宮城県仙台市青葉区。
突然、仙台へゲーム旅に出ることになった私と担当O氏。悲喜こもごもの初日スポット巡りを終え、一夜の宿を得るべくゲームがあるラブホテルを訪れるも希望の部屋はタッチの差で押さえられてしまっていた。時刻はすでに午前0時をまわっておりこのままでは震えながらの車中泊も……?
……と、前回はこのような流れでムダに盛り上げたものの。
結局はネットカフェで一泊することとなった。
なんでも「快活CLUB」では「麻雀ファイトガール」や「クイズマジックアカデミー」のPC版がプレイできるのだそうだ。
そうと決まればさっそく調べて向かうだけ。入店後は個室に分かれて自由行動である。
翌朝。
考えれば考えるほど、昨晩泊まれなかったラブホテルのことが気になる。
実際に行った感触として、徒歩で再訪できる場所とは到底思えなかった。クルマを持たぬ身としてはこの機会を逃したらもう二度とあそこには行けないのでは?
イチかバチか、電話をして今現在あの部屋が空いているかどうかを聞いてみることにした。もしも空いているならば御休憩で入ってみてもいい。
(もしもし、あのー……)
(え? トイレが水漏れで使えない? 実はそちらの部屋がどうしても見たくて~はるばる東京から来まして~……)
(はい~そうなんです~……ええ! いいんですか!? ありがとうございます!)
強引かつ情に訴えるトークにより、部屋は使えないけど見学だけならいいですよというありがたい言葉をいただいた。
まだ8時だというのに急いでラブホテルへとクルマを飛ばした。
数時間ぶりの『ホテルルナ 仙台店』だ。
明るい時間に見ても謎に迫力があるな。
カウンターで電話した者であることを告げると、お部屋にどうぞとのこと。エレベーターで3階に上がって305号室の前に立つ。ついにここまでたどり着いた。諦めなくてよかった!
意味もなく少し緊張してドアノブを回すと、すぐに見えたのはお馴染み『太鼓の達人』のあの筐体だ。
連載第38回で泊まった大阪のラブホテル『ラヴィアンソフト 梅田』でも感じたが、業務用ゲーム機がホテルの一室に置かれている姿はやはり異質としか言いようがない。同時にその異空間こそがエンターテイメントだと主張しているようでもある。
電源スイッチが側面に取り付けられてるようなのでオンにしてみる。数瞬ののち起動シークエンスがはじまり問題なく立ち上がった。おお~と謎の感嘆が漏れる。
この部屋では男女が夜な夜な太鼓の乱れ打ちをしているのだろうな。いや男女とは限らない。男同士で熱く戦ったこともきっとあっただろう。そして町中のゲームセンターでは決して成し得ない“全裸の太鼓の達人”という人類の夢もまた……。
コレ、かなり音が響きそうだけど遮音対策はしてるのかな。あとどう見てもドアのサイズより大きいし搬入も苦労してそう……などこの太鼓にまつわるエピソードがいろいろありそうで、インタビューしてみたい欲求に駆られるがそこまでご面倒をかけるわけにもいかない。あらゆる角度からじっくり眺めて満足すると、カウンターでお礼を述べてホテルを後にした。この旅の大きな目的をどうにかやり遂げご満悦。
『ホテルルナ 仙台店』のすぐ近くに「ドライブイン奥仙台」という気になる佇まいのお店がありグッと惹かれたのだが、どうやらすでに閉業してしまった様子。
店頭にはポツンとルーレット機のパネルのようなものが放置されていた。あとで調べてみたところ『Rotary Junior』(関西企業/1975)のパネルのようだ。昔はゲーム機を置いてたのかもしれない。
時刻は9時を回ったばかり。とりあえずファミレスで朝食を摂り、この時間でもしっかり開いているラウンドワンで「麻雀ファイトガール」をやることに。ちなみにこのラウンドワン、昨晩訪れたシブい飲み屋街跡地の真正面にある。
そうしてお昼も過ぎた辺りで次なる目的地へ向かう。
仙台駅の北西にある喫茶店「COFFEE ROAD ULLAS(ウ―ラス)」。
外観は年季の入ったスナックを思わせ、ガラス窓からは中の様子が伺えないため少し躊躇する。思い切って扉を開けてみるとウッディな内装に絨毯敷きの落ちついた雰囲気。お客さんもいて、ちゃんと営業していることが確認できてまずは一安心。
店内を見回せば歴史の深さをそこかしこに感じる。聞けば創業は1974年だという。マスターも結構なご高齢のようで、足を引きずりながら水を運んできてくれた。
メニューはコーヒーと紅茶、それにいくつかの清涼飲料水。フードはトーストにホットドッグ、スパゲティミートソースと至ってシンプルだ。一通りの注文を済ませたところで、トイレに行くと見せかけて奥の方を探ってみることにした。
マスターに了承をとり通路を奥に進むと、少し広まったフロアが現れた。天井の電器は消されているが、来客が増えたらこちらも開放する方式なのだろう。
薄暗いフロアにはテーブル筐体が1、2……3台か。
窓から差し込む陽光で、壁際に並ぶ2台はそれぞれ『テトリス』(セガ/1988)『上海』(サクセス/1988)とわかった。使い込んだ白い筐体と椅子の白色とがマッチしており、いい雰囲気を醸し出している。
残るもう1台は……むう!
