
アイテム情報

■概要
『X1 Twin(CZ-830C)』は、1987年12月にシャープより発売された、PCエンジン内蔵型の8ビットパソコンです。定価は99,800円。
キャッチコピーは「これがX1誕生5年目の解答です。」で、当時のシャープの並々ならぬ自負が込められていました。
ホビーパソコン「X1」シリーズの集大成として提示された答えは、驚くべきことにライバル機であるNECのゲーム規格「HE-SYSTEM(PCエンジン)」をその身に宿すことでした。
本機の発売以降X1シリーズは終息し、以降のシャープは次世代の『X68000』へと主軸を移します。
X68000ではメディアがフロッピーディスクへと一本化されたため、結果として本機は「HuCARDを直接スロットに挿入できる唯一無二のパソコン」という、極めてユニークな立ち位置を確立しました。
黒を基調としたスマートな筐体に、フロッピーディスクドライブとHuCARDスロットが並び立つ姿は、当時のユーザーにマルチメディア機の未来を予感させました。
この意匠は後のX68000にも継承され、伝説のボディデザイン「マンハッタンシェイプ」を生み出す重要な布石となっています。

■歴史と特徴
当時、パソコン市場ではシャープの「X1」とNECの「PC-8801」が激しいシェア争いを演じていました。
そのような状況下で、シャープが自社ハードに競合他社の規格を搭載したことは、まさに前代未聞の事態といえます。
PCエンジンはNECホームエレクトロニクスの製品ですが、その核となるのはハドソンと共同開発した「HE-SYSTEM」という共通規格です。
シャープはこのライセンスを採用することで、X1の豊富な実用・趣味用ソフトと、PCエンジンのアーケード級のゲーム体験を一台で両立させることに成功しました。
本体前面には「切り替えスイッチ」が備わっており、ボタン一つで「パソコン」と「ゲーム機」の顔が瞬時に切り替わるギミックは、まさにハイブリッド機の醍醐味。
しかし、PC側とゲーム機側でデータを相互利用できるような連携要素が乏しかったことや、高価な価格設定がネックとなり、商業的な成功を収めるまでには至りませんでした。

■トリビア
この「PCとゲーム機の融合」という野心的なコンセプトは、のちにセガも追随することになります。
『テラドライブ』(TERADRIVE)は、1991年にセガが日本IBMと共同開発したメガドライブ内蔵のIBM-PC互換機です。
『X1 Twin』が日本の8ビットパソコン文化の延長線上にあったのに対し、テラドライブは世界標準の「DOS/V」への移行期を象徴するハードでした。
両機ともに「高価であること」や「両機能の連携不足」といった課題を抱え、時代の先駆者ゆえの苦悩を味わった点では共通しています。








