用途別、オススメのPC-8801シリーズ

今からPC-8801の実機を手に入れてゲームを遊ぶと決意しても、立ちはだかるのが「どの機種を買ったら良いのか」という問題ではないでしょうか。8年間に渡り色々な機種が出ていますので今回は人気のある機種を中心にメリットとデメリットをご説明致します。

■PC-8801mkIISR

PC-8801シリーズを8bitマイコン戦争の勝者へと導き、恐らく一番売れたであろうPC-8801mkIISRは基本的に旧作新作どちらも問題なく動作致します。勿論CMT端子(カセットテープ)もありますのでPC-8001時代のゲームまで遊べます。ですのでちょっとした高望み(※1)をしなければPC-8801mkIISRで全て事足りると思います。

コストダウン機のPC-8801mkIIFRは色々と省かれている上、何故かボーステックの「ザ・スキーム」が動作しないのであまりオススメは出来ません。(ラベルに書いていないだけかと思い実際に入れた所本当に起動せず焦った覚えがあります。)

PC-8801mkIIMRは2HDドライブを積んでいる事で微妙に互換性が保てていない(一部読み込めないタイトルがあります)事とCMT端子が削除されています。またMR/MH/MA/MA2/MCといったMシリーズはドライブの音がうるさく夜中に遊ぶとバッチンバッチンと不穏な音を立てますので、ご家族や近隣の事が気になる方はSRやFH/FA/FE等のFシリーズを買いましょう。

(※1)ちょっとした高望み
その後出たFH以降に搭載されたクロック切り替えとサウンドボードIIの事です。クロック切り替えは後期のアクションゲームですとかなり効果を発揮し、「ファイアーホーク」のOPを見ると従来の4MHzと8MHzの違いが解りやすいです。サウンドボードIIはPC-8801mkIISR/TR/FR/MR用がありますが非常に珍しく、ボード単体で内蔵されているPC-8801FA/MA等が一式が買えてしまう値段で取引されています。ちなみにサウンドボード初代はPC-8801/mkIIにFM音源を増設させる物で、これがあればPC-8801 /mkIIでもFM音源が流れます。

サウンドボード初代 PC-8801-11


■PC-8801FH

PC-8801mkIISR/TR/FR/MRの後に出たFHは、本ページでも何度か触れているクロック切り替え機能が搭載されているのが大きな違いです、他にはデザインがスマートになりスピーカーとボリュームが全面に配置、更にヘッドフォン端子も取れるとよりホビー色が高まっています。それだけですとMHでも事足りるのですがMHはCMT端子が削除されているので88のゲームを広く遊びたいという方はFHがオススメです。サウンドボードIIは形が違いますが別途増設する必要がありますが、今まで買取させて頂いた限りではSR用サウンドボードIIの4倍位は入荷した事があるのでまだ何とか入手出来る範囲だと思います。

またFHだけはブラックモデルが発売されています。PC-88/98といえばアイボリーや白というイメージをいうイメージがありますが、実際に置いてみると変色や汚れが見えづらいという事もありかなり良いものではないかと思います。その珍しさや配色からマニアの間で人気が高いのでその分8801シリーズの中ではかなり高額で取引されている機種になります。理想としてはPC-8801FH(好みが合えばブラックモデル)に別売りのサウンドボードIIを内蔵させた物が一番幅広くゲームが遊べるPC-8801シリーズでしょう。

 

■PC-8801FA/MA

FHとの違いはCMT端子の削除とサウンドボードII相応のYM2608(OPNA)の標準搭載です。カセットテープのゲームを遊ぶか、サウンドボードIIの音を堪能するかのどちらに重点を置くかで買うべきマシンが決まると思います。また MAはMH(FHに比べるとROMとRAMが拡張)にサウンドボードIIを足した仕様になります。私はFD読み込み音が静かでサウンドボードIIが楽しみたいと思ったので今は88FAを手元においてます。

MA2は辞書のROM容量が増えましたがコスト削減の余波でクロックやV1/V2切り替えスイッチが削除され、PCキーを押しっぱなしにして立ち上げる仕様になったので不便さを感じます。

 

