BEEP的”レガシーハード”と付き合う

ヤフオクで人気の検索キーワード”ジャンク”。ジャンクとは故障品やゴミ等の意味で大まかに言えばとにかく”何か不具合を有する”という意味だ。大体の場合において、特に問題が無い物でも購入後の不具合に対し文句を封殺または牽制し、売り手側から見れば売り抜けやすくする呪文だ。

買い手から見ればどうだろうか?それは即ち「不具合に対する経験値や知識により該当不具合が回避可能な利害関係にあれば通常相場で購入するより断然お得」と概ねこんな感じの心境だ。つまり、冒険感、お宝感があるとでも言えば良いだろう。ここで言う冒険感とは売り手の示したデメリットに対する買い手の回避性能の結果への道筋を示し、お宝感とはそれが相場より安く購入出来、結果その品物に対する期待値を確保出来た際の比例値の事を示す。

我々「BEEP」を取り巻く品物を基本に置き換えると1980年〜90年代のハードウェアや印刷物が中心である。特に今回はその殆どが30年の時を経た”レガシーハード”とその現状について記したい。

オークションで度々目にする「ジャンク品」また「ノークレーム、ノンリターン」等の文字、これは何も売り手都合だけで言っている訳では無い。もはや30年近く立った電子機器の寿命の問題だ。例えば現在でも人気のPC8801mkIISRシリーズ(1985年発売)、X68000シリーズ(1987年初代)MSX2+シリーズ(規格発表1988年)となっており当然ながらメーカー保証もなく、その殆どが何かしらの故障を抱えている個体ばかり目にする。これは現時点で最も国産レトロPCハードを販売していると自負するBEEPが体感している現実だ。

写真左は現在でも根強い人気のHB-F1XDJで、SONY製MSX2+、写真右はNECのPC8801MA。いずれも電解コンデンサ交換を施している状態の図だ。電源周りは言わずとも大事な部分というだけではなく、劣化から破裂、発火等の危険性もある。湿度や温度、使用時間等にもよるが大幅に耐用年数は過ぎているものだ。

仮に、入荷時、又は販売時の動作では問題が無くとも購入後すぐに何かしらの故障が発生し、その本来の期待を見込んだ動作(その殆どがゲームだ)は得られなくなってしまう。これは駆動部分を有するドライブであればギアは欠け、ゴムは劣化して砕け、電解コンデンサは破裂や液漏れを起こし、モノに因っては発煙する。キーボードのパターンは酸化や劣化しその機能の一部は満足に使えないだろう。有名な事例で言えばX68000シリーズで使用している電源内部のコンデンサの液漏れによる電源不良やパターン切れ。MSXのフロッピーディスクドライブ内部のゴムベルトの劣化によるドライブ不良、PCエンジン系で採用されている光学ドライブのギア欠け不良、初期のノートパソコン液晶部のビネガーシンドロームによる致命的ダメージ。電池を有する基板への電解液漏れ…・

写真は今も昔も熱狂的ファンの多い電脳パンツ事「HP200LX」液晶部分の”ビネガーシンドローム”や偏光板の劣化による併発故障。これは昨年から取り組んだ「液晶交換」ではなく、液晶そのものの修理だ。難易度は多少高いが新品の様に蘇る。表面の劣化層の薬剤除去と張り替えを行ったもの。担当の頓田林も当時、新宿紀伊国屋の”アドホック教会”にて新品で購入。40MのTYPEIIフラッシュストレージカードが8万円だった記憶がある。しかし、どこでも”Rogue”が瞬時に遊べ、MS-DOSマシンであり電池持ちが良いという欲求を素晴らしく満たしたこのマシンに取り憑かれた。

そう、これらは我々の大好きな若しくは、大好きだった青春を共に過ごしたハード達全てに普通に起こり得ている事であり、その殆どがまともな動作を担保するにはそのメンテナンスや修理を避けて通れないものとなっている。

このような状況下で我々は所詮、営利法人の立場の範囲ではあるが、出来る範囲でオーバーホールやメンテナンス、修理を行い販売をしている。それには技術者と費用と時間がかかる。そして、この現状に際し我々BEEPの販売品は率直言えば今後メンテナンス品以外は概ね”ジャンク品”扱いとしたい。中には問題無く動くものもあるだろう、また我々の勘違い、至らなさから正常か故障かの判断を誤る物もある。しかし、メンテナンスしたものについては以下の様に考えたい。

・購入品の使用目的を満たす・・ここではゲームや言語が楽しめる事を指す。
・そしてそれが永く付き合えるような対応を目指す。

以上の事からメンテナンス品、またはジャンク品では無い物は有償では勿論あるのだが修理対応を可能な限り行う予定だ。そしてこれまでも出来る範囲でそうさせて頂いてきた。それこそ巷に溢れる「出品時ゲームが動きました、但し古いものなのでNC/NRでお願い致します」といった出処から購入し、結局は短期間で故障を起こし、買い直し高く付く。最初からメンテナンス済み品、故障時対応可能な弊社で購入した方が安く済む。この可能性を減らしたい。
そしてその事がレガシーハードを今まさにこれから購入するうえで重要だと考え、それこそ「好きな人に売る」うえで大事だと考える。

また近い将来、我々はレガシーハードのメンテナンス引受の窓口を設けたいと計画している。現状は弊社での販売品のみの対応だが、その場合は他社での購入品も受け付ける予定だ。その他に「自力で修繕が可能、もしくは挑みたい」という技術者向けへの資料、パーツの提供もある程度行いたいと考えている。

私達は何度でも再生出来る、心の奥のVTR。(ちゃんちゃん!)

頓田林@BEEP

 ※この記事は一定の修理についての問い合わせ量を元に見解を示したものである。ジャンクを買うという行為自体、それは殆ど趣味性のものも多く、修理に挑戦してみるという素晴らしい精神の持ち主、また一定の技術を持つ”技術者”の方々には物足りない記事となっていると思う。また我々も修理技術に関して発展途上部分も多く、本当に年々故障品が増えていくのを目の当たりにし、必要に迫られて修理に挑み、人物を探し、体制を整えサービスを提供している所存である。

 

あとがき:いやーしかし、この仕事をはじめた頃は本当に何も壊れてなかったものばかりだった。ジャンクというのは動作チェックを省きたい魔法の呪文ってレベルだった。(そこまで言う?)倍々比例で故障が増えたのは本当にここ3年の話だと思う。そして、現存する”まだ救い出せる”レベルのハードもどんどん減ってきている。

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