【第67回】静岡県焼津市「USA釣具店」~「ティールーム キャノン」

静岡県焼津市栄町。

現在の時刻は午前10時ちょっと前。
焼津ミナミマグロ、桜えび、しらすといった海産物でその名を全国に轟かす港町は、天然温泉が豊富に湧出する温泉地としても知られている。JR焼津駅前には足湯温泉もあり、無料で自由に浸かることができるのだ。
しかし、今日は入浴タオルを忘れてしまった。正確に言えばタオルは持っているのだが、お風呂のためのタオルではなく“振り回す”ためのタオルだ。

焼津駅前です

年末年始に新潟に帰省したばかりなのでしばらく遠征はないなと寂しい財布の中を見つめてボヤいていた。しかし、昨年から推しているミュージシャン“おじさんと小娘”が1月に静岡でライブをやると聞きつけ、お金が無い上に仕事が過密なタイミングではあったものの全力をもってこれを退け、意気揚々と単身静岡へと乗り込んできたのだった。
節約のため新幹線ではなく鈍行乗り継ぎでやってきたため、都合4時間ほどの朝駆け電車旅だ。

ライブ会場は静岡県清水市で、現在地は静岡県焼津市。地理に詳しい方ならお気づきかと思うが、関東からだと目的地を通り過ぎている。
そう、せっかく静岡に訪問するのであれば気になっていたゲームスポットに行かない手はないのだ。ライブの開演時間とそこまでの距離とを考慮に入れて実現可能なエリア内を詳細に検討した結果、選ばれたのがここ焼津だった。

脳内シミュレーションで行けそうなスポットは2箇所。余裕を持って13時にはJR焼津駅を出発したいところなので、実質3時間でこのミッションを完遂せねばならない。バスを利用するので時間が読みづらいのが懸念点でもある。

まず乗車するバスの路線が間違っていないか念入りに確認。これを間違えるといきなり全然違う場所に連れていかれることもありえるためミスは許されない。
駅前から南下する方向で小川漁港に向かうバスに乗車。さほど時間もかからず目的のバス停まで到着し、ここからは少し歩くことに。
県道沿いの商業地はやがて住宅地に姿を変え、小石川に沿って歩いていくとやがて潮の香りが鼻をくすぐりだす。立ち並ぶ建物に海産物加工所特有のサビで赤茶けた雰囲気が漂ってきた頃には広々とした港に船が停泊しているのが見えた。

ここが小川漁港か。

小川漁港です

海面のはるか向こう正面には富士山がキレイにそびえ立っている。空と海の青に挟まれ実に雄大で美しい景色じゃないか。

USA釣具店です

そんなナイスビューな漁港のすぐ脇で、なかなかに目立っているのが『USA釣具店』だ。
“ゆーえすえー”? “うさ”? どっちなんだろ。
釣り客のために早朝からオープンしているが誰もいなさそうな店内にそっと入ってみる。店の手前側は釣具の販売カウンターとなっており、おきあみ、いそめなどの釣りエサが手に入る。海釣り用品も豊富で、釣り竿のレンタルも行っているようだ。
その反対側にはコインランドリーのコーナー。海水を浴びた釣り客からご近所さんまで意外と需要は高いものと思われる。

USA釣具店その2です
USA釣具店その3です

そして店内のけっこうなスペースを占めているのがゲームコーナーだ。
ビデオゲームは麻雀含めて15台ほど。『バーチャファイター5 ファイナルショーダウン』(セガ/2010)のターミナル付きがメインのようだが、リンドバーグユニバーサルキャビネットの一台には『パワースマッシュ3』(セガ/2006)も。こちらは稼働するかどうか不明。

USA釣具店その4です
USA釣具店その5です

奥の隅にひっそりとある『ハイパーストリートファイターⅡ』(カプコン/2004)なども含め大体は100円2プレイなのも嬉しい点といえる。麻雀ゲームに至っては100円5プレイの大盤振舞いだ。
また、店内の壁には『通信対戦麻雀 闘龍門』(アトラティーバジャパン/2005)のポスターが。「サムライスピリッツ零」「アルカナハート」、そして天才プログラマー・森田和郎氏の「森田将棋」シリーズで知られた悠紀エンタープライズの忘れ形見が、かつてはここにもあったのだなと感慨深く眺める。

USA釣具店その6です

あとはパチンコ・パチスロ七号転用機にビデオスロットなどが多数。
お店の方に軽く聞いた感じだと、以前はビデオゲームが優勢だったものの現在はパチ系にとって代わってしまったのだそう。こちらは創業から50年あまりになるそうで、ゲームセンターとしてもその時々のブームとともに駆け抜けてきた。