これは日本物産の『対家麻濡感 誘惑日記編』(1987)!
“対家麻濡感”と書いて“ハウスマヌカン”と読ませるあの麻雀ゲーム!
それまで拙いグラフィックしか描けなかったアーケード基板も日増しに性能がアップしていき、本作では5名の実写取り込みの女性が登場するに至った。今の目で見ると凄まじく荒いのだけど、そこを想像力で補完できるのがエロのパワーというもの。
ちなみに“ハウスマヌカン”とは、1980年代のDCブランドブーム期にブティックで自社の服を着用しモデルと販売員を兼ねた女性スタッフのこと。和製英語であり、現在では完全なる死語となった。
そして本作最大のポイントは、1P側2P側それぞれに取り付けられたモノクロ液晶付きコントロールパネル。
2人対戦時に自分の手牌を相手に見られることなく闘えるというコンピューター麻雀積年の悲願を実現した画期的な製品だ。
本作は日本物産とアルファ電子という麻雀ゲーム界の二大巨頭がタッグを組んだ作品としても知られるが、この液晶パネルはアルファ電子が開発を担当したと伝えられている。
それにしてもこの1988年が丸ごと真空パックされたような空間はどうだろう。景気のいい時代も閑散とした時期も耐え抜いてじっくりと刻を積み重ね、いまは老境に達した静かな時間だけが流れている。
『ホテルルナ 仙台店』に加え、この光景を目の当たりにしたら、今回の仙台旅行はもう大成功だ。
感動に打ち震えつつ席に戻り、やってきたホットドッグにかぶりつく。食パンにソーセージを挟んだものをホットドッグと呼ぶかどうかなどもはや些細な問題だ。
店名の「ULLAS(ウ―ラス)」とはラテン語で「どれでも」「いかなる」の意味で、多くは「~ではない」という否定形に用いられるのだそう。確かにここは他のいずれとも違う強烈な個性に満ち溢れている。末永く大切に遺してほしい、そんなお店だ。
これで旅は目的を概ね達成し、あとは東京へ戻るのみ。
かなりの強行軍ではあったもののなかなかの撮れ高でホクホクだ。
常磐自動車道で関東に入る頃にはすっかり陽も沈み、シメにラーメンでも食って解散するかということになった。
やってきたのは『にんたまラーメン 千葉ニュータウン店』。
茨城・千葉・埼玉を中心にラーメン店を展開する株式会社ゆにろーず運営の「にんたまラーメン」は、ニンニクが効いたスープと玉子麺の組み合わせが特徴。店舗は国道や県道などのロードサイドに多く、トラックの運転手が休憩するトラックステーションにも出店している。まさにドライバー御用達のお店だ。
これでもかと揚げニンニクがブチ込まれた「悪魔のにんにくゴロゴロにんたまラーメン」に無料調味料コーナー、その名も“にんにくの森”で刻みニンニクを親の仇のごとく投入して、さらに半チャーハンを付ける。まごうことなきニンニクの暴力。
ここから電車で自宅までお腹を壊さずに、かつ沸き立つニンニク臭に白い目で見られずに帰れるかな……と一瞬頭をよぎったが、とりあえず今晩と明日はすべてを捨てるつもりで一気にすすり込んだ。
昔からニンニクはスタミナ食材として認知されているとおり、疲労が回復するのを感じるうまさだ。長距離移動のあとには殊更うまい。
だが、『にんたまラーメン』をセレクトした理由はラーメンを食べるためだけではない。
なんと、店舗内にゲームコーナーを併設しているのである(すべての店舗がそうではないので、詳細は店舗案内をご確認ください)。そして千葉ニュータウン店は屈指の品ぞろえを誇るらしい。クレーンゲームだけのおざなりなゲームコーナーではなく、ビデオゲームもしっかりと備えた本格派で、そうなるといずれは全店を巡ってみたくなる。
しかし、にんたま店舗はいずれも郊外にあるし、地方に行動範囲を広げるにはどうしたってクルマが必要なことも改めて浮き彫りとなった。
都内のめぼしいスポットは概ね巡り終えており、これから更に観測エリアを広げるためには、やはりクルマをなんとかせねば……と寂しい懐事情と長年のペーパードライバーっぷりに頭を悩ませながら、今回の旅を終えた。
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