『ゲームボーイ』ソフトの電池交換のすべて
みなさんは、久々に起動した『ゲームボーイ』ソフトのデータをセーブできなかったり、データが消失してしまった経験はないでしょうか?
『ゲームボーイ』ソフトのカートリッジにはセーブデータを保持するためのボタン電池が搭載されており、約5年ほどで寿命を迎えるケースが多いです。
そのため、長い期間起動していなかったり、中古で購入したソフトの多くは、既に電池切れを起こしている可能性があります。
近年ではあえて電池交換を楽しむユーザーも増えていますが、はんだ付けなどの作業は初心者にはやや難易度が高いものです。
本記事ではトラブルを回避しながら安全に交換するためのノウハウを紹介していきます。
ソフトの電池が切れるとどうなる?
結論からいうと、「セーブができない」状態になります。
特にRPGやシミュレーションゲームなど長時間のプレイが前提となるソフトでは、電池切れによって前のセーブ点に戻れない、あるいはセーブそのものが全く残らないという事態が起こります。
また、『ポケットモンスター金・銀』のように、内臓時計を搭載しているものだと時間が進まなくなりゲームの進行に影響を及ぼす場合も。
『ゲームボーイアドバンス』(GBA)以降のタイトルの場合、フラッシュメモリを使ったソフトが増え、電池不要のタイトルも登場してきました。
しかし、往年の『ゲームボーイ』ソフトでは依然としてバッテリーバックアップ方式が主流であったため、名作を遊び続けるためには電池交換が不可欠となります。
電池交換を始める前に知っておきたい注意点
電池交換を行う前に、確認しておきたい主要な要素をピックアップしました。
最悪故障が伴う、自己責任の作業になりますのでしっかりと認識したうえで作業してください。
バッテリーバックアップ対応ソフトか確認しよう
『ゲームボーイ』ソフトの中には、パスワード入力によるセーブや、FRAM等により電池を使わずにセーブ機能を搭載しているソフトも存在します。
電池交換対象のバッテリーバックアップソフトかどうかを、事前にパッケージ情報やインターネットで確認すると良いでしょう。
初期のソフトであれば、パッケージに記載されていることが多いです。逆に、カラー専用/共通になると説明書に記載されている場合が多いです。
もしも、不要な作業であることが判明すれば、時間と手間を無駄にせずに済みます。
逆に自分が持っているソフトが長時間遊んでいなくてもセーブデータが保持されている場合は、電池がまだ切れていない可能性が高いです。
実際に起動して初めて電池切れがわかるケースもあるため、念のためセーブとロードが問題なく行えるかを確認するほうが確実です。
セーブデータが消える可能性大!
電池交換の最大の弊害は、現在のセーブデータが消えてしまうリスクがあることです。
ほとんどの場合、電池を外した瞬間に電源が途切れるのと同じ状態になるので、基板上のメモリがリセットされデータが消滅します。
データを保持したまま電池を交換するのはかなり難易度が高く、電池をリード線を用いて並列につないだり、ゲームを起動状態にして交換する必要があります。
いずれの方法もショートや故障の原因が高まるので、初心者にはオススメできません。
大事な育成やプレイ成果を守りたい場合は、PCへデータ吸出しを行える機器「ダンパー」やセーブデータの吸出し機能のある「互換機」を使ったバックアップが必要になります。
『ポケモン』シリーズであれば、通信ケーブルによる他ソフトへの退避や『ポケモンスタジアム』等の関連ソフトを使って対処すると良いでしょう。
使用する電池の種類について
『ゲームボーイ』ソフトへ使用されている電池は多くの場合、CR1616やCR2025といったボタン電池です。
サイズや容量が異なるため、ソフトの基板に合ったサイズかどうか事前に確認しておく必要があります。
ボタン電池の命名規則は、CR+[直径]+[厚み]となっており、覚えてしまえばかなりわかりやすい型番です。
純正のボタン電池は「CR1616」ですが、サイズが小さいことから電池容量が少ないので、電圧が同じかつ容量が大きい「CR2025」「CR2032」で代用する方も多いです。
