デジタル音源のダウンロード販売やストリーミングサービスでさまざまな音楽を楽しめる現在では、CDはすっかり過去のメディアとなってしまいました。一方で、CDの登場ですっかり衰退していたレコード盤は、2017年にはソニーがレコード生産を再開、2020年にはアメリカでのレコードの売上がCDの売上を超えるなど、静かながらも活気を得ています。
レコードと並ぶアナログなメディアといえば、もうひとつ、カセットテープがあります。こちらも手頃なサイズ感や取り扱いのしやすさから根強い需要があり、2019年には国内メーカーが録音用の新製品を発売したほど。在宅時の音楽鑑賞のほかにもカーオーディオなどで今でも、そしてこれからも活躍できる存在です。
今回、埼玉県朝霞市よりお譲りいただいたゲームコレクションの中にはカセットテープのサントラ群がありました。
まだデジタル音源化されていないものもあり、当時のゲームサントラのスタイルを知ることのできる資料としても価値があるので、ここでいくつかご紹介させていただきます。
『スーパーマリオブラザーズ3』
ゲームに興味がない人でも知っているゲーム界の偉大なアイコン、スーパーマリオ。シリーズ第3弾となる本作は日本国内でファミコン史上2番目のヒットとなりました。（1番はやっぱり初代『スーパーマリオブラザーズ』！）
近藤浩治氏が手がける曲は明るく楽しい雰囲気にあふれていて、マリオの世界観を構成するのにとても重要な役割を担っていたことがはっきりとわかります。
ライナーは両面カラー印刷ですし、おまけのステッカーもホログラム仕様で華やかですね。CDでも発売されていますが、カセットテープのコンパクトさはファミコンのカートリッジにもよく似合うため、人気があります。
『ドラゴンスレイヤーIV ドラスレファミリー』
日本ファルコムの『ドラゴンスレイヤー』シリーズはパソコンが主なプラットフォームだった中で、この『IV』だけはファミコンとMSXだけで発売されました。
MSXのPSG音源を巧みに使いこなした楽曲群はどれも秀逸で、のちに『FALCOM GAME MUSIC』『Falcom SPECIAL BOX ’91』など、別のサントラ集にも収録されています。
ただ、ファミコン版の音楽もまとめて鑑賞できるのはこのテープ版だけです。音色以外に曲そのものが違っているものもあり、音の資料として役立ちます。
『WECル・マン24』
タイトルどおり、ル・マン24時間耐久レースを題材にしたコナミのアーケードゲームです。
1986年当時、コナミはプロトタイプカーのレーシングチームのスポンサーをしていた関係で、こうした作品を出せたのでしょう。ただ、ほぼ同時期にセガの大傑作『アウトラン』が重なってしまったため、あまり目立たずに消えていったタイトルです。
ゲームの開発自体はコアランドが手がけていて、音づくりも矩形波倶楽部とは違ったものになっています。ヘヴィ・メタルを基調とした疾走感あふれる楽曲で、ギターやドラムの音が特徴的です。
解説にもヘヴィ・メタルに対する思い入れがよく語られていますね。（コージー・パウエルはハード・ロック／ヘヴィ・メタル界のドラム・ヒーロー）
カセットテープでしか発売されておらず、その後も復刻がないため、隠れ名サントラとして、価値の高い1本です。
『沙羅曼蛇 MSX VERSION』
コナミを代表するゲームのひとつである『グラディウス』シリーズの『沙羅曼蛇』。MSX版はアーケード版の移植ではなく、オリジナルな内容になっていますが、音楽はアーケード版をベースにしています。硬質で澄んだ独特の音色にはFM音源とは違った魅力が詰まっており、アーケード版とは別にサントラが出たのもうなずけます。
コナミがMSXで発売したゲームはどれも人気が高く、SCC音源を活用した本作は特に評価が高いです。8cmサイズのミニCD（いわゆるシングル盤）でも発売されていましたが、今ではカセットテープのほうが取り回しがいいかもしれませんね。
この頃のキャラクターのネーミングにはハード・ロック／ヘヴィ・メタルのバンド名にちなんだものが多いです。なかなかマニアックなものもあるので、気になった方は調べてみてはいかがでしょうか。
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