BEEPと『ウイングマン2 キータクラーの復活』が歩んだ8年間

今年も残すところあと僅かとなりましたので、2021年の思い出として一つ、私の忘れえぬ出来事を振り返って記すこととします。

2021年9月30日、すぎやまこういち氏が90歳で亡くなりました。
2021年の東京オリンピックの開会式では、『ドラゴンクエスト』から「序曲:ロトのテーマ」が流れ、ビデオゲームもここまで来たかと感動していた矢先の出来事です。一ファンとして謹んでご冥福をお祈り致します。

ウイングマン2のタイトル画面

BEEPですぎやま先生の楽曲と言えば、ゲームミュージックデビュー曲でもある『ウイングマン2 キータクラーの復活』でしょう。PC-9801用『森田和郎の将棋』のアンケートハガキがエニックスの目に止まり、その縁から依頼されて作曲したのが『ウイングマン2』の楽曲です。

謎解きアドベンチャーの幕開けを感じるオープニング、優しいメロディラインのコーヒーブレイクやエンディングの終曲と、今聴いても色褪せない名曲の数々です。BEEPでは今でもパソコン本体の動作チェックは『ウイングマン2』で行っており(その前は『ソーサリアン』)、すぎやま先生のサウンドは毎日事務所に響き渡っています。

ウイングマンで動作確認したシャープX1

何故BEEPではそこまで動作チェックに『ウイングマン2』を使い続けているのか、その理由は長年の買取によりはじき出された最適解だからです。

対応機種の広さ

『ウイングマン2』が使われる理由の一つはその対応機種の多さです。様々な機種が出ているPC-8801シリーズを例に取ると、2番目に登場したPC-8801mkIIから最終機種のPC-8801MCまで全ての機種の動作確認に使われています。つまりフロッピーディスクドライブ(以下FDD)内蔵PC-88の動作チェックは全て『ウイングマン2』1本で事足りてしまうのです。

X1版は初代からturboZまで対応し、FM-77版はFM-77とFM77AVシリーズで立ち上がります。そのため「この機種はこのゲームで動作チェックする必要がある」といった専門性はあまり必要とされません。

FDDのチェックが簡単

そしてもう一つの理由が、FDDの動作確認がすぐ行えることです。『ウイングマン2』は起動すると両方のFDDを読みに行くので、ここで両ドライブが正常に動作するかどうかの判断が可能です。PC-8801mkIISR以降だと『シルフィード』でも可能ですが、mkIIで動かないことと後述の理由によりあまり使われていません。

そして『ウイングマン2』は1ドライブのマシンでも起動が可能な設計になっていますので、1台しかFDDを搭載していないマシンでも起動が可能です。例えばPCエンジンと同居しているX1Twinや、様々な事情で2ドライブでないPC-8801シリーズなども含め、『ウイングマン2』1本で動作チェックが可能なのです。

音がすぐ出る

FDDが問題なく動作したら次はサウンドのチェックです。『ウイングマン2』のディスクを入れ、読み込みが完了するとビジュアルと一緒にすぎやま先生によるテーマ曲が再生されます。ここでまず本体スピーカーから音が出るか、そして音量調整ボリュームを回して正しく音量が増減するかといったチェックが可能です。

写真映えするメインビジュアル

SR以降ならゲームアーツの名作『シルフィード』でもここまでの動作チェックが出来ますが、表示されるメインビジュアルで『ウイングマン2』と差が付きます。ワイヤーフレームを使ったデモは全体的に黒っぽく、正常に色が出ているのかといったチェックが困難な上に、ブラウン管に映すと映り込みし、タイトルロゴが出るまで時間が掛かる上に数秒しかその猶予はありません。

その点『ウイングマン2』は色鮮やかな美少女2人(+ウイングマン)が立ち上げるとすぐに出るので、RGBモニターの動作チェックだけでなく出品画像まで難なく撮影できるのです。そしてオークションの1枚目の写真というのは非常に重要であり、そういった点でも色鮮やかな美少女がデカデカと出る『ウイングマン2』は最適です。(全く関係ない方の出品でも使われていた時はビックリしました)

キーボード入力

レトロPCを買い取りする上で欠かせないチェックの一つがキーボードの動作確認です。BASICを内蔵しているマシンであれば、BASICを立ち上げれば動作確認ができますが、X1は別途BASICが必要になります。またなるべくまとめて作業を行いたいところなので、出張買取中など出先でのキーボードの動作チェックは『ウイングマン2』で行う場合があります。

