東北自動車道・仙台宮城インターチェンジのデカいループを周りながら、ようやく到着したことに安堵した。
「今度の週末、宮城に行かない?」
2月初旬に担当者“O氏”からの連絡。
毎度唐突だな、とは思ったがクルマを出してくれるというし、なによりあの辺りにはかねてより気になっていたスポットがいくつかあり、ちょうど抱えてた仕事も一段落するタイミングだったので話に乗ってみることにした。
Googleマップを広げて、徒歩では到底たどり着けなさそうなところまで行けそうだなーなどとアレコレ腹案を練りながら、待ち合わせの秋葉原までやってきた。
BEEP秋葉原店の前でボンヤリとO氏を待つも、一向に来る気配がない。金曜夕方の秋葉原は週末を前に人通りが多く、陽も次第に傾きかけてきていた。店の前でただ立ち尽くしているのもなんだか不審だし、Heyでゲームでもやって時間潰すか。
結局、カプコンの「バース」をプレイ中に連絡が来て、捨てゲーすることに。合流してからもなんやかんやダラダラしてしまい、秋葉原を出たのは17時ちょっと前だった。こっちは15時には秋葉原におったっちゅーねん。
すっかり暗くなった東北自動車道を北上していく。話によるとザックリ4時間ほどで仙台に着くとのこと。
「なぜ仙台なのか?」という当然の疑問に対し、「行ってみたいゲーセンがある」とこともなげに答えた。どうもその場所に行かないと手に入らない“なにか”があるらしい。
なるほど。そういうことならば私も遠慮する必要はなさそうだ。
「観光がしたい」「名物が食べたい」といったフツーの旅行だったならば、これから提案しようとしている場所など受け入れられるハズもなく、青葉城址でも見て牛タン喰って帰ることになっただろう。
よろしい。
コンセンサスもとれたところで、早速一軒目に向かおうじゃないか。
時刻はすでに20時を回っており、閉店時間が気になる頃だがそこに抜かりはない。この時間でも開いてそうなお店をちゃんとチョイスしてある。
一軒目は、洋食を肴に一杯飲めるバーだかスナックだか、そんな感じのお店だ。1952年創業でシブい横丁の中にあるらしい。
1952年と言われてもピンとこないが、すぐそばにある陸上自衛隊仙台駐屯地がアメリカに接収されて“苦竹キャンプ”と呼ばれていた時代から営業しているという。食べログで見つけてその佗びた雰囲気にシビレてしまい、いつかは訪れたいと願っていたお店だ。
おあつらえ向きに、営業は19時半くらいからと書かれている。まともな晩メシも食べていないし、まさに一軒目にふさわしい。
Googleマップ上に刺したお店のピンが近づいてきて、やがて現在位置のマークと重なった。しかしそこにお店は見当たらない。あれ、案内間違ってるのかな。車を降りて周囲を見渡すもそれらしき建物はない。これはまさか……。
と、ちょうどそこを通りかかったサラリーマン風の2人組の会話が耳に飛び込んでくる。「ここには古い飲み屋街があったけどなくなっちゃったんだよ」。正面に回ってみるとそこには“売地”の看板が立っていた。
お店どころか、一帯丸ごと更地になってるー!?
かつてそこにあったお店『エーワン』には、「ジャイラス」が入ったニチブツ筐体に、時代を感じさせる一本足テーブル筐体、さらによーく見ると紙幣投入口のある「ロイヤルマージャン」といった長い歴史を偲ばせるラインナップが存在したようだ。こじんまりとした横丁には飲み屋がひしめき合い、苦竹キャンプや自衛隊の駐屯地からの客が一杯ひっかけに連日賑わったことだろう。だが、いまは草が茫々に生えた空き地となっていた。
とはいえ感傷に浸っているヒマはない。我々は時間に追われる旅の身なのだ。後ろ髪を引かれる思いで二軒目へと向かう。
再びクルマに乗り込むと15分ほどで着いたのは『ゲームコーナー東部』。
いつもの歩きでブラブラするスタイルだと店から店の間が長いためアレヤコレヤ考えることができるのだが、クルマの旅はすべてがスピーディ。展開が早すぎてちょっと心がついていけていない。なんとか気持ちを切り替えていこう。
『ゲームコーナー東部』は1階がパチンコ店、2階から5階までがゲームセンターという郊外型の大型店で、この一軒でエリア一帯は十分に賄えるほどの広さを持つ。長らく東京に住んでいるとクルマでゲーセンに遊びに行くというのもちょっと新鮮だったりする。
O氏はここで「麻雀ファイトガール」コーナーへと消えていったので、残された私はとりあえず順番にフロアを巡回していくことにした。
2階は音楽ゲームとプライズ系。各台の間隔も広くとられており落ちついてプレイできそうだ。
3階は「英傑大戦」「麻雀格闘倶楽部」などオンライン系ゲームが充実。
4階がガンダム、格闘ゲーム、exA-Arcadiaなど、みんな大好きビデオゲームフロアだ。広いフロアのあちこちにレトロゲームが点々と配置されている。ジャンルの幅も広いので遊びたいゲームがないという昨今のゲームセンターにありがちのがっかり感がないのが素晴らしい。