■PC-8801FE/FE2

FEはサウンドボードIIや拡張スロット、内蔵BASICが削除(SBIIは別途搭載可能)された代わりにビデオ出力が標準でサポートされています。ただ元の映像がRGBですので画質的には厳しい物があります。どうしてもブラウン管モニタは嫌でコンパクトに収めたいという事ならば、今となっては24KHz出力をサポートしている液晶やXRGBシリーズがありますのでそちらを使うのも手ではないでしょうか。FE2はメモリウェイトが無くなり、切り替えのスイッチが削除されました。MA2と同じく切り替えに手間を感じなければFE2でも良いと思います。

■PC-8801MC

MCの大きな特徴は標準が縦置きな事とCD-ROMドライブがある事です。CD-ROM専用ゲームは数本しか出ていませんがどうしても遊びたい場合はMCを買いましょう。ただ他はMCらしさというメリットもあまりはCD-ROMドライブはPCエンジンの物が流用できますがギアが壊れやすく今買うなら修理品を買うのがベストでしょう。

最後になりますが当時PC-8801mkIIからその後PC-8801MCへと乗り換えた弊社スタッフの思い出をご紹介します。

PC88の思い出 
都産貿AM7または野球帽と知恵熱とちょっとカゲキなパソコンプレイングMagazine。

1984年春、グリコ森永事件で大騒ぎの頃、市内保育園さくら組の私は既に末期のゲーム病にかかっていた。
この病は禁断症状が激しく、伝染し不治の病だった。

埼玉県H市は人口5万人。
村に初めてのコンビニが出来、「24時間営業とは?!」と大人が噂し店はロシアの寒村配給所かの様な混雑を見せた。駅前ではスーパー内ににマクドナルドが出来るという事で、村は大騒ぎになっていた。そのTストアでは階段下に任天堂製のアップライト筐体が並び、小さなゲームコーナーを形成していた。私は、自宅付近という事もあり、Tストアに買い物に行くとなればゲームが出来ると意気込み、進んでお供をした。子供ながらにお金を入れて遊ぶこのアーケードゲームという物はファミコンには無い代えがたい良さがあると感じ大変な中毒性を生んだ。

そんな中、設計士であった親戚の家にはどうやらスペースシャトルに匹敵する神秘と万能科学の結晶かの様なパソコンがあると言うのだ。ある冬の日、そのパソコンを拝むタイミングが巡ってきた。

初めてのパソコンはPC8801mkIIであった。
今思えばSRの登場と共にローンで買っていればNECにダンプカーで突っ込みたくなるかの様な不遇のマシンであったが、先進のFDD2基内蔵可能であり、モニターと本体の組み合わせが素晴らしく一体感のあるデザインで、SRとは、FM音源とは?等全く無関心な子供には、この恐ろしく未来的でかつ、スパイ映画が死闘を繰り広げ盗み出すフロッピーディスクを使うこのマシンに一体どんなゲームが出来るのか?!と思わせるには充分だった。

期待の大嵐の中、親戚が用意したのはFDDがあるのに何故かカセットテープのソフトであった。急にF1マシンがビッグワンプラモになったかの様な庶民感が子供ながらに感じ、ローディング時間はファミコンにも劣るのでは無いかと心配をした。ロードが終わると、目に追えるスピードで女の裸が描かれた。それは何とペンキ屋ユウちゃんだったのである。その親戚も恐らくは子供だから何もわからないだろう…と。思ったに違いが無い。抜群の操作性であるファミコンのコントローラーで慣れていた私にはテンキーで操作するユウちゃんは全裸で登山をするかの様な辛さであった。また、それにはBGMが無く、子供ながらに画面を塗り替えるごとに一瞬裸が出るのが大変に気まずかった。

しかしである、そんな親戚も次に取り出したソフトがその後の一生を左右する一本になろうなどと当時思っただろうか。それはファルコムのザナドゥである。直前にユウちゃんを見たあとだからか、その繊細なドット使い、キャラクターメイキングの英文、これぞキングオブコンピュータゲームなのではと、その2本しか知らない私は早くもその素晴らしい世界観の虜になり、その後親戚に今日は来ないでくれと言われるまで通いつめザナドゥにハマり続けた。