PC-88,FM-77以降,X1シリーズのFDD、音、映像、キーボードのチェックをオールインワンでまかなってくれるのが『ウイングマン2』という事になります。ちなみにMSXのFDDチェックには最初は何となく『カオスエンジェルズ』を使っていましたが、アダルトゲームだからという理由でMSX・FANの『スーパー付録ディスク』が使われています。これも非常に出回っているという点だけでなく、『エメラルドドラゴン』などで有名な木村明広氏によるイラストということも理由としてあるでしょう。

X68000の動作チェックにはそれぞれのドライブで別のゲームが立ち上がり、音が出る上にメモリが2MBである証明にもなるので『エキサイティングアワー/出世大相撲』が使われています。戦う男を感じるもの悲しい『エキサイティングアワー』のメインBGMも『ウイングマン2』のテーマに並び、BEEPで日々響き渡っています。

 

ここまで読むと『ウイングマン2』のテーマ曲が聴きたくなると思いますので、収録されてるサントラ2枚とその収録タイトルをご紹介します。

エニックス パソコン・ミュージックCD

①パソコン・ミュージック ジーザス/ガンダーラ/ウイングマン2

1987年 アポロン音楽工業より発売。すぎやま先生と縁の深い会社で、1993年までは『ドラゴンクエスト』シリーズのサントラをほぼ独占的にリリースしていました。

後述の『エニックス・ゲーム・ミュージック』と比べると『ジーザス』と『ガンダーラ』の比率が大きく、「すぎやま先生のゲームミュージックCD」という目的でリリースされたのではないでしょうか。

エニックスPCミュージックCD

ライナーノーツが充実しており、写真付きの録音環境やすぎやま先生のコメント、そして楽譜も掲載されています。今となってはエニックスのタイトルの復刻は難しく、当時物を買う以外に選択肢がないのが惜しまれます。

『ジーザス』はファミコンにも移植されていますが、他の2本は家庭用へ移植されていません。今回は「名前だけは知っている」という方へ向け、収録タイトルを細かくご紹介していきます。BEEPでは実機ソフトも販売中ですので、機会がありましたらそちらもお求め頂けますと嬉しいです。

ウイングマン2の箱
『ジーザス』

シナリオは小説家兼パズル作家の雅孝司氏、グラフィックは『地球戦士ライーザ』の眞島真太郎氏、プログラムは「芸夢狂人」こと鈴木孝成氏で、サウンドはすぎやま先生と錚々たるメンバーを起用しています。

当時のエニックスは自社で開発チームを持たず、創業当初に行っていたゲーム・ホビープログラムコンテスト入選者へ制作を依頼して販売する、いわばプロデューサー業に専念していた会社でした。開発費は出さない代わりに、完成したら印税と権利を出すといった手法を長く使っていたそうです。

『ドラゴンクエスト』開発メンバーの中でも、堀井雄二氏は『ラブマッチテニス』、中村光一氏は『ドアドア』が、ゲーム・ホビープログラムコンテストに入賞しています。鳥山明氏の起用も、当時『週刊少年ジャンプ』で連載していた堀井雄二氏の縁で、84年頃にエニックスから『Dr.スランプ』のゲームが多数発売されていた縁からと言われています。

 

『ジーザス』に話を戻すと、当時のエニックスが気合いを入れて名だたるスタッフを連れてきただけあり、今遊んでも楽しめる名作アドベンチャーゲームになっています。

プレイヤーがトレジャーハンターや刑事、冒険家になって進んでいくという従来のアドベンチャーゲームとは異なり、『ジーザス』は能動的に映画のようなストーリーを進めていく構成になっています。何も考えずに進めていくと最後の推理シーンと謎解きで詰まる可能性があるので、今から遊ぶ方はそこだけご注意ください。攻略本や攻略サイトもありますが、できればそういったものを見ないで遊んで欲しいタイトルです。

 

ガンダーラのパッケージ
『ガンダーラ 仏陀の聖戦』

『マリちゃん危機一髪』や『エルドラド伝奇』で名を馳せた槇村ただし氏によるエニックス4作目のゲームです。『女子寮パニック』『エルドラド伝奇』とアドベンチャーが続きましたが、『ガンダーラ』は当時の人気ジャンルであるアクションRPGです。

