目次
【あらかじめの断り書き】
この記事は、実在のレトロゲームショップ「BEEP」を舞台にしていますが、内容は80%のフィクションと120%のレトロゲーム愛で構成されています。
一部、筐体を「ジャンク」や「墓場」と呼ぶ表現がありますが、これは過酷な修理現場を表現するための「愛の裏返し」であり、当時の開発者様や文化を卑下する意図は一切ございません。
一部、筐体を「ジャンク」や「墓場」と呼ぶ表現がありますが、これは過酷な修理現場を表現するための「愛の裏返し」であり、当時の開発者様や文化を卑下する意図は一切ございません。
また、本企画は「新人スタッフの修行」を兼ねたドキュメンタリーであるため、作中の修理には「初心者のやっつけ作業」や「ゴリ押し」が多分に含まれます。
BEEPで実際に販売されている商品クオリティとは天と地ほどの差がある粗末な内容(当社比)ですので、あくまで失敗を愛でるエンターテインメントとしてお楽しみください。
前回のあらすじ
社長の無茶ぶりで始まった筐体野郎Aチームの「麻雀筐体修理指令」。
BEEPの新人・「ワープ加藤」は、ベテラン・「ボイラー松井」に導かれBEEPの「古代遺跡(ジャンクヤード)」へと向かった。
古びた「ノンブランド麻雀筐体」と出会った加藤は、替えのコンパネを求めて危険地帯へと向かう……。
BEEPの新人・「ワープ加藤」は、ベテラン・「ボイラー松井」に導かれBEEPの「古代遺跡(ジャンクヤード)」へと向かった。
古びた「ノンブランド麻雀筐体」と出会った加藤は、替えのコンパネを求めて危険地帯へと向かう……。
Mission#2:筐体を探せ!
「THE PIT」―羽生に潜む死のステージ

ボイラー松井
いいか加藤、ここからは足元に気をつけろ。一歩間違えれば、お前の人生のクレジットはここで終了だ
ボイラー松井が指差したのは、パーツ類やゲーセン椅子が所狭しと積み上げられた、倉庫の「高架エリア」だ。
薄暗い屋根裏のようなこの場所は、足場が細く、一歩足を踏み外せばステージフェイタリティが待っている。
薄暗い屋根裏のようなこの場所は、足場が細く、一歩足を踏み外せばステージフェイタリティが待っている。

ワープ加藤
……ここ、モータルコンバットの『THE PIT』(※)ステージじゃないですか。下にトゲの生えた柱が立ってても驚きませんよ
※THE PIT(ザ・ピット):MKシリーズを代表する橋のステージ。落ちたら最後、トゲやのこぎりによって残酷な末路を辿ることになる。
だが、松井の足取りは軽い。

ボイラー松井
聞こえるか、加藤。助けを求める筐体たちの声が……。あそこの棚の裏で、コンパネ(コントロールパネル)が『俺を磨いてくれ』と泣いているぜ

ワープ加藤
……僕には、カラスの声と、僕の膝が笑う音しか聞こえません
MKのイニシャル、そして「昭和の窓」

ボイラー松井
おっ、これを見ろ! 『MK』の刻印だ! ついに見つけたぞ、俺たちの魂(モータルコンバット)を!
松井が埃の中から引きずり出したのは、比較的綺麗な6ボタンのコンパネだった。興奮する松井に、加藤が冷ややかにツッコミを入れる。

ワープ加藤
松井さん、落ち着いてください。それ、『三木商事(三木)』のレバーですよ。モーコンじゃなくて、三木さんのMKです。あと、ちょっと見た目が新しすぎますよ

ボイラー松井
……チッ、ジャグルコンボ(※)失敗か。だが、こいつはどうだ!?
※ジャグルコンボ:格闘ゲームにおいて、相手を攻撃で空中に浮かせ、そのまま地面に落ちるまでの間にさらに追撃を叩き込むこと。MKシリーズでは重要なテク。
次に松井が発掘したのは、セイミツ工業製のコンパネ。一見普通だが、松井の目が爛々と輝く。

ボイラー松井
見てみろ加藤! この天板の開閉機構、ネジじゃなくて『昭和の家の窓についてる金具(クレセント錠)』で止まってやがる! メンテ性が神がかってるぞ!

ワープ加藤
……それ、客席からは全く見えないですよね? メンテするときに『おっ、窓の鍵だ』ってニヤリとするだけですよね?

ボイラー松井
その『ニヤリ』が筐体野郎のガソリンなんだよ!
80年代の息吹―サンワの至宝
一進一退の攻防(というか捜索)が続く中、ついに二人は「その時」を迎える。 重なり合ったゲーセン椅子の山をどかした先に見つけたのは、サンワ製の6ボタンパネルだった。

ボイラー松井
……これだ。この絶妙に色褪せた表面プリントの質感、そして80年代特有のサイケデリックな配色。間違いない、こいつは本物だ!

ワープ加藤
おお……! 確かにこれは、今のゲームセンターにはない『熱量』を感じますね!
二人は羽生の倉庫の片隅で、まるで聖遺物を発見した考古学者のように手を取り合った。
しかし、加藤がふと現実に立ち返り、コンパネに触れた手を顔に近づける。
しかし、加藤がふと現実に立ち返り、コンパネに触れた手を顔に近づける。

ワープ加藤
……でもこれ、めちゃくちゃ汚くないですか? 白いペンキみたいなものと、数十年分のプレイヤーの執念がこびりついてますよ。正直、触りたくない……
その瞬間、松井のアッパーカットが(比喩的に)加藤を襲った。

ボイラー松井
馬鹿野郎! 地面に大の字でめり込みたくなきゃ(※)、今すぐそのヘタレた根性を直せ!
※地面にめり込む:MK2における、「THE PIT」ステージのフェイタリティのこと
ボイラー松井の『ワンポイントレッスン』:Case.02
テーマ:汚れの下に眠る「魂と美学」
「いいか加藤、レストアはハンダごてを握る前から始まってるんだ。
≪松井の鉄則≫
- 『汚い』を『伸び代』と呼べ:サビや埃の下にあるのは、当時の塗装だ。これを磨き上げた時のビフォーアフター、それこそが筐体野郎の報酬なんだよ。
- ボタン配置は命より重い:ボタンの配置やレバーの位置、配線するときの取り回しは考えて選べよ。シビアな接続で操作性がご機嫌ナナメになっちまわないようにな。
どんなに薄汚れたジャンクでも、俺たちの手で80年代の息吹を蘇らせる。それができないなら、今すぐ羽生から秋葉原まで歩いて帰れ!」
BEEPインスタグラム速報動画
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