えていた。

チョップ王国の王様の謎

・戦争放棄、戦力非保持を掲げた独立国。

・王族は上条の手によって既に侵攻初日に殺害されている。

主人公機の謎

・ブリキンガーは都市のエネルギー回路として長い間使用されていたが、自意識回路の再稼働後、鉄仮面共和国から遁走し、チョップ王国の農家に身を隠していた。

・上条の出現までの間はチョップ王国の農家で農耕機として静かに暮らしていた。

・鉄仮面共和国がチョップ王国に侵攻するさい、それを見過ごすことができず、再度戦う決意をする。

・本来なら一騎当千のオリジナルブリキンガーだが、長年のエネルギー源としての酷使と、メンテナンス不足によりブリキンドライブが不安定になり単騎での長時間の戦闘ができなくなっていた。

・ブリキンドライブが不安定なため単騎で長時間活動できないブリキンガーにはエネルギードックが必要なため、チョップ王城の博物館に収蔵されていた飛行機を援護機としてブリキンガーが自らカスタムする。ブリキントランジスタを搭載し、エネルギーの貯蔵、放出、およびブリキンガーの援護攻撃装備を追加、ブリキンガーからの遠隔操作を可能にした。

・パイロットは乗っておらずブリキンガーが自ら遠隔操作している。カスタム元となった飛行機は1900年代の実在機体となっている(面影は一切ない)。

 -フォッカー・アインデッカー

 -ブリストル・ボックスカイト

 -Rogožarski IK-3

こうして、ブリキンガーの長く苦しい戦いは始まったのであった・・・。

END

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