電池交換に必要な道具一覧
基本はドライバーと取り付け手段を用意できれば電池交換を行うことができます。
しかし、安全かつ効率的な作業を行うには複数の道具が必要になります。
代表的な物からプラスアルファまでご紹介いたします。
ドライバー
必須度:大 値段:100円~1000円前後
『ゲームボーイ』のカートリッジには「DTC-20」(通称:星形)という特殊なネジが使われています。
『ゲームボーイ』以外のソフトも一般的なプラスやマイナスドライバーでは合わないことが多いため、ゲーム機専用のドライバーを用意しておくと安心です。
また、電池を取り外す際に隙間に差し込む精密ドライバーも準備しましょう。
電池の接点の端子を、「てこの原理」でグイグイとはずすようなイメージです。
ただし、この方法は基板へのダメージが大きいので、できるかぎりはんだで外すことをオススメします。
カッター等でも代用することができますが、電池本体がかなりピッタリと接着されていることもあり、刃が折れたり、手を切ってしまう危険性があります。
ラジオペンチ
必須度:大 値段:100円~1500円前後
ボタン電池を取り外す際、基板へつながる端子から電池本体を引きはがすのによく使われています。
取り外しの際にどうしても力が加わってしまうため、確実に電池の接点が歪んでしまいます。
接点の歪みを整えてまっすぐにする作業も同時にこなせる道具なので、用意しておきましょう。
また、はんだを使用する場合は、はんだを必要量に切るのにも重宝します。
ピンセット
必須度:小 値段:100円~1000円前後
ドライバーやペンチではつかみきれないごく小さな部品やネジを扱う時に重宝します。
カートリッジの細い隙間に入り込んだパーツを拾うことなどにも役立ちます。
金属性のピンセットを使用する場合は、意図しない接触による基板ショートに注意が必要です。
先端に絶縁カバーが付いたものを使うとより安全です。
接点や基板を指で直接触れると、予期せぬトラブルが発生することもありますので、より慎重になりたい方は用意しましょう。
タブ付きボタン電池もしくは電池ホルダー
必須度:大 値段:100円~500円前後
メインとなる交換用のパーツです。
タブ(接点)がはじめから付いているボタン電池であれば、はんだごてを使って基板へ直接取り付けが行えます。
一方で電池ホルダーを導入すると、次回以降の交換が格段に楽になる利点があります。
ただし、ホルダーを追加した分だけ基板スペースが必要となり、カートリッジの内部構造によっては取り付けに工夫が必要な場合もあるため、サイズをよく確認しましょう。
はんだごて・はんだ
必須度:中 値段:500円~4000円前後
古い電池を外し、新しい電池を固定する際にははんだごてを使用することが多いです。
温度調節機能付きのものを選べば、基板を焦がすリスクを下げながら安定した作業が可能になります。
はんだは少量でも十分です。
つけすぎるとショートの原因になったり、基板を汚してしまうため適切な量を意識しましょう。
慣れないうちは練習用の基板などで一度試して、はんだ付けの感覚をつかんでおくと、本番での失敗を減らせます。
はんだ吸い取り線・フラックス
必須度:中 値段:500円~1000円前後
古い電池を外すときや、はんだがつきすぎてしまった時に余分なはんだを除去するための道具です。
メリットとして、基板を傷つけるリスクを抑えながらはんだを取り除けます。
使い方は、はんだごてで吸い取り線を温めるといった手順で行い、不要なはんだを絡め取ります。
フラックスは、はんだ付けをスムーズに行うための補助剤です。
接点の表面に付着している酸化物や汚れを取り除くことができるので、うまく接着できない、通電しないようなトラブルを軽減できます。
ビニールテープ
必須度:中 値段:100円~500円前後
はんだを使用しない場合、ビニールテープで代用することもできます。
接点同士の接触を避けるために、絶縁する役割でも使用できます。何かと重宝するため用意しておくと便利です。
安全対策用の保護メガネ・手袋
必須度:大 値段:100円~1000円前後