駅からバスを使わねばならない距離にあることを考えれば、この周辺に住むゲームファンとたまたま訪れる釣り客がメインターゲットということになる。しかしこの立地が幸いしてか激しく時代に流されないちょうどいい具合のビデオゲーセンとして残ったともいえるだろう。
もし焼津に来る機会があれば、このコク深いゲームスポットまで足を伸ばすことをオススメしたい。お店を一歩出れば目前に海と富士山を同時に見られる素晴らしいロケーションは間違いなく唯一無二のものだ。

できればもう少しここでウットリしたいところだがなにぶん時間がない。最寄りのバス乗り場を尋ねたら、すぐそこにあるというので行って時刻表を確認すると1時間ほど待たねばならなかった。次のスポットまで歩く選択もあったのだが、さっきここに来るために歩いた距離感覚を信じるならば、時間に余裕がないいまはやめておいたほうが無難と判断。もう少し歩いたところにある別の路線バスで移動することにした。

バスを下車して時計を見ると11時50分。嘘だろ。もう2時間も溶かしてしまったのか。
急ぎ足で住宅街を進んでいくと、なかなかにひなびた商店街にたどり着いた。
その一角にある目的の喫茶店もすぐに発見。

ティールームキャノンその1です

『ティールーム キャノン』。連載の第55回で東京の「喫茶 キャノン」を巡り倒した回があるが、こちらは昔カメラ店を経営していた名残なのだそうだ。

扉を開けるとカウンターがありそこで先に注文をする。メニューのトップはハンバーガーなのでここはやはりその線で攻めるべきか。他にもトースト、サンドイッチ、パスタ、ピラフ、焼きそばなど軽食のすべてがここにある感じ。
注文を済ませイートインと伝えると、奥で座ってお待ち下さいとのこと。
お店の奥にはいくつかテーブルが置かれており、ちょうどお昼時とあって何組かのお客さんがおしゃべりをしながら食事を楽しんでいた。運よく、というかだいたいどの飲食店でも最後まで空いているのがテーブル筐体席。この日もしっかり空いていたのでそこに着席する。

ティールームキャノンその2です

置かれているのは、アーケード麻雀ゲームの先鞭をつけた「ジャンピューター」(三立技研/1981)のライセンス許諾品『T.Tマージャン』(タイトー/1982)の筐体。天板ガラスと筐体側面にタイトー旧ロゴとシリアンナンバーが入った純正の一台だ。
コントロールパネルもキレイでボタンの押し心地も悪くない。このT.Tマージャン純正筐体はコンパネ部が通常より奥まった位置に配され、その上はガラスでカバーされており、ボタンがよく見える構造になっている。
画面とコンパネを近づけることでより実際の麻雀らしい雰囲気を演出するためなのか。はたまた2人対局が可能となった続編の『T.TマージャンⅡ』を想定し対戦相手の手元を隠すためだったのか。詳細は不明だが、飲食店のテーブル筐体でよく起こる、飲み物をこぼしてダメにしてしまう事故から結果的にコンパネを守ったことになる。
設計段階でそれを想定していたかどうかはわからない。しかし、いまもキレイな姿のまま残されていることはデザイン美と機能美が両立した結果のようにも思えた。

しばらくすると店主さんらしき方が注文したツナバーガーとフライドポテト、ドクターペッパーを運んできた。少しだけ話を聞いてみたところ、こちらのお店は1956年創業で今年でなんと70周年。インベーダーブーム以前からビデオゲームが置かれていたという。複数台あったテーブル筐体も最後まで残ったのはこの一台だけだそうで、遊ぶことはできなくなってもテーブルとして大事に使い続けているとのことだった。
実に素晴らしい。この一台に出会えただけでもここまで来た甲斐があるというものだ。

ティールームキャノンその3です

マグロの町でもある焼津にちなんで食べたツナバーガーは予想通りの味ではあるが、この雰囲気の中でいただくとオツで悪くない。長めのフライドポテトにチリをサッと振り、ドクターペッパーで流し込めば、ハンバーガーがまだ珍しかった時代のジャンクフード感をたっぷり味わわせてくれる。そうだ、せっかくだしチーズバーガーをお土産にしてもらおうかな。

お店を出たのは12時半を回ったところで、これなら焼津駅まで歩いて13時の電車には乗れそうだ。すべてが予定通りキレイに決まった。

見知らぬ町の見知らぬ店で出会う逸品。
これだからゲーム巡りはやめられない。

ティールームキャノンその4です

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著者紹介
さらだばーむ

目も当てられないほど下手なくせにずっとゲーム好き。
休日になるとブラブラと放浪する癖があり、その道すがらゲームに出会うと異様に興奮する。
本業は、吹けば飛ぶよな枯れすすき編集者、時々ライター。

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