今までの3作品において槇村氏はプログラムも全て担当していましたが、今回は原作とグラフィックに専念しています。プログラムは全日本プログラミングの総帥でマシン語に長けている日高徹氏によるものです。当時のアクションRPGに比べるとキャラクターが非常に大きく、モンスターの特徴もはっきりしているのですが、その分スクロール速度が犠牲になっているところが今遊ぶと厳しい面です。

『ガンダーラ』最大の特徴はタイトルにもある通り仏教の世界をゲーム化したことでしょう。それだけを聞くと重々しい内容に思えますが、ダイナミックプロ出身の槇村氏の絵柄と世界観、そしてすぎやま先生のポップなサウンドが、ゲーム展開を楽しい物にしています。

そして同時期に発売された『ジーザス』や『イース』と並び、パソコンゲームの難易度が落ち始めた頃の作品です。死んだらセーブした所からやり直しというのが基本でしたが、『ガンダーラ』はペナルティ付の復活だったのが大きな特徴です。転生輪廻により新たなる生を受け誕生すると、作品の世界観に則っているのが、プレイヤーの没入感を損なわない良演出です。

 

ウイングマン2の箱
『ウイングマン2 キータクラーの復活』

PC-8801等でリリースされヒットを収めたアドベンチャーゲーム『ウイングマン』の続編です。

前作である『ウイングマン』は開発していたTAMTAM内に絵を描ける人がいなかったため、『ザース』の中沢数宣氏が担当したという逸話があります。今作でもグラフィッカーが不在だったのか、当時エニックス作品で活躍されていた眞島真太郎氏が起用され、より原作に近いイラストになりました。この辺りの情報はEXTRA mag.#4で少し触れているので、気になる方はそちらをどうぞ。

原作のキャラクターも多く登場し、アクションパートでは「チェイング」と喋るだけでなく様々な必殺技の再現と、原作への愛情を感じる作品です。ストーリーはオリジナルですが、エンディングは原作最終回に近い物となっています。原作だとキータクラーとの関係がはっきりしなかった北村先生は、今作だとキータクラーであると断言されているのが一番の特徴でしょうか。

『ウイングマン』はアニメ化もされ、エニックスから3本もゲームが出ましたが、家庭用ゲーム機への進出が一切無かったのが今思うと不思議です。

 

エニックス・ゲーム・ミュージック

②エニックス・ゲーム・ミュージック

1987年 アルファレコードより発売。アルファレコードが数多く出していた○○・ゲーム・ミュージックシリーズの一環としてリリースされています。すぎやま先生のサウンドをメインに、他のエニックスタイトルも多く収録されています。

他で音源化されていないタイトルも多数あるだけでなく、エニックス発売タイトルの年表もあるので資料的価値の高い1枚です。収録タイトルも多く、馴染みのないタイトルもあるかと思いますので、それぞれ紹介します。もし興味を持たれたら是非遊ばれてみてください。今遊んでも楽しめるソフトかと思います。

 


ドアドアMkIIのパッケージ

※写真はMSX版です

『ドアドアmkII』

中村光一氏の初オリジナルソフトである『ドアドア』のパワーアップ版です。PC-6001版を皮切りに、多くの機種に移植されました。ちなみにファミコン版は『ドアドア』として出ていますが、中身はこの『mkII』です。今遊ぶなら一番お手軽な『ドアドアmkII』でしょう。

キャラクターが大きくなっただけでなく、BGMと敵キャラ(オタピョン)、そしてステージも追加されています。『ディグダグ』をインスパイアして作ったゲームなだけあり、キャラクターの誘導に面白さが置かれているのがパソコンゲームらしいタイトルと言えるでしょう。

 

ウイングマンのパッケージ
『ウイングマン』

サントラではBEEP音によるタイトル画面の曲が収録されています。作曲は開発チームであるTAMTAMによるものでしょう。イラストの綺麗さといち早いひらがなの導入、そしてコマンドの受け付け幅が広い「丁寧なキャラゲー」であることがヒットの要因でしょう。

ジャンプとエニックスのタイアップ記事で生まれたゲームなので、シナリオは「学校の中でドリムノートを探す」とゲームらしい内容になっています。ちなみにエンディングのイラストは『アソコン』が勝手に使いエニックスがクレームを入れたという逸話が存在します。