はんだ作業時には高温のこて先や飛散する可能性があるはんだに対して、目や手を守る必要があります。
保護メガネと手袋は可能な限り着用しましょう。
軽視されがちですが、はんだや工具が直接肌に触れるとやけどや切り傷を負うリスクがあります。
また、静電気のような些細なことが原因で故障を引き起こす可能性も捨てきれないので、ゲームソフト・作業者どちらにも利点があります。
テスター
必須度:小 値段:1000円~10000円前後
交換後に取り付けた電池の電圧を測定するための機器です。
正しい電圧値が出ているかを確認することで、導通不良や極性ミスを素早く発見できます。
また、基板そのものが故障していないかのチェックにも役立ちます。
疑わしい箇所があればテスターで通電検査することで原因を特定しやすくなります。
うまくいかない場合の切り分けを行う際に頼りになるアイテムです。
『ゲームボーイ』ソフトの電池交換手順
電池交換は丁寧に行うことで失敗や故障リスクを最小限に抑えられます。ここではGBAソフトを使用し代表的な手順を解説します。
Step1:カートリッジのネジを外す
まずは背面にある専用の特殊ネジをドライバーで外し、カートリッジケースをスライドさせるようにして開きます。
ネジを外したら、失くさないように小皿やトレイ(カートリッジを外したフタ等)に入れて保管しましょう。
カートリッジの作りによっては、ケースがはまり込んでいて開けづらい場合がありますが、無理に力を入れると爪部を破損しやすくなります。
慎重に力を加えながらゆっくり開けるのがコツです。
開けた後、基板とカートリッジカバーにホコリや汚れがないかも確認してください。
Step2:古い電池を取り外す
カートリッジ内にはんだで固定されたボタン電池があります。
はんだごてを基板のタブ部分に当てて、溶け出したはんだを吸い取り線やはんだ吸い取り器で取り除きましょう。
電池が外れかけた状態で無理に引きちぎると、基板のパターンやパーツを破損する恐れがあります。
ゆっくりはんだを溶かしながら、タブをひとつずつ外していくのが手間はかかりますが故障を避けるには一番有効です。
古い電池は金属部分が熱くなっていることがあるため、ラジオペンチやピンセットを使って安全に取り除き、直接手で触らないよう注意してください。
Step3:新しい電池をはんだ付けまたはホルダーで固定
新しいタブ付き電池を使用する場合は、古いタブがあった位置と同じ部分に合わせてはんだ付けします。
タブはしっかり基板に密着させ、浮きがないように確認しましょう。
電池ホルダーを取り付ける場合は、ホルダーの大きさや固定位置に注意が必要です。
基板に干渉せず、しっかり電池を保持できるように取り付けます。
極性を間違えるとセーブできなくなるばかりか、基板を傷める原因にもなります。
プラスとマイナスの向きを間違えないよう必ず再チェックしてください。
はんだを使用しない場合のパターンは、「はんだ不要の交換方法を使いたい場合」の項目で解説していますので自分にあった方法を選んでください。
Step4:ケースを元に戻して動作を確認
新しい電池を装着したら、カートリッジのカバーを慎重に元の位置に戻し、ネジを締め直します。
ネジを全て戻した後は、実際に『ゲームボーイ』本体に挿して動作確認を行います。
セーブ後に一度電源を落とし、再度起動してセーブデータがきちんと記録されているかをチェックしてください。
もしセーブがうまくいかない場合はもう一度基板を開け、はんだ付け部分や電池の極性を再確認しましょう。
微妙な接触不良で起動時には問題がなくても、セーブ時にエラーが出るケースもあります。
GBAソフトの電池交換の違い・ポイント
GBAのソフトでは、従来の『ゲームボーイ』と形状が異なるため、カートリッジを開ける手順やネジの種類が異なります。
特殊ドライバーが必要である点は同じですが、ねじはY型が必要になるため別途準備が必要です。
GBAのソフトのスペースは限られている為、電池のスペースがタイトです。
サイズが大きい代用品は取り付けられない場合もあります。(CR2025でも取り付けられないことが多いです)