「ウルフファング」と「サイコニクスオスカー」が2in1だったり、「スパイクアウト」がなぜか3人プレイだったり、あまり見かけなくなった「クイズ機動戦士ガンダム 問・戦士」があったりとゲーム在庫の豊富さをうかがわせた。
なによりゆったりした空間作りが心地よく、絨毯フロアや天井の電飾に80,90年代の古き良き大型ゲーセンをいまに残す雰囲気が正直羨ましくすらある。
5階のコインゲームフロアをぐるりと回り、トイレの前にナムコの「ファンキューブ」「ファンキューブ5」が1台ずつポツンと置かれているのを発見してまたグッとくる。うん、いい具合に使い込まれているな……。
いくつかのゲームをプレイしてから3階に戻って、ジャンファイトし終えて満足そうな表情をたたえたO氏と合流。なんならずっとここで遊べるけど、なにせいまだ晩メシも食べていなければ今夜の宿すら決まっていない。時刻はもう22時だし、とりあえずメシを食べようということになった。
すでにほとんどの飲食店は閉店しててもおかしくない時刻。
でも、この時間で営業してて、かつこの旅の目的に適うお店、あるんです。
『ゲームコーナー東部』からクルマで8分ほど。仙台バイパス沿いに見えてきたのは「とんかつ」とデカデカと書かれた目立つネオンだ。
『とんかつと珈琲の店 こんの』。
店内に入るとお客さんの姿はなく、だいぶひっそりしていた。そりゃこの時間にとんかつを食べようという人もなかなかいないのではないか。
とりあえずサクッと注文を済ませ、入口入って左奥の方にツツッと行ってみる。
3台あるテーブル筐体の上には鉢植えの木が載せられ、お客さん用の座席として使用されているかどうかもちょっと怪しいくらい。いずれも麻雀コンパネが付けられており、特に奥の1台は年季を感じさせるタイプ。コンパネには『ロイヤルマージャン』の銘が見られた。
天板を覆い隠すほど大量に載せられた鉢植えが邪魔で画面やインストの確認をすることはできないが、ゲーム機としての役目を終え、こうしてとんかつ屋でテーブルとしての余生を送る筐体になんともいえない味わいが生まれている。
ひとしきり眺め満足してから席に戻ると、注文したジャンボとんかつ(400g)が到着。
堂々とした厚みながら脂身は少なめで、この時間に食べる罪悪感を少しだけ軽減してくれる。それでも400gの破壊力はかなりのものだし、小鉢のマカロニサラダも温奴もたっぷり。
“旅行ではその土地の名物を食べねばならないわけではない”がモットーの私としては、地元の方が普段使いするお店にこそ正解が潜んでいると考える。その意味ではタイミングもよく大正解だし、いい歳のとり方をした素敵なテーブル筐体にも出会えて大満足だ。
だいぶパンパンになったお腹をさすり、本日のラストミッションに挑むことに。
『こんの』から一度仙台市街地へ戻り、そこから30分ほど西に進む。地図で見ると山間を表す緑色と平坦地の白色のちょうど境目の辺りで、地方都市の山裾の雰囲気が色濃くなってきた。途中から小道に入り、暗い中をゆっくり進んでいくと突然視界が拓け、夜中だというのに煌々と明るい照明が出現した。
このあたりではひときわ高い建物の前には、馬に乗った勇壮な男性の像が。
仙台だし伊達政宗? いや違う。どう見ても西洋風の彫刻だ。
ここは『ホテル ルナ 仙台店』。
大阪に本社を持つホテル経営会社ベストディライトグループが運営するエンターテイメントホテルだ。もっと馴染みのある言葉で言ってしまうと“ラブホテル”だが、ベストディライトグループのホテルは部屋ごとに様々なテーマ性を持たせたり、ユニークなエンタメ設備を備えていたりとカップルだけでなくファミリーや友達同士で利用しても楽しめるように企画されている。
そしてそのエンタメ要素の中には、ゲームも含まれるというワケだ。
2人の中年男が、夜中0時すぎにラブホに部屋を求めるという尋常とは思えないシチュエーションに少々及び腰になりながらもカウンターの呼び鈴を鳴らす。奥から顔を出したお姉さんに「あのー……ゲームのある部屋って空いてますか?」と訊いてみた。
すると申し訳なさそうな表情で「あーすみません、いまさっきまで空いてたんですが……」との答えが返ってきた。
ラブホテルは事前予約ができないところが多い。御休憩、延長といったシステムがある以上、いつ部屋が空くかわからないからだ。
ここ『ホテル ルナ 仙台店』は予約は可能なのだが、部屋の指定まではできないため、とにかく行くだけ行って一か八かに賭けるしかなかった。
そして、その賭けに盛大に負けてしまった。
男2人、2月の冷え込みが激しい深夜の仙台で途方に暮れる……。
次回に続きます。
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