【第51回】愛知県名古屋市「ブラジルコーヒー」「キングジョイ」など

愛知県名古屋市南区。

一晩の宿を得たスーパー銭湯「湯~とぴあ宝」を早朝にチェックアウト。
ゴールデンウィークのスパ銭は想像以上の混雑で、柔らかいリクライニングシートの確保に失敗し硬い床で寝ることになってしまった。深夜まで子どもが元気に走り回るので、いつ足を踏んづけられるかヒヤヒヤしたがいつのまにか眠りに落ちたようだった。

本日の予定は、まず筐体喫茶でモーニングを食べ、さらに喫茶店に行き、続いて喫茶店、その後も喫茶店……というスパルタンな名古屋筐体喫茶巡り。
昨日は訪れたお店がことごとく休業日で、想定を遥かに下回る訪問数となってしまっていた。なんのために名古屋まで来たのか。このままでは帰れない! と朝から気を引き締め、鼻息を荒くして住宅街をズンズン歩いていく。

告知の張り紙です

しかし、そんな気合も虚しく一軒目からゴールデンウィーク休業が判明。おおお……このお店が名古屋最大の目的地だったのに! ゴールデンウィークの野郎!
文字通り出鼻を挫かれてしまったが、なんのまだまだお目当てのお店は無数にある。大きめの街の駅前喫茶店のほうが営業している可能性が高いだろうと名鉄名古屋本線に乗り金山駅を目指すことに。JR中央本線、東海道本線、名鉄名古屋本線、地下鉄名鉄線が交差する金山駅なら、いくつか筐体喫茶があることがわかっている。モーニング営業をやっているところも多いようなので期待できそうだ。

まずは駅の北西方面にある喫茶店「サンテラス静」。情報によると2015年にテーブル筐体があったことを確認しているが……今日はやってない。ハイ次。もうあまり動揺もしなくなってきた。それよりスタンプラリー感覚でとにかく行ってみるのが大事だ。
伏見通りを渡り堀川を越え、さらに名古屋高速東海線の高架をくぐってさらに西へ。尾頭橋駅近くの喫茶店「ダービー」にもテーブル筐体があったようだがすでに閉業。そのすぐ近くにあるカフェ「ミルキーハウス」には2024年の写真で1台ある様子だし、モーニング営業もしているから期待できそう。あー……お休みか。仕方ない、次。

ブラジルコーヒーの外観です

再び金山駅まで戻り、今度は北東側に出る。
駅前の角地という絶好の立地にある『ブラジルコーヒー』に着いたところで開店の8時ちょうど。ドアが開いており営業する様子だ。店内の奥にはちょっとしたステージと楽器類などが置かれ、どうやらライブも行えるお店だとわかる。ステージと反対側の隅っこにテーブル筐体を発見し、そこに腰を下ろす。
モーニングを注文してから水を一気に飲み干し安堵の息を漏らした。やれやれ。朝6時くらいから動き出しててようやくの一軒目だ。すでに相当歩いて疲れ始めているのがわかる。この調子で歩き続けたら早い時間でグロッキーになりそうな予感がする。

天板に掲げられたインストラクションカードは『ぷよぷよ』(セガ/1992)。おお、この街に来て麻雀ゲームじゃないタイトルはお初だな。コントロールパネルはどうかな、と覗き込むとそこにはなにもなく、大きな口が開いたままになっていた。どう見てもプレイできる状態にはなさそうだ。

モーニングの写真その①です

しばらくして注文の小倉トーストが到着。バターを塗ったトーストに粒あんをたっぷりとのせガブリと頬張る。塩味と甘味が一度交錯してから、ぐっと立ち上がる旨味に口内が席巻されていく。コレコレ! 名古屋のモーニングはやっぱりいいね。
もぐもぐしながらコンパネ口をよーく観察するとケーブルが外に飛び出していた。そのケーブルを目で追いかけると筐体の下に転がる物体に繋がっていた。パンくずをおしぼりで払ってから、手を突っ込んでひょいと持ち上げてみる。それは取り外されたコンパネ本体だった。ボタン形状やデザインが90年代を感じさせる懐かしいタイプ。なんだか見てはいけないものを見つけてしまったような気がして、周囲を見回してからそっと元の位置に戻した。

ゲーム機のコンパネです

20分ほどで退店し次のお店を目指す。三区画ほどの距離なのですぐに到着。『コーヒーハウス てぃむてぃむ』は外観とマスコットらしき鳥のキャラクターが80年代ポップを感じさせる。やはり今も生き残っているこの街の喫茶店は40年ほど続いているところが多い印象だ。
入って左手にテーブル筐体が見えたが、その隣の席に男性の一人客が座っていた。他のテーブル席はすべて空いているので、そのお客さんと近い距離に座ることをちょっとためらってしまう。やむなく奥の普通席に陣取り、本日2回目のモーニングを注文。

気温はどんどん急上昇し、おそらく20度を超えている。雨が降るよりはマシだが、あまり暑くなりすぎるのも困りものだ。ここからは矢場町、栄町と北の方に向かってかなりの距離を進んでいくことになる。無駄に体力を消耗するのは避けたいところだ。

モーニングの写真その②です

モーニングのサンドイッチはオーソドックスで毎朝でも食べたいタイプ。ただ、食いしん坊ではあるが大食いではない私としては、2軒目にして早くも軽いため息が漏れてくる。とても美味しいのにもったいないことをしている気分になってきていた。

会計時にちらっとテーブル筐体を見たところ、天板ガラスに大きくヒビが入り透明のテープで保護してあった。だいぶ長年愛用されてきた麻雀ゲームのようだ。これからもしっかりご奉公するんだぞ、と心の中でそっと声をかけてお店を出る。すっかり高くなった日差しがビシビシと突き刺さる。