また、GBAソフトにはフラッシュメモリを採用して電池を必要としないものも増えており、すべてのGBAソフトで電池交換が必要とは限りません。
特にポケモンシリーズなど、一部のタイトルは時計用の電池を別途搭載しているなど複雑化しているケースがあります。
もし詳細がわからない場合は、ソフトごとの仕様をリサーチしたうえで取り掛かるのがベストです。
基板のレイアウトが異なることで、電池の外し方やはんだ付けポイントも微妙に異なるため、あらかじめ写真や解説サイトを参照してイメージをつかむと失敗を軽減できます。
はんだ不要の交換方法を使いたい場合
上記の「Step3」では、はんだを使用しています。
実は、はんだを使用しない場合でも電池交換を行うことができます。
ビニールテープで、電池と接点をぐるぐる巻きにすることで物理的に固定するシンプルな方法です。
はんだを使用しないので、費用や手間が少なく手軽に行うことができます。
ただし、電池や基板の発熱によって接着が弱くなることで、データが消失してしまうリスクが高まるデメリットもあります。
『ゲームボーイカラー』専用のクリアなカセットの場合、ビニールテープが透けて見えることで不格好になってしまう点も人によっては気になるポイントです。
電池交換後もトラブルが解決しない場合
電池交換だけでは解決できないケースもあり、状況によっては追加の対処が必要です。
症状を切り分け、適切な判断を行うことができれば、出費も抑えられますし、ソフトへの負荷も少なく済みます。
もう一度手順を繰り返す
電池を交換してもセーブ機能が回復しない場合は、カートリッジ側の基板が損傷している可能性や、本体側の接触不良が疑われます。
はんだがきちんと付いているか、極性を間違えていないか、基板と電池の接触がしっかりしているかなどを再度確認することで不具合が解消することがあります。
特に初めての作業では、小さなミスが意外と見逃されがちです。
写真やメモを撮りながら作業すれば、どこで問題が生じたのかを追いやすくなります。
再確認の際は、差込口端子のクリーニングを同時に行うことをオススメします。
作業時のホコリや汚れによって起きる接触不良という場合も往々にしてあるので、合わせて実施してみてください。
本体や基板に問題がある可能性
カートリッジを複数本試してみてもリセットやセーブエラーが生じるなら、『ゲームボーイ』本体自体に問題があるかもしれません。
長期間使われていない本体は経年劣化による故障や接点が酸化してしまうことも多いです。
他に『ゲームボーイ』が動かせる機器をもっていれば、確認を行うことができるので試してみると良いでしょう。
また、ソフト側の基板に破損や腐食がある場合は、電池を交換しても正常に作動しないことがあるため、目視で基板に傷や変色がないか確認しましょう。
これらの症状が見られる場合は、より高度な修理や部品交換が必要になったり、最悪の場合ソフトを再購入しないといけないケースもあります。
専門の業者に依頼する
自分での修理に自信がない場合や、何度やってもうまくいかない場合はプロに任せるのが安全かつ確実です。
専門業者に依頼すればFRAMへの換装のサービス等を行っている場合もあるので、より利便性が上がるでしょう。
インターネット上においても、ゲームソフトの修理サービスを提供している業者が多数見つかります。
料金はかかりますが、結果的に基板まで破損して買い直すよりも安く済む場合があります。
まとめ
『ゲームボーイ』ソフトの電池交換は手順や道具を正しく理解していれば10分程度の時間で行えます。
一度なれてしまえば、応用編として『ゲームボーイ』以外のゲーム機も電池交換できるようになったりと、自分で挑戦するメリットも大きいかと思います。
近年では、コレクション需要から非常に高額なアイテムになってしまっている場合もあるので、細心の注意を払って作業を行いましょう。
しっかりした手順を踏めば、『ゲームボーイ』ソフトは長く遊び続けられる頼もしい存在になってくれるはずです。
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