時代は進み、私は朝7時、都産貿の前(東京都立産業貿易センター)に居た。ちょっとカゲキなパソコンプレイングMagazine 「テクノポリス」の同人コーナーの影響である。その時私の所有のマシンは親の購入したPC9801VM2に、メモリ増設だけをしたものであり、事実上のスタンダードマシンではあったが、16色化の増設ボードと、FM音源Cバスカードを買わなければ満足にゲームは出来ない中学生の自分には、親の肩たたきと皿洗いを4万日程繰り返さなければとても買えない品であった。しかし、テクノポリスの記事を読むと同人ソフトという物はどうやら100円~1000円で買えるというのである。当時、信長の野望を買うには12ヶ月の貯金が必要だった年収の私には願ってもいない情報だった。「よし、ここでソフトを2本ばかし大購入して、親戚の家の88で遊ぶしか無い!!」そう勝手に決めた私は秋のパソケット祭りの会場に一番乗りをした。しかし当時のパソケットは特に始発で来る人間もおらず、会館の事務員すら誰も居ない中、ドラゴンズの野球帽を冠った自分はさながら家出少年の様であった。もうすぐ冬になる時期であり、都産貿前は冷えた。それでも、初のイベントを前に沸騰するかの様な知恵熱で耐え、やがてサークルの入場がはじまり怪しい中学生は散々声を掛けられ「え?君、買いに来たの?始発で? ギャハ!見込みあるよお前www」と、何故かHB-F1XDをもらったり、喫茶店に誘われ奢ってもらったりなんぞして、あり得ない程の充実感を感じた。

そして、開場。
予算は3000円であったが、目を引いた「妖しげソフト」ブースでソフト一本が100円~200円のディスクとカラサワ君バッジを売っていた。これ下さいと何故か言えずじっと見つめていたら話しかけられバッジを買う羽目になった。そして、妖しげソフトのオムニバスと、決死の思いでエロゲーを2本買い、猛ダッシュで帰宅をし、親戚のパソコンにエロゲーを突っ込むが無反応。この時の落胆といえば、文字で表現が不可能な程だった。涙ぐましい裏工作で食事に出てもらい親戚のPCを借りたというのに立ち上がらない。断腸の思いで戻った伯父さんに聞くと、これはSRじゃないとダメなんだよと、脳死状態。この時から異常なまでにパソコンのスペックに対し慎重になる事に。しかし、妖しげソフトは初代88からでも動作する物があり、その後妖しげソフトに対し並々ならぬ熱意を覚えるようになる。

3年後、バイトを始め秋葉原でジャンク屋めぐりが趣味という、どうしようも無い仕上がりを見せた私は石丸電気パソコン館に居た。パソ通での情報を確かめに来たのだ。そう、PC8801MCmodel2が新品で投げ売りされていると言うのだ。ついに、あの日の雪辱を果たす気が来た!これぞ俺得。パソケットでのSR以降用ソフトが思う存分買える!!中古パソコンコーナーでファルコムのゲームが買える!!3年ぶりに都産貿での知恵熱が滾り、確か2万円を切る価格でMCを購入。店員氏のやめたほうがいいって!と言う制止も振り切り手持ちで電車にて持ち帰り、神々しいタワー型の8801MCをセットアップしたのだ。幸いにして98用モニターもあり、繋ぎ変えるだけで使用する事が出来た。この時遊んだソフトが同人ソフトの「せみだぶる」と中古ショップで買っておいたザ・スキームだった。それは時代はPC98全盛期へと移り変わった当時でも、怪しいパソコン道に傾倒させるには充分な衝撃であった。その後、パソコン通信の知り合いには「逆行してパソコンを集めてる変な人」と言われ、当時は捨てるだけであった旧世代のパソコンを譲り受け続ける事になる。

今思えば、世の中にはFM7/77シリーズやX1、MZ等魅力、そして永遠の愛機MSX等魅力あるマシンは無数にあったのだ。しかし、たまたま生まれた家系で、その親戚が持っていたPC-8801mkIIという不遇なマシンがキッカケでで私は特に同人文化という物に傾倒していく充分な動機を得る事になった。その時、たまたま合ったのがFP-1100や、FM-11だったらどうなっていただろうかと思う事もあったが、別のどこかで若さならではのエネルギーで88に出会ったかのように思う。今でも88の奏でるFM音源と、8色の画面はそれは夢があり、美しい画面である事に代わりは無い。そして今夜も知恵熱を発し続けているのだ。おしまい!

 

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