テーブル筐体の写真その①です

しばらく歩いて到着した地下鉄名鉄線の東別院駅近くの『カフェ ダンディライオン』はしっかり営業中。壁にはマンガがずらりと並び、その上に置かれたテレビでは「名探偵コナン」が流れている。若い客層を取り込む作戦だろうか。そのわりに店内には常連のパイセン方しか見当たらない。時間帯で客層が入れ替わるのかもしれない。

狭めの店内にテーブル筐体は3台。大きな楕円テーブルを除き、4席のウチの3席がテーブル筐体で占めるという気合の入りようだ。
座ったのは窓際の『麻雀 天神牌』(ダイナックス/1995)。あれ、さっきの『てぃむてぃむ』も確か同じゲームだったな。やはり名古屋は地元企業のダイナックス勢が優勢のようだ。そもそも喫茶店の麻雀ゲームでニチブツとかセタとかあまり見かけない印象がある。このあたりも丹念に調べていくとなにか面白い結果が出そう気がしている。

テーブル筐体の写真その②です

3軒目はモーニングを断念して黒ゴマラテをズズズとすすり、サービスのカップケーキを平らげて15分ほどでお会計。もはや作業のようになってきた。続いて5分ほどの距離にある「COFFEE ガテマラ」に行ってみたが休業日のようで、ホッとしている自分にちょっと嫌気が差す。
さらに北上し、JR鶴舞駅近くにある名古屋なのに店名が「新潟」という喫茶店、その近くの鉄板ナポリタンが有名な「喫茶ダイゴ」と立て続けに空振り。もはや自分でも何をしに来ているのかよくわからなくなっていた。

時刻は11時過ぎ。肉体的にも精神的にも淀んできている状況をリセットしようとやってきたのは、栄町にある百貨店『松坂屋 名古屋店』。江戸時代の呉服店を起源とする松坂屋は名古屋が発祥の地だ。織田信長の小姓であった伊藤蘭丸祐広の息子が興したというからその長い歴史が偲ばれる。
エレベーターの扉が開くと、屋上の頭上に広がる青くて気持ちのいい空が出迎えてくれる。ここは全国的にも珍しくなった屋上遊園地が健在なのだ。キッズライドとクレーンゲームが中心で、大人が存分に楽しめるというワケではないものの、この雰囲気を味わうだけでも十分来る価値がある。ファミリーアミューズメントの原点を遺す老舗百貨店の心意気に感心。

松坂屋の屋上です

栄には見ておかねばならない場所がある。
松坂屋から歩いて5分ほど。オリエンタルビル屋上(8F)にある日本最古の屋上観覧車だ。
現在、名古屋栄三越の入るオリエンタルビルに出店したオリエンタル中村百貨店は、1954年に3階建ビルの屋上に観覧車を設置。1956年にビルが7階建に増築されると、屋上に新たな観覧車を備えた。この2代目の屋上観覧車がいまでもこのビルの屋上に現存している。
2005年まで営業を続けた屋上遊園地が閉園したのち、稼働営業させない静態保存として登録有形文化財の指定に至っている。観覧車としては小さいものだが、近くで見ると鉄骨の迫力が感じられるだろう。
ちなみにすぐ近くにあるサンシャインサカエというショッピングビルにはランドマークとなっている観覧車が現在も稼働中で、うまく場所を探せばこの新旧観覧車のツーショットが撮れるという楽しみ方も。

観覧車です

もうひとつ、栄に来たゲーム好き男性なら『キングジョイ』というゲームセンターに寄ってみるのもいい。クレーンゲームだけでなくビデオゲームも豊富な大型店なのだが、ここの3階男子トイレには『トイレッツ』(セガ)が現存している。稼働はしていなかったが、こちらは静態保存というわけでもなさそうなので運がよければプレイできるかもしれない。

セガトイレッツの写真です

気分転換を挟んだことで喫茶店疲れも少し回復したので次の喫茶店に向かう。
地下鉄東山線の伏見駅を通り越し、ビジネスビルの立ち並ぶ堀川沿いにあるのが『キティ珈琲店』だ。
この時点で3万歩近くを歩き、ふらつきながら座り込んだ席が『麻雀 雷神牌』(ダイナックス/1996)だった。ここもダイナックス……ほとんど支配されているに等しい占有率。名古屋だったらダイナックスのツインモニタ仕様の変態麻雀ゲーム『雀遊記』(1988)がどこかに生き残ってるんじゃなかろうか……などとくたびれた麻雀コンパネを愛で、生クリームのたっぷり乗ったオリジナルプリンを堪能する。疲れた身体に甘味が染み込んでいき、ふと気づけば少しの時間うたた寝をしていたようだ。

正直なところ、ここまでチェックしてあった名古屋の筐体喫茶の5%ほども巡れていない。やはり1日や2日で予定通り回れるほど甘くはないようだ。
しかしながら、名古屋もまた喫茶店の閉店が相次いでいる現状を思うと、そんなにのんびりもしていられない。また近いうちに体勢を整えて挑みたいと思っている。
ただひとつ言えるのは、「ゴールデンウィークだけはもうコリゴリ」だ。

テーブル筐体の写真その③です

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著者紹介
さらだばーむ

目も当てられないほど下手なくせにずっとゲーム好き。
休日になるとブラブラと放浪する癖があり、その道すがらゲームに出会うと異様に興奮する。
本業は、吹けば飛ぶよな枯れすすき編集者、時々ライター。

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