【第71回】東京都渋谷区「ASO:VIBA!」~「GAME in あそびば20」

東京都渋谷区恵比寿。

恵比寿駅前のルノアールで急に時間がポッカリと空いてしまった。打ち合わせの相手が突然の体調不良でドタキャンとなったからだ。
電話の向こうでしきりに恐縮する相手をなだめ、ヤレヤレと席に戻ってコーヒーを一口。
さて、これからどうしよう。
一時期、通勤の通過駅として利用したことはあるもののほとんど散策したこともない恵比寿駅。せっかくだしここでメシでも食ってから帰ろうか……というような思い出の店すらなくボンヤリとしたままコーヒーを飲み終えた。

仕方ない。普通に帰るか。
向かった恵比寿駅構内は人でごった返していた。隣にある渋谷駅の余韻というか、地理的に密接している代官山というフィルターを通してオシャレ度が自然と上がった街というか、立ってるだけでなぜかモジモジしてしまう居心地の悪さがつきまとう。

えびすストアの写真です

そんな中、駅の真ん前の「えびすストア」はレトロ感漂う商店小路として60年以上あり続ける奇跡のような存在。お店は入れ替わりとともに小洒落が侵食してきているものの、器はそのままだしそこかしこに昭和が香る落ち着く場所だ。なんならさっきのルノアールより落ち着く。
考えてみれば、駅のこちら側はほとんど歩いた記憶がない。へぇ、この道はここと繋がってるのか。この辺りは結構古めの建物が多いんだな、などと意外な発見がある。路地をうろつき、大きな道にぶつかるなどして小さな散歩にそれなりに満足したので、それじゃあ帰ろうかと駅に向かうと「ASO:VIBA! GAME」という看板が目に止まった。

ASOVIBAの写真その1です

お?
恵比寿の駅前にゲーセン?

入口から中を覗くとすぐに階段で店内の様子は伺えない。これは入ってみるしかないでしょ。
階段を上がると、最新の音楽ゲームやオンラインカードゲームが所狭しと並んでいる。いや、所狭しどころかメチャクチャ狭い。

ASOVIBAの写真その2です
ASOVIBAの写真その3です

大型筐体の隙間を縫うようにして店内を見て回る。こんなスペースによくプリ機を入れてあるな。ドン・キホーテの圧縮陳列みたいな並べっぷりだ。
よく見ると天井もけっこうパツパツのギリギリで相当にキッチリ計算した上で収められていることが見てとれた。これはもうゲーセンボトルシップだ。

3階に上がるとこちらは少し小型の専用筐体と汎用筐体モノが中心に並べられている。2階より若干スペースにゆとりはあるものの、天井から垂れ下がる電源コードがいにしえの雑然としたゲーセンの雰囲気を醸し出している。

あそびばの写真その4です

タイトーのVIEWLIXに『ウルトラ警備隊』(バンプレスト/1996)、ナムコのノアールに『エイリアンVSプレデター』(カプコン/1994)、セガのバーサスシティに『ザ・キング・オブ・ファイターズ2002』(SNKプレイモア/2002)と、ハードとソフトの組み合わせに長年の円熟を感じる。シブい。実にシブい。
後ろを振り向けば、悲劇のサードパーソンシューティング『スティールクロニクル ヴィクトルーパーズ』(コナミ/2013)の姿も。
この店にはキュレーターでもいるのか? と唸るほどにアーティスティックですらある。

ASOVIBAの写真その5です

恵比寿というオシャレエリアに今でもこんなメロいゲーセンが息づいていたことに正直驚きを隠せない。いや、そもそも恵比寿という街は日本麦酒醸造(現:サッポロビール)が広大なビール工場を建設したことから発展していった工業地だ。1994年にエビスビール工場跡地に恵比寿ガーデンプレイスが開業して以降、急にオシャレイメージでもてはやされはじめたにすぎない。居心地の悪い街などという言い草は深く街を理解しようとしない無知者の戯言なのだ。
やはり街というのは実際に訪れて歩き回ってみないとなにもわからない。目からウロコがポロポロと落ちる思いでお店を後にした。『アミューズメントスペース ASO:VIBA!』、定期的にチェックせねばなるまい。