 


ワールドゴルフ2のパッケージ

※写真はX1turbo版です

『ワールドゴルフII』

これもサウンドはすぎやま先生によるものです。OPのサウンド晴れた日の朝を感じる素晴らしいサウンドだと思います。一時期このサウンド目当てにPC-8801mkIISR以降の機種をチェックする際は『ウイングマン2』でなく、『ワールドゴルフII』を使っていたのを思い出します。

今作は村守将志氏による『No.1ゴルフ』『ワールドゴルフ』に続く3本目のゴルフゲームです。行き届いた操作性、追加されたRPG要素、高度な技術力と非常に楽しめる作品です。その後は『みんなのGOLF』を制作しており、今日まで続く日本ゴルフゲームの礎と言っても過言ではない作品です。

 

地球戦士ライーザのパッケージ
『地球戦士ライーザ』

PSG音源なのでオリジナルであるFM-7版からの収録だと思われます。(PC-8801版はFM音源によるOPが流れるため)

リリース順は入れ替わりますが、『ザース』を作ったスタジオジャンドラのリーダーである杉江正氏による3作目です。お調子者ブルーやストーリーの合間に入る1枚絵により、暗いストーリーなのにどこか明るい雰囲気を持つ世界のRPGです。

ファミコン版は『銀河の三人』という名前で任天堂から発売。『ドラクエIII』と発売日が被るというのがその理由と言われています。気になるタイトルの名付け親は当時任天堂の社長であった山内博氏によるものだそうです。

 

ザースのプレイ画面
『ザース』

第二回ゲーム・ホビープログラムコンテスト入賞作品である『不思議の旅』に続く、杉江正氏の2作目です。こちらもおそらくFM-7版からの収録。

アドベンチャーゲームといえばAppleIIタイトルの設定が多く使われていた中で、アニメ・SF・美少女といった要素をいち早く取り入れた画期的な作品です。イラストはエニックス作品だと『ウイングマン』『ウイングマンスペシャル』を手がけた中沢数宣氏と、『プラジェーター』の佐山善則氏によるものです。当時のパソコン雑誌を開けば必ず出ていた画面に見覚えのある方も多いのではないでしょうか。

プラジェーターのプレイ画面

作曲はスタジオジャンドラのメンバーである砂塚佳成氏。オープニング曲はその後『プラジェーター』のブリーフィング画面でセルフアレンジされています。

2017年にBEEPで発行した「EXTRA mag.#4」では、スタジオジャンドラの皆様にお集まり頂き、ロングインタビューを行っています。『ザース』と『プラジェーター』の開発秘話だけでなく、当時の資料や描き下ろしイラストと盛りだくさんの内容ですので、気になった方は是非お求めください。

 

アニマルランド殺人事件
『アニマルランド殺人事件』

エニックスにしては珍しいMSX専用タイトルです。今作とカセットテープで出た『ファランクス』(ZOOMのシューティングではない)くらいではないでしょうか。動物たちが暮らす平和な街「アニマルランド」で起きた殺人事件の謎を解き明かすと刑事物アドベンチャーで、ストーリーが進めば進む程ドロドロした人間(?)模様が判明し、ゲームへと引き込まれていきます。

パッケージにわざわざ「キミの魂をゆさぶる衝撃の二重ドンデン返し!」と書かれているだけあり、最後の展開については驚く物がありました。移植は無いですが、MSXのROMカセットと遊びやすいメディアなので、MSXユーザーでまだ遊ばれてない方は遊んでみてください。

 

長くなってしまいましたが、マイコンゲームのすぎやま先生サウンドだけでなく、エニックスのマイコンゲームは非常に野心的な作品が多く今遊んでも感じる物が多くあります。今回はすぎやま先生やエニックスの関連アイテムを集めてみましたので、興味を持たれた方は是非お手に取ってみてください。
BEEPではすぎやま先生の携わった作品だけでなく、レトロゲームやレトロPCに関するアイテム全てを大切にしています。
BEEP通販部

また、販売だけでなく買取でもそれは同様で、BEEPではアイテムを1点1点拝見した上でお値段を付けています。大切なコレクションのご整理を検討される際には、BEEPへお気軽にご相談ください。

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