そんな「ASO:VIBA!」の看板を見かけたとき、同時に脳裏をよぎったことがある。
この街にはもうひとつ“遊び場”があったハズだ。

恵比寿駅東口改札から続く恵比寿スカイウォークの長ーい動く歩道に乗り、下りた先に見えるのがこの街の様相を一変させた恵比寿ガーデンプレイスだ。その脇を走るJR線の上にかかったアメリカ橋を渡り、線路に沿って駅側に少し戻る。駅近一等地だが昔ながらの古めの住居もチラホラ見える住宅街の一角。

あそびばの写真その1です

『GAME in あそびば20』は、いまもその姿がそのままポツンと残されている。

初めてこのお店に気づいたのは、かれこれ30年ほど前だろうか。当時仕事で頻繁にこのあたりを訪れる機会があり、その時に偶然発見した。
店頭に10円ゲームが置かれたいわゆる駄菓子屋さんのような店舗スタイルは、当時すでに珍しくなっていた。まさか、出来立てホヤホヤの恵比寿ガーデンプレイスがある街にこんな古めかしい個人ゲーセンがあるなんて……! と驚いた記憶がある。

店内はかなり狭いが、それでもクレーンゲーム(ジャレコの『ワンダーハンティングミニ』)やピンボール(ウィリアムズの『GETAWAY』)、SNKのMVS筐体などが置かれていた。目立たない住宅街にある小さなお店には似つかわしくない本格的なラインナップ。外観の駄菓子屋感もあり、客層は小中学生が大半だったように思う。ハッキリとオトナが入りづらい雰囲気を感じた。

あそびばの写真その2です

それ以来、恵比寿に行くたびちょくちょく寄るようになったのだが、仕事が一段落して恵比寿に行かなくなると『GAME in あそびば20』のこともすっかり忘れてしまっていた。
しばらくして風の噂で閉店の報せが舞い込んだものの、その頃は多忙で最後のお別れ訪問も叶わなかった。ネットで調べると閉店はおそらく2015年前後。それからもう10年以上が経過してしまっている。

恵比寿といえばココというほどに心に刻まれたこのお店は、奇妙なことに初の訪問から30年経っても変わらぬ姿でそこに存在し続けている。恵比寿という街の目まぐるしい変化を思えばそれはもう奇跡に近い。
店頭の10円ゲーム(『新幹線ゲームV』と『フィーバーチャンス』)にはカバーが掛けられ、閉め切った店内には無造作に物が積み上げられているのが見えるが、クレーンゲームの中には当時のぬいぐるみが入ったままになっている。
完全に処分しきっていないとなるとおそらく他にもなにか残されている可能性は高いだろう。もっとも、ここに目を付けない業者がゼロだったとは考えづらいので、やはり所有者と連絡がつかないものと思われる。

あそびばの写真その3です

タイムカプセルというロマンはいつだって、見る人を勝手な想像の世界へと誘う。私はただの街の傍観者であり、この風景がいつまでも残ってほしいなどと無責任に願うだけの余所者だが、もしこの扉が開かれる日が来たならばその中をじっくりと見てみたい。訪れたらキレイに空地になっていた、という哀しみはもうこりごりだ。

恵比寿という街に、かつて『GAME in あそびば20』という“遊び場”があり、いまもまだ『アミューズメントスペース ASO:VIBA!』という名の“遊び場”がある。
たったそれだけのことで、この街がなんだか好きになってしまった。

あそびばの写真その4です

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著者紹介
さらだばーむ

目も当てられないほど下手なくせにずっとゲーム好き。
休日になるとブラブラと放浪する癖があり、その道すがらゲームに出会うと異様に興奮する。
本業は、吹けば飛ぶよな枯れすすき編集者、時々ライター。

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